四人目⑤
「今日の帰りのHRではみんなに大事な話がある。」
計画通り前田が冷や汗をかきながら、話を切り出す。
前田の真剣な表情にクラスメイトが何があったのかと騒ぎ始めた。
「し、静かに!このクラスでいじめが起きている件についてだ!」
静かにという前田の言葉には何の意味もなく、いじめというキーワードに教室中がざわざわし始める。
(みんな心当たりがなく不思議そうな感じだ。ある一部を除いては…)
お前が言ったのかという殺気だった表情で村井たちが弥生を見ていた。
「誰かその件について知ってるもの教えてくれないか?」
当然弥生も含めて誰も名乗り出るものはいない。
「じゃあみんな顔を伏して目を瞑れー!いじめを知ってるものは手を上げろ。先生は絶対に誰にも言わないから」
クラスメイト達がゆっくり顔を机に伏せる。俺は周りの様子を探るが誰も手を上げようとはしなかった。
「わかったありがとう!それじゃあ村井、草野、藤吉はこの後、生徒指導室まできてくれ」
「「「は!?なんで?!」」」
前田の言葉に驚いた表情で声を上げる。そしてその後、弥生をまた睨み付けていた。
弥生は無言で横に首を振っている。
そう実際には誰も手をあげていない。
俺が前田に元々村井達を呼び出すように指示を出した。
手をあげさせたのは万が一手をあげて情報提供してくれるものがいれば
弥生を囮にせずに証拠が掴めるからだ。
それも淡い期待に終わったが
(この後前田には密告があったと、村井達を生徒指導室で指導してもらう。そうすれば逆上して、前田に詰め寄った後、弥生に矛先が向くだろう)
俺はえりかや田中達に目でアイコンタクトを飛ばすと、えりか達は無言で任せろと頷いた。
教室内は未だにザワザワしており、村井達が呼び出されたため、もう帰っていいはずなのに、三人がやったのかなど話題が飛び交っていた。
俺はその隙に教室を抜け出す。俺には俺のやることがあるからだ。
「えりか達後は頼んだぞ」
囮にすると言っても食い付かせるつもりはない。
一一一一一一一
「か、勘違いしないでほしい。先生はお前達を疑ってるわけじゃないんだ!ただお前達がそういうことをしてるって情報が入って確認のためにな!」
「先生はそれを信じてるんですか?」
「私たちがそんなこと言われてるなんて気分悪いんですけど…」
(くそ…高原の口車に乗せられたが、どうすれば…。)
「先生、私の心疑われてめっっっっちゃ傷付いたんですけど、うちのママに言ってもいいですよね?」
「そ、それは…。」
それは駄目だと口から出掛けるが、涼介に脅された事実を思い出し、踏み留まる。
村井達の面倒臭い親に詰められても、ただストレスを抱えるだけだが
涼介に握られていることをバラされれば懲戒も免れない。
(ここはもうやけくそだ!)
「い、いいとも!是非言ってくれたまえ!白黒つけようじゃないか!」
「あ!?本気で言ってんの!?」
「あ、ああ。教師として当然のことをしたまでだ!やましい事など何一つない!」
(なんだが…昔の事を思い出す。教師に俺は何故なったのか、激務で休みも少なく、給料もそれなりだ。違う、そんなことじゃない。俺は学生の頃虐められていた。そういう生徒を救いたくて、教師になったはずなのに。いつの間にかこんなクズ教師になってしまった。)
前田は昔の熱意を持っていた頃を思い出していた。過剰な労働時間やモンスターペアレントのクレーム、生徒に馬鹿にされる日々、そういったものが積み重なり、彼は変わってしまったが、昔は熱血教師とも呼ばれていた。
「君達がしてるかしてないか。それはまだ俺には分からない。ただこれだけは言っておく!俺はいじめは許さない!」
一一一一一一一一
「くそっ!くそっ!何なん前田のやつ!」
「まじむかつくよね。問題は誰がチクったってことだけど」
「宮村でしょ!あいつがまた余計なこと言う前にしめよう!」
「ただしめるだけじゃ面白くないよねぇ」
「二度と逆らえないように、恥ずかしい写真でも撮ってやろ!」
(本当に涼介の言ったとおりになったわね。今すぐあいつらをぶちのめしてやりたい…)
えりかと田中と楠木は物陰から村井達の様子を探っていた。
「落ち着け。陛下を信じろ。」
何を考えているか田中にはお見通しのようだったようで、えりかは腕を掴まれ静止される。
「田中の言うとおりだよ。ここは高原を信じよう」
「わかってるわよ!ほらあいつら動いたわよ!」




