59話
「この城のようです……清さま……」
根子の言葉に頷く。清は距離を置いて高くそびえ立つ天守閣を見つめていた。近くにいて遠い。無力感に力が抜ける。
「このままでは近づけぬ。中に捕らえられておるのだろう?」
清は焦りを見せる。根音の話しによると花紋様の痣を持つものは死期が近いと言う。
「特別な力があるわけではない……私たちが戦の手練れに敵うはずもない。どうすれば……」
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
カタン──ズゥ……カタン、コトン、スッ……
あの音が聞こえる。
「相変わらず……耳障りな……」
清が振り向くと場違いな身なりの姿。
「なぜここに来たか……花化従? 相変わらず邪魔立てばかり……」
高笑いが響く。
「どうしたでありんすか? 相も変わらず間抜けでありんすな……ほんに憐れな静さま……このような出来損ないの妹君を持つとは、ほんに……静さまもお可哀想にござんす。なぁ、花識、そう思わぬか?」
「誰だ……? 花識?」
黒い頭巾を纏った男に声を掛ける花化従。顔はわからない。花識の存在どこか異様だが、何かを感じる清。花識と呼ばれた男は黙って頷く。
「花化従……そこに控える者は花傀儡ではないな? なぜそのような者といる……?」
花化従は鼻を鳴らし下げすさんだ目で清を見る。
「そちが知る必要はなきにありんす……それよりよいのか? 静さまはもう会われたぞ……花紋様の浮き出る者と……力なきとは憐れ……無知とはほんに憐れ……」
花化従は踵を返し背を向ける。
「なにがし、出来損ないは花護人を従えてありんすか? 花護人は戦には向かんでありんすが……人非らざる者なり。思案せねば先はないと言うのに……ほんに、静さまが憐れ……憐れでありんす……」
花化従と花識は清の元を去っていく。花化従の道中下駄が響き遠ざかる。影は滲みやがて消えていく。
「なんだ……花化従……どのような意味だ……?」
叫ぶ声は届かず、ただ跪く清。
「姉さまはどうやって辿り着いた?」
頭の中で巡らせるが、解を得ることができない。
「清さま……花霧がおります……私たちは花護人……清さまに仕える人非らざる者たちです……」
清が振り向くとそこには花天照と花霧が膝を折り、清を見上げていた。
「花天照……」
清は言葉を詰まらせた。
「何も私たちは舞を補佐するだけではありません。舞を遂行するために花紋様を持つ者に辿り着くまでの導きを示す者でもあります。清さまを花仕舞師として舞わせるために……時はありませぬ」




