四人目⑦
「グスッ……疑われて、私本当に悲しかった…」
幸いにもイジメの証拠は何一つない。
橘や宮村達が証言したところで、無理やりにでも通せばうやむやに出来るだろう。
言い掛かりをつけられたとママに言いつけてやった。
前田も含めて、痛い目に合わせることができる。
(私に逆らうとどうなるか思い知れ、馬鹿どもが)
「ママに任せて、私の大事な大事な桐花ちゃんがイジメなんてするわけないのにね!仲良いママ友たちにも連絡しておかないと!」
「ママが私のママで本当に良かった…。私…グスッ…ううう。」
(こんなちょろいママで本当に良かったよ。)
一一一一一一一一
あれから村井達の親が学校側に猛抗議したことによって、緊急の保護者説明会が開かれる事になった。
「高原どうするんだ。校長から物凄い剣幕で怒られたんだぞ…このままじゃ俺の進退が…」
「前田先生あんなにかっこ良かったのに、何で元に戻ってるんですか…。まあ証拠は全部揃ったんで、大船に乗ったつもりでいてください。先生はこれをつけておいてください。何かあれば指示します。」
予め購入しておいたインカムとイヤホンを先生に渡す。
「陛下、そしてついでに前田。そろそろ時間です。」
「何で高原は陛下で、俺は呼び捨てなんだ…。」
「敬うような行動をすれば自然に敬称はつくもんだぞ前田。」
田中の言葉に前田は悔しそうな顔をするが、正論で言い返せず、そのまま黙りこくってしまった。こんな時に緊張感のない奴らだ。
「さぁ行きましょうか。」
一一一一一一一
そして保護者説明会という名の前田と学校を糾弾する公開処刑が始まった。
PTA役員と前田や教頭など教員の一部で最初話し合いがあったそうなのだが、そこでこじれるにこじれて、このような騒動にまで発展した。
(まあこじれるように俺が誘導したんだけど…。PTAで話し合うだけじゃ話が広まりづらいからな。)
ただ一つの懸念事項としては弥生のイジメを親が知ることになったこと、本人は自分がいじめられてるなんて、知られたくなかっただろう。俺の復讐のためにあいつの気持ちを犠牲にしてしまったことは、申し訳なく思ってる。
「今回私の娘がイジメをしてるというあらぬ疑いをかけられています。証拠もなく、先生方は一方的に決めつけ、娘達を怒鳴りつけたそうです。娘はショックで今も学校に来れていません。学校側は責任を取ってくれるのでしょうか。」
「その件は現在調査中でして、いちおそういう情報が入れば、生徒達に聞き取りを行うものでして、その際に少し言葉が強くなってしまった可能性もございますが…決して怒鳴りつけたわけでは…」
「うちの娘が嘘を言ってるっていうんですか!!」
「そうだ!!そうだ!!」
早速村井の親がマイクを取り、学校側に先制攻撃を仕掛ける。気の弱そうな教頭がそれに対して返答するが、何を言っても自分が正しいと思っている村井達の親達には火に油をそそぐだけだ。会場の体育館の入り口から覗いている村井達もその様子を見てニヤニヤ笑っている。もっと油をそそいでやろう。
「証拠はあります!」
前田が俺の指示をイヤホンで受け取り、それ通りに発言をする。
「見せてみなさいよ!そうしないとみんな納得しないでしょ!」
「生徒のプライバシーもあるので、この場にいる皆様の同意を得て、この映像を公開したいのですが、宜しいですか?」
会場がざわつき始める。まだここに集まった全ての親が加害者と被害者を知ってる者も少なく、学校側の不当な指導ということで集められただけだったからだ。自分の子供達が加害者、被害者かもしれないという事実に怯えてるからだ。
「いいわよ!皆様もいいですよね!」
村井の親の強烈な圧に押されて、他の親も賛成の意見になる。まるで独裁政権だ。
ただそれをこれから崩すわけだが
「証拠なんていつ撮られた!?」
「はったりでしょ…絶対にないはず…」
村井達はいかにも不安な表情になっている。その不安は当たることになる。
体育館のスクリーンに映し出された映像は、弥生が虐められている映像をえりか達に撮らせたものだった。
そこにははっきりと村井達の顔が映っている。
村井達の親は信じられないという顔で呆然としており、対して弥生のお母さんは顔が怒りに満ちていた。
「これはどういうことなんですか!?村井さん。うちの娘をそちらの娘さん達が囲んで脅しているように見えるんですが!!」
「こ、これは何かの間違いで…!きっと合成よ!」
「そんな苦しい言い訳が通用すると思ってるんですか!?」
「ねぇ、草野さん!?藤吉さん!?こんなの何かの間違いよね!二人も何か言ってよ!!」
村井の親の呼びかけに同じ加害者の親である二人はさっきから沈黙を貫いている。
(無駄だよ…そいつらはもう俺の手中にあるからね)
「村井さん。この映像は確かに私たちの娘がやったものだわ…」
「そうね…。こんなのがあるんだから、きちんと学校側と被害者の親御さんにも謝罪しましょう…」
藤吉と草野の親はそれぞれ弱みがあって、事前に俺が脅しておいた。勿論あんたの弱みを握っているが、あんたのはこの公の場で公開してやろうと決めた。
村井の親は前世で弥生を虐めたことが問題になった際に、弥生のお母さんや弥生を嘘つき呼ばわりして、傷付けた。
あんたが一番の嘘つきって事を俺が証明してやるよ。
「なに言ってるの!二人とも…。こんなの合成よ!ねぇ皆さん!合成!合成!合成!合成!」
村井の親の合成コールに誰もなにもいわない。もう完全にこっちの空気だ。
最後のトドメにもう一つプレゼントをあげよう。
画面上の映像が切り替わり、誰かの家の中が映し出される。村井の親に目がみんないっているので誰もまだ映像が切り替わったことに気付いていない。暫くすると村井の親ともう一人男の人が部屋に入ってくる。
(業者に撮らせたあんたの不倫映像だよ。みんなにあんたの本当の顔見せてやろうな)
「旦那さんは、本当に今日は帰ってこないの?」
「本当よ。今日は一日中できるからね♡」
「旦那さんも可哀想に、こんな大きい家建てて頑張って働いてるのに」
「ただのATMよ。本当に好きなのはあなた!」
音声が流れ始めると、村井の親からスクリーンに保護者の目が行く、皆驚いた表情で固まっている。学校側も慌てた様子だ。
「何なのよこれ!消しなさいよ!!」
村井の親はヒステリックになり、暴れ始める。もうお前の言葉なんて聞くやつ誰もいない。
「やめないか!」
「あ、あなた!?何でここに!?出張のはずじゃ!?」
「そんなのはどうでもいい!今の映像はどう言う事だ!?」
「ち、違うの…これは合成で……」
「ふざけるな!!皆様どうもうちの妻と娘がご迷惑をおかけしました!ほら!桐花!!お前も来い!」
村井のお父さん達が入り口にいる村井を呼び出す。村井は産まれたての鹿のようなプルプルした足取りでお父さんの元に向かっていった。自分の親が不倫していたことのショックと自分のイジメがバレたショックで放心状態になっているようだ。
村井のお父さんは母親と娘を座らせ、頭を押さえつけ、土下座させる。
(最高のショーだ。もうあいつらは学校に来れないだろう。)
そこから学校への糾弾から、村井達の親達が一方的に責められる展開で保護者説明会は終わった。村井のお父さんが来たことが完全にトドメになったな。勿論偶然来たわけではない。俺が事前に事情を説明して来てもらったのだ。証拠を渡す代わりにこの公の場の動画公開の許可を貰った。これで前田の責任は一切問われない。




