四人目②
「ちょっと弥生!顔色悪いけど大丈夫?!」
「大丈夫だよ。えりかちゃん…」
目にはクマが出来ており、明らかに元気がない様子を見て、えりかは心配する。
確かに弥生は疲れていた。それは肉体的な疲労というより、精神的な疲労。
トイレで水を浴びせられるような、表立ったいじめは何故かなくなったが、涼介やえりかのいないところでの細かい嫌がらせは増えた。
親や友人達には虐められている惨めな姿を見られたくないという気持ちから相談も出来ず、ストレスや不安を自分の中で押しとどめておくことしか出来ない。
そんな弥生の唯一の救いは雪が相談に乗ってくれることだった。
(滝川さんが言うように、大事にせず反応しないで我慢してれば、次第に飽きていじめは止むはず…。下手にここで涼介くんたちに知られたら、涼介くんたちに虐めの矛先が向いちゃうかもしれない。)
「それじゃあえりかちゃん。私用事があるから先に帰るね!また明日!」
「う、うん。気をつけてね…。」
(やっぱり絶対変…。いつもは涼介を待って一緒に帰るのに…。明らかに避けられている。涼介なら何か知ってるかな)
親友の自分がその事実を知らないと言うことと、涼介なら自分より信頼されていて、知っているだろうことが悔しかった。
(自分の変なプライドよりも、今は弥生のことが心配)
一一一一一一一一
えりかは弥生と別れた後、涼介とラインで会う約束をし、誰も来ない学校の裏手に呼び出した。
「あんた弥生に何したのよ!」
「何もしてない。俺だって急に避けられて訳がわかんないんだよ!」
「何か覚えないの?あの子が悲しむなんてあんたのこと以外だとそんな思いつかないんだけど…」
「…告られた。」
「は?誰に!?」
「弥生に告られたんだよ…。それでそっから何か避けられるようになった」
「あんたまさか断ったの!?」
「断るも何も喋らせてもらえないんだよ…。それにこのことが理由ならお前を避ける意味もわかんないだろ。」
「確かにそれもそうね…。」
確かに涼介のことが理由なら、気まずいのは涼介だけのはず、えりか自身が避けられることはない。それよりもあの大人しい弥生が告白をしたことに驚いていた。そして自分がそれを知らないことにショックを受ける。
「あ、涼介くんに橘さん。こんな所で何してるの?」
「雪ちゃん!?なんでここに?」
「別にあんたには関係ない。それよりも涼介!何、名前で呼び合ってんのよ!?」
「いや、それは成り行きで…。」
「それ橘さんに関係あります?恋人でもないのに」
目には見えないが、二人の間に火花が飛び散っている。
涼介は女の戦いの前ではすっかり蚊帳の外だ。
「私はこのゴミ置き場に、ゴミを捨てにきただけなんで、帰りますね。弥生ちゃんも待ってるし」
「どういつもりよ…。弥生に最近つきまとって!」
「付き纏ってなんかないですよ。私は弥生ちゃんの友達ですよ。一緒にいたっていいじゃないですか。」
「最近元気ないのは知ってるでしょ!あんたがなんかやったんじゃないの?」
「私はそのことで相談を受けてますよ。ただ私には話して、自称親友には話さないのって貴方に原因があるんじゃないんですか?」
「な、なんですって!」
雪の胸ぐらをえりかが掴みかかる。ただ雪は眉一つ動かさずに
見下した目でえりかを見つめていた。
「そうやって直ぐ感情的になるから、誰も貴方に相談したがらないんでしょうね…。弥生ちゃんの言った通りだな」
「っツ!?」
「えりかちゃん!やめて!」
雪の言葉に激昂し、手を振り上げた瞬間、聞き慣れた声でえりかを止める声がする。
「や、弥生なんで…」
「雪ちゃんから呼び出されたの。何で雪ちゃんにあんなことしようとしたの?」
「こいつが最低だから…。なんでこいつのこと庇うの?」
「だって雪ちゃん何もしてないんだよ…」
「…弥生何を悩んでるの?私や涼介に話してよ!!親友でしょ私たち。」
「…ごめん。それだけは話せない。で、でも」
「もういい!!」
目に涙をためて、えりかはその場から走っていった。
「弥生俺にも話せないのか?」
「ごめん…。」
「そっか。お前とは信頼し合ってると思ってたよ…。俺あいつのこと心配だから見てくるわ!言いたくなったら言ってくれ、待ってるからさ!」
涼介は一瞬寂しそうな顔をした後、えりかの後を追っていった。
「大丈夫だよ。弥生ちゃん。今は二人のために耐えよう。」
「うん…。雪ちゃん」




