流砂
我、生存(訳:生きてます)
というわけで結構間が空いた投稿です
久しぶりなので長めです(?)
「あの小高い丘みたいになってるとこに敵が隠れてるな。数は5だから迂回したほうがいいかも?」
「この先に敵いるな。一匹だから倒してもいいかも…。やるんなら俺が釣って来るよ」
「斜め前からこっちに歩いてきてるのがいるな。数は3、どうする?やるか?」
砂漠の攻略中、俺のスキルによって得た情報で必要なものを抽出して二人に伝える。こんなことを続けていると索敵を続ける俺の後ろでステップとAYAの二人が話し始める。
「砂漠の攻略ってこんなに楽だったっけ?」
「いや、前挑戦した時はもっと厳しかったよ。あの時は今よりも人は多かったのにね…」
「そうだよな…。あの時は隠れてるやつ倒したら連戦する羽目になって死んだんだっけ」
「うん、そうだね。あの時はきつかったなぁ…」
その会話を聞いた俺は、その時のことを思い出したのかどこか遠い目をしている二人の会話に混ざる。
「そればっかりは経験の差としか言えないかな、伊達に前作やりこんでないんでね。」
「そう言い切る当たり流石だな…」
「あたぼうよ。大体この範囲で戦ったら敵が反応してくるとか全部考えて戦闘するか、迂回するかの選択肢を提示してるからな。迂回するにしてもこの範囲に入らないようにとかもあるし、そのあたりの感覚は全部経験だからな」
俺の言葉に感嘆したような、それでいて呆れたような反応を見せる二人にそのまま話を続ける。
「あとは三人だけってのも大きいな。少人数なら支持の伝達もしやすいから事故率も低いしな。あっ、敵来るぞ。1匹、速攻」
「了解だ。それにしても本当にレインを誘って正解だったな…」
「そうだね。なんて言うか一家に一台ほしい感じ?」
「誰が家電製品だ!」
最後のAYAの言葉に思わず思わずツッコミをいれながらも正面から迫る敵、サンドフィッシュの攻撃を弾く。サンドフィッシュは砂漠を泳ぐ魚のような形のモンスターで、移動速度こそ脅威なものの攻撃は鋭く生えた歯による噛みつきしかないため攻撃は読みやすい。難なくかみつきを弾いた俺は、地面に逃げられないように一回だけ切りつけるとその場を飛びのく。開いた隙間を埋めるようにステップが飛び込んできて二本の剣による連撃を繰り出す。さらにダメ押しでAYAの魔法がサンドフィッシュへ着弾するとその姿を光へと変えて消滅する。
「ナイスー。お前ら相手だと言葉少なくても伝わるから楽でいいや」
「伊達に幼馴染やってないからね」
俺の言葉にAYAがエッヘンといった感じで胸を張る。ステップも会話に加わろうと口を開けたところで、
バゴーン
遠くからそんな音が聞こえる。その方向を見ると砂漠から棒のようなものが生えている。目を凝らしてよく見てみると…
「あれは…ワーム?にしてはでかくね?」
俺のよく知るワームは大きくとも人間大のサイズのミミズのようなモンスターだ。間違ってもあんな塔のような大きさではなかった。俺の呟きにこたえるようにステップが話し出す。
「あれはビッグワームだな。この砂漠にしかいない中立モンスターだ」
「そんなのがいたのか、って中立モンスター?そんなの初めて聞いたぞ」
「レインが知らないってことは今回から追加されたんだろ。中立モンスターは文字通り基本的には敵対しないモンスターで、特定の条件を満たすとああやって出てくるんだ」
「特定の条件っていうと…あれか?」
そう言いながら俺は視界の片隅に見える流砂を指差す。この砂漠の攻略中も何回か見かけたものの見え見えの流砂に引っかかるはずもなく、何があるのか分かっていなかったが特定の条件といわれるとあれしかないだろう。その予想は当たっていたらしくAYAがピンポーンといいながら解説してくれる。
「流砂の下のところにプレイヤー、もしくはモンスターが落ちるとあんな感じで下から突き上げられて落下ダメージで死んじゃうんだよ。レイン君も気を付けてね?」
「それはもはや振りにしか聞こえないんだけど?」
「ちなみに運がいいと…いや、この場合は悪いとなのかな?突き上げられた後にサンドワームにパクりされちゃいます!ちなみに即死だよ」
AYAの少しオブラートに包まれた言い方を聞いて頭の中で少しだけ想像する。下から突き上げられて迫る地面に恐怖しながら下を見るとビッグワームの開いた口がある。そしてそのまま…
そこまで考えたところでびくりと体を震わせる。
「絶対にヤダ」
思わず感想が漏れる。その様子に苦笑しながらステップが話す。
「まあ、普段から流砂は見えてるわけだし気を付けてれば落ちないよ。問題は砂嵐の周りが見えずらい時だな。とは言え、食べられるのは滅多にないらしいけどな」
「安心できねぇ。そんなこと言って俺がなった時に限って引き当てるんだぜ」
「そういうこと言うからフラグが立つんじゃない?」
AYAからの指摘に思わず黙り込む。その様子を見て「もう遅いよー」なんて言いながら笑っているAYAを少しだけ睨み呟く。
「くっ、はめられた。これが策士ステップの罠か…」
「とばっちりにも程があるわ!お前が勝手に自爆しただけだろ」
ステップに軽くド突かれながらも俺たちは笑いながら、そして見える流砂を警戒しながら歩みを進める。
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砂漠の攻略を進めること数十分、ステップに聞いたところ進行度的には半分を超えたあたりらしい。まじこのマップ広すぎるんだが…。なんて現実逃避を少しだけしたところで現状を説明したいと思う。現在俺たちは砂嵐に襲われている。これだけならば問題はない。多少視界は制限されるものの敵の位置もある程度把握できるし流砂も気を付けていれば問題はないのだ。ならばなぜ現実逃避をしていたのか…それは。
流砂を背後に背負った状態で多数の敵に囲まれているからである。ちなみに敵の数は6匹、ビッグスコルピオ、サンドフィッシュ、サンドウルフの混成で敵の位置は分かるものの種類は分からずかなり面倒くさい。逃げようにも背後は流砂、周りは敵に囲まれており逃げ道はない。
「えっと、かなりまずい状態だよね」
「おう、滅茶苦茶にまずい。俺の判断ミスだ、すまん…」
「こればっかりは仕様がない、運がなかっただけだろ」
何が起こったのかというと、まず隠れてたビッグスコルピオ1匹を倒そうとして戦い始めた。そこに砂嵐が訪れ戦いが長引くうちに他のモンスター5匹が合流。少しづつ後退していくとそこには流砂がという絶望的な状況である。
「とりあえず『挑発』を使ってタゲ取りするから出来る限り速やかに数を減らしていってくれ」
「「了解」」
二人の返事を聞くや否や俺は『挑発』を発動させながら敵がいるほうへと突っ込む。敵同士で攻撃してくれないかなと思いつつも期待はせずに目の前に現れたサンドフィッシュの攻撃を弾き、できるだけ遠くに飛ばす。次に側面から迫るサンドウルフの爪による攻撃をかわす。息をつく暇もなく砂嵐で見えない場所からビッグスコルピオの尾による突きが飛んでくる。予想外の攻撃に体は動かず、回避も弾きも間に合わない。
「ぐっ、このっ!」
ダメージを受ければ『挑発』は解除され、ほかの二人がやられてパーティは壊滅するだろう。それを避けるためにも攻撃をガード、俺のスタミナはごっそりと持っていかれるもののダメージを受けることは回避する。ビッグスコルピオの尾を押し返すと側面から挟むようにサンドフィッシュの攻撃が来る。それを慌てて飛びのいて回避するが、後ろに下がったことにより背面には流砂が近づく。
「レイン!」
「レイン君!」
俺を心配する声を上げる二人、その方向を見るとサンドウルフが走って来るのが見える。二人が攻撃していたのが仕留めきれずにこちらへ来たのだろう。サンドウルフは勢いのままにとびかかって噛みつこうとしてくる。タイミング的に弾きは間に合うだろう、だがあの勢いの付いた攻撃を弾けば俺の体は流砂のほうへと押しやられるだろう。一瞬で判断を下し、その場で攻撃を回避するとサンドウルフの体を蹴飛ばす。キャインと声を上げてサンドウルフの飛んだ先には流砂がある。
「これで一匹…」
流砂にはまればプレイヤー、モンスターに関わらずビッグワームに突き上げられて死ぬ。それを利用するためにサンドウルフを流砂のほうへ蹴飛ばした。どれくらいの範囲に被害を出すのか分からないためかなりの賭けだが、あのサンドウルフはもう気にしなくていいはずだ。とはいえまだ5匹残っている状況、油断は禁物である。そう心に刻みながら正面から来たサンドフィッシュの攻撃を回避する。そのまま流砂のほうへと消えていくが、泳げるモンスターには意味がないだろう。そこまで考えた俺の耳にステップの声が届く。
「サソリ大技!」
その声を聴いた瞬間にその場で飛びあがる。足が当たらないように空中で大の字を取った俺の下をビッグスコルピオの尾が通り抜ける。ステップの声がなければ確実に死んでいたであろう一撃に肝を冷やしながらも着陸し、隙を狙っていたサンドフィッシュの攻撃を弾く。好転しない状況に焦った俺はダメージを与えることを優先して今しがた攻撃を弾いたサンドフィッシュの急所に突きを決める。しかしこれが悪手であった。急所に攻撃を決め再び周囲を警戒し始める一瞬、その隙に俺の足に電流が走ったような不快感が走り抜ける。足を見るとサンドフィッシュが噛みついている。
「やべっ」
幸いにして俺の紙装甲でもそこまでのダメージはないが、ダメージを受けたことによって『挑発』が解除される。すぐに『威嚇』を発動させるが『挑発』ほど敵を引き付けることは出来ない。敵が多いこの状況でここまで戦えたのは、俺一人ですべてのタゲを受け持ち二人に攻撃を任せていたからに他ならない。『威嚇』である程度タゲを取ることが出来るとは言え、二人にも攻撃が向くようになればどこかで綻びが出て壊滅は必須である。足に噛みついたサンドフィッシュを切りつけて放させると同時にこの状況を打開するために頭を回し始める。すでに二人にも攻撃が向き始めているため急がなければならない。そしてはたと気づく。
(ビッグワームが出てないのはなんでだ?)
さっき流砂の方向へとサンドウルフを蹴飛ばした。流砂の大小があるとは言え、もう中心についててもおかしくないはずだ。そして、中心に着けば少し前に見聞きしたように轟音を立ててビッグワームが出てくるはずだ。しかし、流砂の近くにいてもその気配はまるで感じない。
(サンドウルフがまだ中心についてない?いや、それはない…。だとすると神音から聞いた話と合わせると…)
そこまで考えたところで二人に向けて声をかけながらある行動をとる。
「流砂に落ちるぞ!」
そう言いながら俺は後ろに飛ぶ。着地すると俺の体は徐々にその中心へと寄せられていく。ステップとAYAは俺の行動に驚き顔を見合わせるもすぐに決意を固めて流砂に向けて飛び込む。その頃には俺の体は流砂の中心に引き寄せられており、体が沈み始める。実際に見たわけではないがビッグワームが出てくるならこのタイミングであろう。しかし、ビッグワームが現れる気配はない。そのまま俺の体は砂へと飲み込まれる。
体感的には三秒ぐらいだろうか?そのぐらいの時間が経過した時体が不意に浮遊感を覚える。下を見ると砂がうずたかく積もっており、その上には先ほど落としたであろうサンドウルフが立っている。
「そぉぉぉぉぉい!」
そんな掛け声を上げながら俺はしてにいるサンドウルフの急所を貫く。ステップとAYAにより体力が減っていたのかその一撃でサンドウルフは倒れる。そして落ち着いて周りを見ようとしたところで
「うおっ」
「きゃあ」
という悲鳴が聞こえる。もちろん俺に続いた二人の悲鳴であろう。そして俺が立っているのは落ちてすぐの場所だ。つまり…
「ぐえっ」
カエルのような声を上げて俺は二人の下敷きになる。
「うわ、なんだこの空間…」
「流砂の下のこんな空間があったなんて…」
「取り合え上からどいてくれーい」
その声にハッと気づいた二人は申し訳なさそうに俺の上から離れる。そして体に着いた砂を払っているところに疑問の声をかけられる。
「それでここはどこなんだ?」
「さあ?確実なことは何ともわからん。この空間ももしかしたらぐらいだったしな」
「はあ!?もしかしたらでこんなことやらせたのかお前…」
「あはは…すまん。完全に俺のプレイミスが原因だからな、本当にすまん」
急にしおらしくなった俺の態度に何も言えなくなったのかステップが黙り込む。代わりにAYAが俺を元気づけるように言う。
「大丈夫だよ!結局は全員こうして生きてるんだし、結果オーライだよ!」
「…ありがとう。俺もまだまだ修行が足りねーな」
「お前はまだ強くなるつもりかよ…」
「それにレイン君の予想って砂漠の噂の奴だよね。それだったら当たってるみたいだよ!」
AYAの言葉に顔を上げその指さす方向を見ると通路があり、その先には町のようなものが見える。
「よし、早速行くとしますか」
ステップのその言葉に頷き、俺たちは町に向けて歩き出す。近づくにつれて見えてきた街の全容は場所を考えると異様なものであった。
「一言でいうならアニメに出てくる技術が発展した未来の機械都市?」
「長いな…。まあそんな感じだけども」
「とにかく行ってみよー!」
AYAの言葉に俺たちは覚悟を決めると機械の街に足を踏み入れた。
前回からだいぶ間が空きましたが、待ってくれていた方がいたならありがとうございます
また期間が空くときもあるかもしれませんが気長に待っていてもらえれば…




