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花仕舞師  作者: RISING SUN
第四章──智(さとし)の学び舎、深き迷いの医学者
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40/252

40話

「清さま……いくら痛みを感じぬと言われても身体には負担がかかります……今から引き抜きますが……身体を強く持ってください……花灯の籠の番人右手はなともしのかごめのばんにんめて……頼みます」

「わかりました……根音、根子……私の手をしっかり握っていておくれ……そなたらが居れば私は大丈夫だ」

「「清さま……」」

 根音と根子はしっかりと清の手を握った。痛みはないが震えがくる。確かに身体は悲鳴をあげていることには間違いないのだろう。後ろから花天照と花水鏡(はなみかがみ)が清を動かぬよう固定する。花翅(はなばね)花霧(はなぎり)が引き抜こうとする花灯の籠の番人右手を補助する。

「清さま……いきます」

 花天照が合図をすると貫いた垂木を一気に引き抜いた。するどい刃ではないため、それは肉が抉れていく気がした。その刹那な、なんとも形容し難い音が清の耳に内から響いた。身体を貫いた違和感がなくなる。しかし、驚いたことに垂木が引き抜かれた後、血は少しばかり流れたほどで自然と止まった。まるでかすり傷のような血の量だ。だからといって傷口はふさがったわけでもふさいだわけでもない。ただ血が流れないという異様な光景だった。

「ほら……やはり痛みはない……これも根音と根子のおかげです……」

 清は二人に微笑む。二人は傷口をじっと見ていたが我に返る。

「そ、そうだよ……俺たちがいれば大丈夫、なぁ、根子」

「も、もちろんよ。これからも私たちは清さまの側におります……どうか痛みはなくとも今は休んでください……お願いします」

「わかった……みんな本当に申し訳ない……私の未熟さに、みなに心配かけたこと……」

 清は頭を下げた。

「とんでもない。頭をあげてください……清さま」

 花天照は清に自らの衣をかけた。

「根音、根子、後は頼みましたよ。もし何かあれば私たちは駆けつけます。いつも清さまの側におりますので……」

 そう伝えると花天照たちは根音と根子を残し消えていった。二人は清の手を握り締めたままだった。


 ──私は……私の身体は本当にどうしたのだろう……? 少しの痛みも感じない……私は何を知らないのだろう? いや、痛みとはなんだろう? 痛みの記憶さえ私には思い出せない──


 目を閉じ、痛みの記憶を探ろうとしたが、思い出す場面は、いつもあの忌々しい静の狂乱じみた姿からだった。それ以前の記憶を思い出そうとすれば黒い霞がかかり閉ざされ、辿り着くことはなかった。そして思い出す度に黒い憎悪が身体を巡る。それは快楽──その感覚だけはなぜかはっきりと心に残る清だった。

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