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花仕舞師  作者: RISING SUN
第七章──孝(いつくしみ)の若き子、親を忘れし心
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88話

「清さま……あそこに団子屋がある! ちょっと休みましょうよ」

 京に登り、根音がはしゃいで団子屋を見つけ清の裾を掴んで引っ張った。

「もう、しょがないねぇ……」

 清が根音の頭を撫でると、傍らで根子が呆れ顔をしている。

「ほんとガキ! もうちょっとは京の風景を楽しめないの? 意地汚い!」

「うるさい……跳ねっ返り! 根子だって、涎垂れてるぞっ」

「涎なんか垂らすもんですか……!!」

 根音が指摘すると根子は言い返したが、無意識に口元を袖で拭いた。

「また二人は! 兄妹仲良くおし! でも……ずっと高杜から気を張ってきたんだ。ここらで一息いれようか? ほら……根子もお腹空いたろ?」

 清が頭を撫でると根子は顔を真っ赤にした。

「別に団子なんか……」

 根子のお腹がぐぅぅと鳴る。

「ほら……やっぱり……根子はもっと素直にならないとね」

 清は微笑んだ。根音はにんまりとした。

「根音はもっと謙虚におなり……!」

 清が優しく一喝すると、根音は頬を膨らませた。清は根音、根子と手を繋ぐと団子屋の軒下に施された縁台(えんだい)に腰掛け団子と茶を頼んだ。

 団子が目の前に来ると根音よりも根子の方が目を輝かせた。いつも背伸びをして大人っぽく振る舞う根子が、まるで猫のように目を丸くしてそわそわしている。

「ほら、ゆっくり頂くんだよ……」

 根音と根子は美味しそうに頬張った。根音は口一杯に団子を咥え、根子は一口ずつ噛み締めるように食べた。口の中に広がる甘味が疲れや緊張を癒していく。

「清さま……食べないのか?」

 根音が団子に口をつけない清に聞いた。

「お腹が減ってないんだよ……食べるかい?」

 ごくりと根音は唾を飲んだ。

「うん……」

 待ってましたと言わんばかりに頷く根音。

「でも、ちゃんと半分こだよ」

 清は自分の分を丁寧に二等分にして根音と根子に分け与えた。

「でも……清さま……」

「いいんだよ。お腹が空いてないのは本当さ……根音、根子……いつもありがとね」


 ──本当にどうしたんだろう? あの日以来、空腹を感じることがない……逆に受け付けない。でもそんな姿を見せたら根音と根子が心配するだろうし……──


 その時、目の前に人影が立った。清の中の心がぴくりと反応する。

「美味しそうに食べてござるな……愛らしい……」

 話しかけてきたのは身なりを整えた男だった。その瞬間根音と根子の表情が変わり、根子が耳打ちをする。

「清さま……どうやらこの方のようです」

「どうやらそのようですね……今はまだ薄っすらですけど……痣が浮き始めています」

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