四人目⑥
「おい!あんた前田に私らの事チクっただろ!?」
「わ、私誰にも言ってないよ…。」
「じゃあ何で前田が知ってんだよ!」
村井達三人に囲まれ弥生は責められていた。だが本人にも言った覚えはなく、言ったのは滝川雪一人だけだ。
(雪ちゃんが言ったの…でも言わない方がいいって言ってきたのは雪ちゃんだし…。)
雪に言ったことは村井達には言えなかった。言えば雪までイジメに巻き込んでしまうからだ。
「痛い目見ないと分かんないようだね!」
「ちょっと二人とも宮村を抑えてて!」
村井の指示通りに草野と藤吉の二人がかりで弥生を押さえつける。
「あんたを脱がせて、恥ずかしい写真でもいっぱい撮れば、もう私たちに逆らう気なんて起きないでしょ!」
「な、何するの!?や、やめてよ!やめて!」
「うるさい!大人しくしてろ!」
弥生の頬を思い切り村井の手のひらが叩いた。
「早く脱がせろ!」
「や、やだぁ!」
「やめなさい!」
弥生の制服を脱がそうとしたその時、物陰からえりかが出てきた。
「え、えりかちゃん何で…!?」
「大丈夫?弥生。今助けるからね!」
えりかに続いて、田中と楠木も物陰から現れる。
「抑えつけるの大変だったぜ橘を」
「本当にな。女とは思えない力だったわ。」
弥生が虐められている証拠を撮る際、少し村井達を泳がせる必要があったのだが、弥生が責められているのはえりかは見ていられなかった。
田中達が必死に二人がかりでやった思いで止めることができた。
そして、その甲斐もあって、弥生への平手打ちと恥ずかしい写真を撮るという大きなイジメの証拠が取れた。
「あんたには関係ないだろ!」
(そうだよ…えりかちゃん逃げて…私は巻き込まないためだからって言ってえりかちゃんや涼介くんを傷つけた…。)
「関係ある!そこにいる宮村弥生は私の親友だ!傷つける事は誰であっても許さない!」
「えりかちゃん……。」
「こんな奴庇ってあんたに何の得があんのよ!こいつはッ」
「うるさい!!!」
村井達の罵倒を遮るようにえりかは叫んだ。
「たかが数ヶ月の付き合いでこの子の何がわかんのよ!私は何年もこの子とずっと一緒にいる!あんたらがこの子の悪い所を何個並べようが、私はこの子のいい所を何百個も知ってる!あんた達が弥生を語るな!!」
えりかの言葉を聞いて、弥生は涙が止まらなかった。もし逆の立場なら自分はえりかを必死に助けたはず、悩みを何も話してくれないことを悲しんだはずだ。自分はえりかという親友を侮ったのだ。自分の愚かさが情けなくてたまらなくて、同時にえりかの言葉が嬉しくて
「私はこんな性格してるから、友達もあんまいない。でも弥生や涼介や椿はこんな私でも仲良くしてくれた!ついでにたけしも!だから私はこいつらを絶対に守る!」
「う、うるさい!この野郎!」
えりかの言葉を遮るように村井が近くに落ちていたほうきを拾い、えりかに振りかぶる。
えりかは急な攻撃で虚をつかれて、動けない。
「大丈夫か?えりか」
当たっているはずのほうきが自分に当たってないことが不思議だった。瞑っていた目を開けると、そこには見慣れた坊主頭の少年がいた。
「たけし…。何であんたが…。」
「最近お前暗い顔してたから、心配でつけてたんだよ。」
「…ストーカー」
「な!?俺はお前のためにだな!」
「でもありがとう。助かったわ。」
えりかの言葉でたけしは照れ臭そうに頬をぽりぽりとかいた。
「私の親に言い付けてやるから!覚えとけよ!イジメの言い掛かりをつけられたって言ってやるから!」
「ま、待ってよー!」
たけしが現れて、戦況が不利と見るや。村井はその場を逃げ出す。草野と藤吉も村井を追うようにその場を去っていた。
「えりかちゃん!!」
えりかに飛びかかるように抱きつく弥生。
勢い余って倒れそうになるのを必死にえりかは堪えた。
「ごめんごめんね…」
「泣かないでよ。私は弥生の笑った顔が好きだからさ」
抱き合ってお互い涙を流す。たけしや田中や楠木も誰も口を挟まず、それを見守っていた。
「そ、そういえば村井さん達、親に言うって大丈夫かな…?」
「大丈夫だよそっちは涼介がやってくれてるから」




