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花仕舞師  作者: RISING SUN
第六章──信(たより)の愛し人、裏切りを超えて
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83/252

83話

外では蒼真の(とき)の声が聞こえ、軍声(いくさごえ)が入り乱れる。しかし、清には聞こえない。

 線香花火の灯火を護る、花灯の籠の番人花右手はななともしのかごめのばんにんめてが護る中、蒼真の声が聞こえる度に火花が強く反応する。その度に死に逝く秋架の顔はほころぶ。

 花天照(はなあまてらす)から派生した真白の蕾が準じに開き、花護人が現れる己の信念の舞いを披露していく。

 鏡の世界で花枝(はなえだ)弐の花水鏡(はなみかがみ)が蕾の舞を舞い、花枝参の花翅(はなばね)が花畑の世界で牡丹の舞を舞う。そして、大地に根を生やした森林の世界で花枝肆の花根孖(はなねし)の双子、根音と根子が松葉の舞を舞う。各々の世界で花火線香の火花を模した舞いが軽やかに、それは秋架の『信』を体現するように厳かに披露する。

 霧がかった世界で花枝伍の花霧(はなきり)が柳の舞を舞う。それは各々の世界で与えられた使命を全うし、秋架を導く。そして一際厳格な社が現れそこから巫女姿の花枝陸、花誓(はなうけ)が登場し、散り菊の舞を舞った。誓いを記録する誓約書を掲げながら終演が近くなることを知らせる。

 しかし、一方で秋歌の『怨』の感情を刺激する舞いも行われていた。

「姉さまの気配がする……」

 清は舞いながら静を感じていた。


 ──近くで姉さまが舞っている──


 舞いに集中しながらも、あの忌まわしい花化従の道中下駄の音だけは清の耳に届いていた。


「相も変わらず(わらわ)に対しては敏感に勘を巡らせて……ほんに可哀想な奴よ、やっと人らしくなってきたか? やっと舞いが花仕舞師らしくなってきたか? だがまだ、足りぬのだ……足りぬのだ……この……出来損な……いが……」

 漆黒の蕾から現れる花傀儡たちも、順に舞いを舞っている最中、静が感情を露にしようとしていた。面から覗く静の目が霞みぼやけている。

「静さま……! それはあきまへんえ。お止めなされ! なんのための面、花断(はなたち)でありんすか!!」

 珍しく、静に対し花化従が声を強めた。静は目を伏せ、再び目を開けた。霞が消えた。

「すまぬな……花化従。我は花断をかぶり総てを絶つ身!」

「それでこそ……静さまでありんす……」

 殿(しんがり)の花傀儡、花墨(はなずみ)が舞い終わると、花化従が面を外し、魅入る目で秋架のいる方を見る。

「さぁ……お逝きなさい……未練に抗うことなく……」

 仇花霊々の舞いの終わりを告げる静の花尽(はなついえ)


 ──うらみはたよりの裏返し。愛ゆえに、許せぬ。その怨、尽きることなく、心を蝕む、想い強いがゆえに──


「これにて仇花花尽──これでお膳立てはできた……」

 


 そして、清も花霊々の舞の終わりを告げる花結(はなむすび)を唱えていた。


 ──裏切りに沈む夜を越え、なお灯り続けるものがある。それがたよりならば、私は何度でも手を伸ばす──


「これにて花結、締結──届け──花文(はなふみ)!」


 すべてが静けさに包まれ、秋架の想いが清に跳ね返る。

花灯の籠の番人右手はなともしのかごめのばんにんめてに預けた線香花火の灯火が消えぽとりと落ちた。

「秋架殿……確かに『信』の心受け取りました……それにこれは……?」

 微かな想いも一輪の花が咲くように添えられていた。

「承知しました……必ず託けます……」

 清は秋架の心を受け取った。

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