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花仕舞師  作者: RISING SUN
第五章──忠(まごころ)の誓い、戦に生きた侍
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63/252

63話

「そなたにわかるか? 忠義を尽くそうとした主君の目の前の死。追うことも許されぬ。そしてまだ生きている。ただ我が主君の願いは『生き残れ』なのだ。しかし、それでも私は生きる意味を見いだせず死を選ぼうとしている。それは心の謀反だったのだ」

 現路は唇を噛んだ。

「私は『(まごころ)』と信じたかった。信じようとした。しかし、それを『(あやまり)』と諭したのは、そなたの姉、静殿だった」

 清の表情が険しく変わる。目が瞬時に憎しみに包まれ、つり上げた。清はその存在を認めたくはなかった。認めれば憎しみが増す。しかし、今の現路に対し、否定的な言葉は思い浮かばなかった。

「手前は……手前は……」

 唇が震える。言葉を返せなかったことに対してではない。静に嘲笑われているかのようで呼吸さえままならなかった。現路はその清の姿を憐れに思い優しく寄り添った。

「清殿……よい。そなた、誰かにつかえたことはあるか? 誰かに仕えることなくしてこの苦しみはわからぬ。わかってもらっては困る……そなたを見ればわかる。そなた、仕える立場に非ず。上に立つ立場なのだろう?」

 現路の言葉にはっとする清。


 ──私は誰かのために仕えたことがない。現路殿の言うとおり……仕えたことのない者が語るなどなんという奢りなのだ……──


「清さま……ここは私が現路殿のお相手をいたしましょう。主に仕える身として、立場を知る者として」

 一片の羽が落ちてくる。それはひらりひらりと舞うように。そして畳に落ちると風が渦巻く。翼にくるまれた人影が現れるとゆっくりと翼が広がる。胸の前で祈るように両手を組み、そして神々しく目映く姿。

花天照(はなあまてらす)……」

 清は言葉を出した。花天照はゆっくり、目を見開き現路に微笑んだ。

「現路殿……私は清さまに仕える花護人(はなもりびと)筆頭花天照と申します。我が主、清さまに我々の存在を預けた身。ならばその仕える身として、清さまに代わり談を講じましょう……」

 幻想的な光景に言葉を失いかける現路。

「ほんにこの世界は未知なことばかり……もう、驚かぬ」

 花天照は現路を羽で包んだ。

「二人だけで話がしとうございます……お気づきでありましょうが、清さまは姉、静さまの名前を聞くだけでも憎悪に心が染まります」

「確かに……静殿の名前を聞いた瞬間、目の色が変わった。あれは鬼の目のようだった」

 花天照は清と静、二人の出来事を話した。無情にも両親が清の目の前で静によって惨殺されたこと。憧れであった静の暴挙、そして『花切の契』を自らの手で行い、永遠の縁切りを行ったことなど……。その後、花仕舞師として対立を深めることになる。いくら追いかけても、まるで嘲笑うように先を行く静──その姿への憤りが、清の心を支配していった。

 すべてが静に対し憎悪のみで動いていることを現路に聞かせた。

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