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第一回イベント その11

いつもの二倍ぐらいの量です

「あの状況でも生き残れるなんて、さすがは絶対回避だねぇ」


 乱戦を生き残った俺とバットゥー侍、再び対峙したことでバトルが始まるかと思いきやバットゥー侍が話しかけてくる。


「たまたま運が良かっただけですよ」


「謙遜するねぇ、あれは運がいいからって生き残れる状況じゃないよ」


 俺の言葉に対してバットゥー侍が少しばかり呆れたような様子を見せながらも反応する。

 俺としてはすぐに戦いが始まると思っていただけに肩透かしを食らったような気分である。一応会話しといて油断したところを…なんてこともあるかと考えてはいたが、バットゥー侍の様子を見るにその気もないことがわかり肩から力を抜く。


「安心しろ、そんな不意打ちっぽいことをする気はねぇから」


 俺の様子を見ていたバットゥー侍から声をかけられる。しかし、乱戦の時に狙われた記憶が新しく俺はジト目をバットゥー侍に向ける。それどころか口に出ていたらしくバットゥー侍が笑い始める。


「くくく…、面白いなお前。まあ本当に安心してくれ、俺としても前作ではあまり交流する機会もなかったからな、どんな奴かって気になってたんだよ」


「野郎に興味持たれてもうれしくないんですけどね…」


「がっはっは、そうつれないこと言うなよ。」


 この後も少しだけ他愛ない会話が続くが、会話が途切れるとバットゥー侍の纏う雰囲気が一変する。


「さてと…。そろそろ観戦してる奴らも痺れを切らす頃だろうし始めるとしますかぁ」


 言うや否や腰の刀の柄に手を添えると居合の体勢を取る。ただそれだけの行動なのに感じる圧迫感が激増する。少しでも隙を見せればあっという間に切られて退場することになる、そう感じざるを得ないほどの緊張感の中、俺はつばを飲み込む。

 互いに向き合い一挙手一投足を見逃さぬように集中していると周りから音が消える。風が通り抜ける音も木がざわめく音も俺の耳には入らなくなる。緊張感が最大まで高まりきった時、どこか遠くのほうで大爆発が起きる。その爆発をきっかけにバットゥー侍が動く。


「縮地!落滝らくろう!」


 スキル『縮地』により一息で距離を詰めたバットゥー侍が連続でスキルを発動させ攻撃へとつなげる。まずは居合切りによる高速の切り上げ、あらかじめ予測していた俺は想像よりも早いその一撃を何とか弾くことに成功する。しかし続くニ撃目、初撃の軌道をなぞるように振り下ろされる高速の攻撃は弾くことが出来ずに俺のスタミナを削る。

 スキルとしての攻撃はここで終了し、刀にまとっていた蒼白いエフェクトが消える。しかしそれで攻撃が終わるはずがなく、体を回転させその勢いのままに足元を狙った切り払いを仕掛けてくる。これをジャンプすることで回避した俺は、バットゥー侍の頭に向けてたたきつけるように短刀を振り下ろす。この攻撃は跳ね上がるように振るわれた刀によって防がれ、そのままつばぜり合いとなる。


「さすがにここまで生き残っただけあるねぇ、なかなかに手ごわい」


「そりゃどうも、こっちはかなりギリギリですけどねっ!」


 一瞬だけ挟まれた会話、その最後で力を入れて無理やりバットゥー侍と距離を離すが、休ませはしないとばかりにバットゥー侍が走って距離を詰めてくる。そしていつの間にか鞘に納めていた刀の柄をつかみ、姿勢を低くするとスキルを発動させる。


「鏡花の構え」


 イベントが始まる前のルークとの特訓では出てこなかったスキル名を聞き、警戒心を強めるがバットゥー侍の攻撃は単純。首を狙った居合切りによる一閃、しかも今までに比べるとはるかに遅く、むしろ弾くタイミングを合わせるのに苦労するような一撃だった。しかし…


「はぁ!?」


 タイミングを合わせ攻撃を弾くために振るわれた短刀は、刀に触れることなく通り過ぎる。短刀どころか俺の首に触れてもダメージは発生せず、バットゥー侍の体すら俺の体をすり抜けていった。思わぬ出来事に少しだけ思考が停止する。そしてその隙を見逃さぬように俺の背後に通り抜けた時点で反転し始めていたバットゥー侍が再びスキルを発動させる。


血煙旋舞けつえんせんぶ!」


 一撃目、反転した勢いのままに振られた刀は足を狙って振るわれ、少しだけかすめて俺の体力を削る。

 二撃目、一撃目のあとそのまま回転して腰辺りを狙うように振るわれた刀は、クリーンヒットする前に短刀を潜り込ませることで防ぐ。

 三撃目、胸の辺りを狙うように同様に振るわれ、こちらも何とか短刀を割り込ませることで防ぐ。

 四撃目、回転しながら姿勢が低くなり俺を正面にとらえた瞬間に、飛び上がりながらの切り上げ。何とか弾くことに成功するが、かすめていたようで少しだけ体力が削れる。

 五撃目、このスキル最後の一撃。空中で回転の勢いをすべて込められた強力な横薙ぎ。これを身をかがめることで髪の毛が少しだけ切れて舞う感覚を感じながら回避する。


 スキル『血煙旋舞』をやり過ごした俺は空中にいるバットゥー侍に向けて『致命の一撃』を発動させる。身動きのできない空中へ放たれた急所への攻撃、当たれば確実に痛手を与えられる一撃。対してバットゥー侍は回避は出来ず、スキル使用の硬直により刀による防御は不可能。急所を外すわけもなく絶対に当たると思っていた一撃。しかしその一撃は刀を持つ手とは逆の手、左手が急所をかばうように差し出されたことによって防がれる。俺の一撃は左腕に突き刺さり急所へ届く前にその効果を終了する。『致命の一撃』は急所に当たらなければ威力が落ちるスキルだ、そのため大したダメージを与えることもできずにせっかくのチャンスを逃したということになる。

 お互いにスキルによる攻撃で痛手を与えることが出来ず、距離を取ってスタミナを回復させる。


「さすがにしぶといねぇ、最近始めたってのがウソみたいだよ」


「簡単に負けたらうちの団長に怒られるんでね、せめて一矢報いさせてもらいますよ」


「やっぱり面白いね君。とはいえさすがに時間もかかりすぎてるし奥の手を出させてもらうよ」


 スタミナを回復させる間に交わされる会話。俺の言葉に笑いながら返すとバットゥー侍は一つのスキルを発動させる。


「このスキルを人に見せるのは初めてなんだ、誇りに思うといい。『修羅顕現』」


 バットゥー侍がスキル『修羅顕現』を発動させた瞬間にバットゥー侍の体全体からダメージエフェクトが弾ける。普通ならすぐ消えるはずのエフェクトが消えることなく集まりバットゥー侍を覆いつくす。体を覆ったエフェクトは徐々にその形を変え赤い色の鎧を作り出す。顔には般若のような面がつけられ、その目は赤く光っている。


「明らかにやばそうなのが来たな…」


 今見た凝った演出、そしてバットゥー侍から感じる威圧感、すべてがこのスキルの強さを物語っており頬を汗が伝う。それと同時に心の底からワクワクとした気持ちが沸き上がる。バットゥー侍はこのスキルを人に見せるのは初めてといっていた。そしてルークもこのスキルの存在を知らなかった。つまり完全に初見のスキル、そしてそれを使う最強プレイヤーの一人。何が言いたいかというと難易度ジャンキーとしての心に火が付いた。


「面白れぇ、攻略してやるぜ!」


「閃撃!」


 明らかにスキル発動前よりも速いスピードで距離を詰めたバットゥー侍がスキルを発動させる。高速の切り払いの一撃、スピードは速くなったが弾くことは難しくなかった。しかし、攻撃が接触した瞬間に俺の体は踏ん張れずに吹き飛ばされる。どうやら攻撃面でも強化されているらしい。


(となるとステータスアップは確実…。スキル発動時にダメージエフェクトが出たことから自傷系のスキルなのは間違いなし。だとするとほかにも効果がありそうだな…)


 頭の中でスキルの分析をしながらもバットゥー侍から目を離すことはしない。吹き飛ばされた俺に対し、距離を詰めたバットゥー侍は再びスキルを発動させる。


「竜の旋律!」


 竜の旋律はランダムに五回の攻撃が放たれるスキルで決まった場所を狙うには不適であるが、スキルを知っていても毎回ランダムな軌道であるため攻撃の起点としてよく使われる。攻撃を見極めて弾くためにより一層集中する。

 初撃は振り下ろし、難なく攻撃を弾く。二撃目、三撃目は左右の高速切り払い、二撃目を弾くことに成功するが、三撃目は切り返しが速く弾きに失敗する。四撃目は鋭い角度で振り上げられる切り上げ攻撃、これも弾くことに成功する。そして最後の攻撃、今まで見たどの突き攻撃よりも早い突き。これは弾くことはせずに回避する。


「血煙旋舞!」


 五連撃をやり過ごすと息もつかせぬように次のスキルが飛んでくる。しかし一度見たスキルなうえ、少しだけ『修羅顕現』のスピードにも慣れた俺はこのスキルを完璧に弾くことに成功する。

 連続で三回のスキルを発動させ、その上俺の『パリイ』によってスタミナはかなり削ったため一度距離を取ると考えたのだが、バットゥー侍の次の行動は再びスキルを発動させることだった。


「剛突!」


「うっそだろお前!?」


 放たれた攻撃は単調な突き。少し早いくらいで普通なら弾くことに問題はないが、予想していなかっただけに反応が遅れてパリイは間に合わない。ギリギリ防ぐことに成功するが、勢いに押されて大きく後ろに下げられる。地面には足で踏ん張った線ができている。

 数回のパリイ失敗によって減ったスタミナを回復させるためにショートカットからスタミナポーションを呼び出す。しかし使用させまいとバットゥー侍が『縮地』を使って距離を詰めてくる。スピードを優先したのかスキルを使用せずにただの突きを放ってくる。これを回避しながらスタミナポーションを使用してスタミナを回復させると迎え撃つために体勢を整える。


(とは言えこのままじゃジリ貧なんだよな…。多分時間制限があるタイプのスキルだから時間切れまで耐えられれば勝てるんだろうけど…)


 このイベントの三日間で補給もなくスタミナポーションを使っているため、残りのスタミナポーションは三本となっていた。このペースで使っていてはおそらく時間切れまで持たない。かと言ってもし、時間切れまで耐えることが出来て勝ったとして、果たしてそれは攻略したといえるだろうか。

 人によっては攻略したといえるかもしれない、だが俺にとっては断じてノーである。つまり、相手の時間切れ前、かつ俺のスタミナポーションが切れる前に勝利を収めなければならない。


(残り一本のところから勝負だな)


 二本は相手のスピードにならすために使い、残り一本になった時点で勝負を仕掛ける。そう心の中で決めながらバットゥー侍の放ってきた攻撃を弾き続ける。バットゥー侍のスキルを何回か弾き一本目のスタミナポーションを消費する。さすがに向こうもスタミナが無くなってきたのか、この時には攻撃してくることはなかった。


(しっかり弾ければチャンスがあるかもしれないな…)


 勝つために常に考え続けながら目の前に迫る刀を弾き続ける。確実に弾ける確率は上がっているもののいまだ不安が残る状態のまま二本目のスタミナポーションを消費する。

 残りは一本、勝負に出る時だ。しかし、バットゥー侍がこれまでのスキルとは異なるスキルを発動させる。


「修羅の舞」


 名前からして『修羅顕現』と関係のあるスキルなのだろう。向こうも勝負に出るようだ。俺も残り一本のスタミナポーションを使って、八割ぐらいあったスタミナを最大まで回復させる。

 スキルを発動させたバットゥー侍が刀を鞘に納め居合の体勢を取る。達人の居合は刃が見えないと言うが、バットゥー侍が放った攻撃はまさにそれだった。今までとは比べ物にならないほどの速い攻撃。俺はバットゥー侍が動き始めたと思うと同時に短刀を振っていた。目にもとまらぬ速さで振られた刀と短刀が衝突し火花が弾ける。パリイは成功していた。


 バットゥー侍は止まることなく攻撃を続ける。居合切りの次に放たれた攻撃は振り下ろし、居合切りの後そのまま回転し、勢いの乗った振り下ろし。弾くことに成功するが勢いに押され少しだけ後ろに下げられる。そのまま距離を詰めながら突きが飛んでくる。これをすれすれで回避して次の攻撃に備える。上下左右、あらゆる角度から襲い来る斬撃を見極めながら弾き続ける。いくつか失敗したものの俺のスタミナは五割残っていた。

 横薙ぎに振るわれた一撃を弾くとバットゥー侍の動きが止まった。見慣れたスキル使用による硬直。この隙を逃さぬように『致命の一撃』を発動させて攻撃するが、当たる直前で目の前からバットゥー侍の姿が消える。ギリギリで硬直を抜け出したバットゥー侍が上へと跳んだのだ。


「せあっ!」


 上へと跳んだバットゥー侍が両手で刀を構え、気合を入れて振り下ろす。タイミングを合わせて弾くが、落下の勢いも乗った刀の一撃に耐え切れず体勢が崩れる。それでも後ろに飛ばされないように地面に短刀を刺して踏ん張るが、バットゥー侍からすれば隙だらけの体勢。


「剛突!」


 スキルの出が一番早い突き攻撃を使用して俺を仕留めにかかる。スタミナ的に防ぐという選択はない。防げばスタミナが無くなり確実に負ける。ならばパリイはどうかというと、体勢からして間に合うような状態ではない。じゃあ、攻撃を受けて耐えられるのかといえば絶対にない。自分が貧弱ステータスなのは把握している。ならばどうすればいいのか…


「…っ!」


 観戦していた誰もが勝敗を確信した中、俺は考えるよりも早く勝つために動き始めていた。自分の左手を伸ばす。突きが自分へと届く前に刀の側面をつかむ。手が切れ刃の部分へと当たりダメージエフェクトが弾けるが気にせずつかみ続ける。地面に刺した短刀を逆手に掴みながら、左手を起点としてバットゥー侍の右側へ回転しながら回り込む。突きを躱し背後に回り込んだ俺はそのまま逆手に持った刀をバットゥー侍の背中へと突き立てる。


「まじか…勝ったと思ったんだけどな…」


 そんな言葉をこぼしてバットゥー侍が光となって消える。俺一人だけが残り静かになる。


「よっっっしゃーーーーーーーーー!」


 静かになったところへ俺の雄たけびが響き渡る。こんなことをすればほかのプレイヤーが寄ってきそうだが、そんなことはどうでもよかった。それに黄金平原の誰かが近づいてきているみたいだったので遠慮なく叫ぶ。


 この後、仲間と合流した俺は程なくして優勝を知らせる「CONGRATULATIONS!」の文字を見ることとなる。

長かった第一回イベントもようやく終了しました!


次回は観戦サイドの話にするかストーリー進めるか悩み中っすね

応援よろしくお願いします!

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