36話
瓦礫が積もる後……
カラカラカラッ……
小石溢れる。
そして瓦礫が弾けると花天照をはじめ八人の花護人が清を庇うように護っていた。
「清さま……」
根子が言葉をかけようとしたが、ぎょっとする。屋根を支えて崩れた垂木が一本、清の胸を貫いていた。
「清さま……胸に……胸に──」
根音が叫ぶ。掠れた声で清が囁く。
「大丈夫……おまえたちがいるから……痛みはない……そ、それより零闇殿は?」
「あそこに……清さま……お見事でございます……無事、浄化されました……」
「そうか……良かった……」
涙ながらに根子が清に声をかける。
「清さま……舞中に……零闇殿がこれを託されました……」
「これは……?」
いくつもの鮮やかな花で飾られた髪飾り……。
「これは時留時留めの花飾りでございますね……」
花天照が答えた。
「時留の花飾り……? なぜ零闇殿は……」
「それよりも清さま……この髪飾りには零闇殿の想いがまだ残っております……無理を承知で……早く花文を……」
花天照が囁いた。
「そうか……と、届け──! 花文……」
振り絞る力で清が花文を唱えると清に答えが返ってきた。
──十四の心に従え……その時、望む心が開かれる……それが良し悪しかは己らの心で決めよ……我が『礼』の心、そなたに預ける──
言葉と一緒に零闇の『礼』の徳が清の心に吸い込まれた。
「清さま……零闇殿の想いが心に芽生えました。届きましたぞっ……」
耳元で花天照が囁いた
「そうか……良かった……大丈夫……私はまだ死ねない……私の願いはまだこれからなのだから……」
がくりと頭を垂れ、意識を失う清。
「「清さま──」」
根音と根子が叫ぶ──。その声が木霊して成り行きを見届ける者に届いた。
「相変わらずよのう……」
静が呟く。
「行くぞ……花化従……」
そう言い残すと振り返りその場を去ろうとした。しかし……足がもつれる。
「がはっ──」
静は吐血し大量の血が地面に滴る。そこに広がるは深く赤い血溜まり。
「静さま──大丈夫でありんすか!?」
花化粧が静を抱える。
「大丈夫だ……心配はない……ただ今回は、ちと堪えた……少し休まさせてくれ……」
静は目を瞑る。
「──花雫……出て参れ……雫の羽衣で静さまを包むでありんす……静さまを護るでありんす……」
花雫が現れる雫の羽衣を静にまとませる。
花化粧は振り返り、キッと瓦礫に包まれ崩れた本堂の側で横たわる清を遠くから睨んだ。
「よもや……ここまで……出来損ないの分際で……静さまをなんと心得るか……」
花化粧の美しい顔は歪み、清に対して怒りを滲ませていた。
──第三章 終幕──




