39話
──一ヶ月前──
零闇を仕舞い、崩壊した本堂。瓦礫に埋もれる清を護ったのは花天照をはじめとする花護人たちだった。身体の屈強な花灯の籠の番人右手と花天照が翼を広げ清を庇っていたが、そのほんの隙間から垂木が勢いよく落ちてきたため無情にも清の胸を貫いていた。
なんとか瓦礫を撤去した花護人たちは清を取り囲み手当てをしている。清の胸を貫いた垂木。
「花天照……どうすれば……?」
根子が焦りの色が滲む。
「私たちにはどうすることもできません。これを取り除く方法など……」
花天照さえ、表情が曇る。
「やはり……医術に精通する者に看てもらうしか……」
根音が戸惑いながら口にした、その時……
「なりませぬ。清さまの身体は……むやみに晒しては……」
花天照が一喝する。
「この身体をむやみに晒しては物の怪扱いされ、忌み嫌われるのがおち……やはり、私たちがなんとかするのです……さもなくば清さまの夢も露と消えるのです」
しかし、出来ることは何もない。時間だけが無情に過ぎる。
「ここは……どこ? はっ……零闇殿は?」
清がゆっくりと目を開け、崩れた本堂をまのあたりにし動こうとする。
「清さま……」
花天照が気付き声をかける。
「清さま動かないで……今は……動いたらだめです」
根子が必死に清を止める。
「零闇さまは清さまの舞で仕舞われ、『礼』を清さまに託され、安らかに逝かれました」
根音が清を押さえながら答えた。
「そうか……しかし、なぜ、動いてはならぬ……?」
「それは……」
根音は口ごもる。清は違和感を感じ自らの手を胸にあてると違和感の正体に気づいた。
「これは……な、何?」
「清さまが舞われたあと本堂が崩壊し、私どもが未熟なうえ、清さまをお護りすることができず……しかし、今の私たちではこの状況をどうすれば……」
花天照がなんとか答えた。だが清は意外な言葉を発し笑った。
「何を躊躇う……お前たちが引き抜けばいい……」
「なんと……清さま……何をおっしゃる……!?」
根子はこの状況下でも笑う清にそれ以上の言葉を失う。
「痛みを感じない……それに……今までもそうだった。この異様な傷痕、姉さまに胸を貫かれても動じなかった。そして今回も……それにお前たちがいるではないか……だから大丈夫……」
清は微笑みながら根音と根子の頭を撫でた。
「わかりました……清さま……どうか、我慢してください……」
花天照は決意の目をする。
「は!? 花天照……しかし、それでは……それでは堪えられるのでしょうか……? あの《《お方》》は……」
根子が我に返り花天照を止めようとする。
「黙りなさない!」
花天照は根子睨み付けた。それは余計なこと口にするなという強い決意。花天照は唇を強く噛んでいる。語ることができれば楽になれる。しかし、それは許されていない……固く、そう固く……。花天照以下……すべての花護人は唇を噛み赤く滲ませていた。




