安藤咲の問題
練習の休憩時間に入ると、安藤さんが笑顔で手を振りながら、こちらに向かってくる。
あれだけハードな練習をこなしても、バテることなく笑顔でいられるのは凄い…。
「どうだった?強豪校の練習風景は?」
「本当に凄いよ。高さもパワーもスピードもお遊びのバスケとは全然違うね。それに安藤さんも凄いかっこよかったよ。」
「えへへ、何か照れるなぁ。まあ私は最近調子悪いからスタメン外されそうなんだけどね…」
「そうなの?練習を見た感じ調子良さそうだったけど」
「うーん…私は身長は高くないし、あくまでアウトサイドプレーヤーだから、外からのシュートの成功率が求められるの…でも練習で肘を痛めちゃって…。ドライブとか他の部分で頑張ってはいるけど、1年生に優秀なシューターが入ってきてね。」
安藤さんが目線を向けた先にはショートカットの一年生が見える。
確かに練習で打ったシュートの成功率は凄まじかったな。
「このままじゃ推薦もなくなっちゃうかもしれない。私からバスケを取ったら何も残らないからさ…。」
「咲…。」
隣の弥生が安藤さんを心配そうに見つめている。俺としては少し安心した。悩んでる原因が岩野ではなく、別の事で。まだ被害にあってなかったんだなって。でも怪我は俺にも解決はできない…。
「あはは、ごめんね。なんか暗い話して、まあ何とか大会までには間に合わせてみせるよ!」
安藤さんはそう言うとまたコートに戻っていった。
俺は復讐代行を受ける際、被害者からの声だけでなく、実際に加害者の行動や今どう生きてるかを調査するようにしている。
それは代行サイトを悪用し、復讐を装う冤罪を防ぐため、そして今改心して生きているか見定めるためだ。
岩野の件も被害者の証言だけでなく、実際に岩野を見ておく必要があった。
今見る感じ、ただの熱血監督という感じだが…。やはりあいつのパソコンを確認しないことには分からないか…。
ただもし岩野が被害者が言うような奴だったら、安藤さんの今の状況につけ込む可能性が高いから、急がないと
一一一一一
俺はトイレに行くと言い、練習の見学を一旦抜け出した。岩野の犯罪の証拠を掴むためだ。
バスケ部は専用の監督の部屋があり、練習の時間は誰もいないことは確認済みだ。
俺はピッキングで、監督室の扉を開け忍び込んだ。
まずは岩野のPCに花火特注のUSBを差し込む。PCのデータをパスワードなどなく抜き取る優れものらしい。
そしてその間に岩野の鞄を物色する。特に変わったものはない。
俺は鞄の奥底に小さい盗聴器を仕掛ける。
USBを暫くして抜き取り、体育館に戻ろうとした時、外から話し声が聞こえる。
俺は咄嗟に部屋のロッカーの中に隠れると、岩野と安藤さんが入ってきた。




