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花仕舞師  作者: RISING SUN
第四章──智(さとし)の学び舎、深き迷いの医学者
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48/252

48話

「何を言い出すかと思えば……」

 静はそっと孤風に近づく。

「半死になられると言う意味をおわかりになられるか? 永遠の苦しみを纏う。姿見は人であるが、これ人に非ず。この舞止めるということは我、非道の行い。すなわちそれ、禁忌なり」

 静は囁く。

「わかっております……しかしながらそなたの道を、そしてそなたが愚妹と申される妹君の道、花仕舞師の道を見届け、真を記したいと存じます。この『半死奇談』改め『花死奇談真の綴はなしきだんまことのつづり花死奇談真の綴』として」

 孤風は真摯に座し、頭を下げ懇願した。静は深く息を吸う。それはさらなる決意の表れ。

「あい、わかりました……」

 静は舞を止めた。焦りの冷や汗を流す花化従。

「静さま……! 禁忌でござんす……それは堪忍してたもれ。これ以上は……」

 花化従が頭を下げるのを忘れ静に詰めよった。しかし揺るがない静。眉ひとつ動かさない。

「控えよ……花化従。元々禁忌を犯し、一族を追われた身。ましてや あの出来損ないの妹に『花切の契』さえ受けた身。今さら禁忌のひとつやふたつ、何も変わらぬ」

 静は禁忌さえ我が身と言わんばかりに凛と構える。

「何をおっしゃるでありんすか……お気は確かか? ただでさえお身体に(おびただ)し負担の数々……その身を案じればこそ。痛みはすべて……また痛みが……静さまにのしかかります……それだけは堪忍してたもれ……今一度、お考えを改めては……」

「黙れ! 花化従……」

 控えよと言われても、黙れと言われても……花化従はとまらなかった。無礼を承知で静の襟を掴み心に痛みをほとばしらせる。静の身体を考えれば真の愚昧(ぐまい)。静の身を案ずれば案ずるほどにまるで自身の身を削られる思い……。

「よい……先生の思ひは我の本懐の欠片のひとつに成り得る。それならば痛みの代償、いかなるものも我が受けるのみ」

 静の心は揺らがない、揺るげない。

「静さま……それはあんまりでありんす……堪忍してたもれ……堪忍してたもれ……」

 花化従は襟を掴んだまま項垂れた。そしてそれは花傀儡、みな同じ思ひだった。

「花化従よ、そしてみなのもの……もう一度問う。我の本懐こそが我を突き動かす。その本懐のためならばこの身を獄に落とすこと、それもまた本懐の欠片。みなの者、道を誤るな……それがおぬしら主、我が道……それが仇花に堕ちてまで成すべき道理……それを理解せよ……」

 花化従をはじめ花傀儡たちは押し黙り聞いている。静は孤風を見る。

「孤風殿……半死の決意、承った。そなたこれから『花識(はなしき)』と名乗り、この世界を見届けよ。それがそなたの役目」

 孤風は頭を深く下げた。

「かしこまったでござる」

「ただし……他言は無用。さあ、清が参る。その前に施しが必要……花識こちらに……」

 静は耳打ちをする。

「花識……これからが真実になる。いやがおうにもそれには逆らえないが……半死になればそれが運命(さだめ)


 静は高らかに宣言す。

 

 ──答えを欲し、答えに溺れた。見失った真理は、今なお胸を穿つ。惑いこそ、我が業なりとさとる──


「此にて仇花尽(あだばなついえ)ず、舞途切れたことにより、半死永遠の獄、痛みなき身体と供に彷徨うなり」

 静の言葉が各々の心に刻まれ、仕舞われることなく終演した。

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