第一回イベント その9
きりのいいところまで書いたらいつもより長くなってしまった…
特筆するようなこともなくイベント二日目が終了し、最終日である三日目。俺はとある二人のプレイヤーと睨み合いながら頭を抱えていた。睨み合っているプレイヤーの名はカリバーとバットゥー侍、どちらも開拓旅団をまとめ上げる団長であり、トップクラスの実力者である。
(ど う し て こ う な っ た)
目の前にいるプレイヤー二人と睨み合いを続けながら心の中でこの状況に至った経緯を振り返る。現実逃避といえるかもしれないが…
事の発端はイベント二日目終了後、三日目の拠点にて行われた作戦会議中であった。
_____________________________________
「二つのチームに分ける…ですか?」
神音がルークの話した作戦を繰り返す。
「そう、三日目からは全プレイヤーの位置が表示されるからね。どこもかしこも混戦になると思うんだ。だから二つのチームに分けて殲滅力を上げようと思ってね、それに片方が全員やられてももう一つが生き残ってれば負けにはならないし。まあ、その分一人一人の負担が増えるけどね」
ルークの作戦の詳細を聞き、全員が頭の中で作戦について吟味する。
「黄金平原ならみんな強いし、やれないこともないと思うんだけど…どうかな?」
その言葉に全員が頷く。特に反対はないようだ。その時拠点の外から複数の爆発音が聞こえる。三日目になったことで俺たちが休憩していると思い、襲おうとしたら罠にかかったのだろう。こちらに向かっていたプレイヤーのアイコンが消滅する。
「それでどうやって二つに分けるんだ?」
何事もなかったように力 is パワーが話を振る。
「僕が決めてもいいんだけど、今回はくじ引きで決めようと思ってね。ガル爺に頼んでくじを作ってもらいましたー!」
ジャジャーンとでも言いたげなノリでルークがアイテムボックスから筒の中に九本の棒が入ったくじを取り出す。その様子にガル爺以外の全員が呆れたような視線を向ける。
わざわざこのためだけに用意したのか…
そんな声が聞こえてきそうだ。そんな様子を全く気にせずテンション高めなルークが、一人一人のもとに回ってくじを引かせる。
「みんな引いたね、それじゃあチームに分かれるよー。印有りは僕のほうに来てねー」
その言葉を受けてメンバーがそれぞれのチームへと分かれていく。俺の棒には印らしきものは確認できない。そのためルークとは反対の方向へと向かう。結果、俺のチームは神音、ミーニャ、ガル爺、ミラの五人となった。
「うんうん、分かれたね。じゃあ僕たちは先に行くよー」
その言葉を受けてルークたちのチームは拠点の外へと向かっていった。残された俺たちはルークたちを見送ると神音が切り出す。
「私たちも動きましょうか。あっ、ミラさん」
「なにかしら?」
「本来なら副団長の私がするべきですが指揮を任せていいですか?」
「ん、いいわよ」
「ありがとうございます」
そんなやり取りののちにミラが少し考え、作戦を話し始める。内容としては基本漁夫の利を狙い、俺とミーニャで場をかき回し、そこをミラとガル爺が遠距離から攻撃、神音は両方の補佐をすることになった。
「ルークたちは南のほうへ行ったみたいだから、私たちは反対の北へ行きましょう。間に合いそうならその先でやりあってるパーティを潰すわよ」
ミラの指示に全員が頷き移動を開始する。その道中は襲われることもなく安全に目的の場所へと到着する。聞こえてくる音からしてまだ戦いは終わっていないようだ。俺はミーニャと視線を交わすと戦場に向けて飛び出した。その瞬間に見えたものは4つのパーティが入り乱れる混戦。どのパーティも欠員が出てるとはいえかなりの人数だ。
俺は手始めに目の前でつばぜり合いの状態で膠着しているプレイヤー二人に近づくと、すり抜けざまに急所を貫く。これによって二人のプレイヤーは光になって消え、周りのプレイヤーたちが俺を認識する。俺に注目が移った瞬間に別方向から迫ったミーニャが一人を光に変える。そこからは俺たちも交えた混戦が始まる。俺とミーニャはまるで殺陣のような動きで相手を倒し、ミラとガル爺が遠距離から敵を倒す。敵の数も残り少なくなったところでそれは起こった。
「剛破衝!」
敵の攻撃を飛んで避けた俺の着地を背後から狙うように振るわれたハンマーによる一撃。空中にいるためもちろん回避はできない、普通ならくらって終わりとなるはずの一撃。しかし、俺は体をひねって無理やり向きを変えながら手に持つ短刀を振るう。振るわれた短刀はハンマーと衝突し火花を散らす。さすがにパリイは成功せずに俺のスタミナはごそっと削れるがやられるよりはマシ、そう思っての行動だったので問題はない。予想外のことが起きたのはこの後。
ガード判定となった俺の短刀はハンマーの一撃の勢いを余すことなく俺に伝える。その結果、空中にいる俺は踏ん張ることが出来ずにハンマーの振るわれた方向に向けて体が動き始める。
「ちょっ、まっ…ああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
予想していなかった事態に思わず声を漏らすがもう遅い。俺の体はハンマーの一撃によって軽々と弾き飛ばされ宙を舞い、戦っていた場所よりはるか遠くへと飛ばされる。
「レインー!?」
ミーニャの叫び声が徐々に遠くなって聞こえる。弾き飛ばされた俺は何とか空中で態勢を整えると、着地に向けて動き始めるが…
「へぶっ!」
目の前に現れた木に体ごとぶつかりそのまま地面に墜落する。地面に落ちた俺は、ぶつけた顔面を押さえながら自分の体力を確認する。
うわ、今ので7割削れてんじゃん。ガル爺の防具がなかったら即死だったな。今ので死んだらござさん以上のネタ枠にされるところだった…
アイテムボックスから回復アイテムを取り出して回復しながら、この後どうするかを考える。
(結構飛ばされたよな…神音たちと合流したいところだけど…)
そこまで考えたところで後ろからガサッという音が聞こえ、そちらの方向へ注意を向ける。そこのいたのはこちらを見ている7人のプレイヤー。間違いなく敵ですありがとうございました。
自分の運の無さを呪っていると相手の団長らしき男が声をかけてくる。
「何があったかは知らんがこんなとこに一人でいると危ないぞ。気を付けないと俺らみたいなのに袋叩きにされるからな」
「あはは、逃がしてくれたりは…?」
「逆にすると思うか?」
「デスヨネー」
俺の言葉を皮切りに襲って来ようとするプレイヤーたちよりも先に、アイテムボックスより取り出したものを地面にたたきつける。投げられたものは地面に接触すると煙を吹き出し、辺り一面を白く染め上げる。その瞬間に俺は駆け出す。
「逃げるんだよォ!」
「西の方向だ追いかけろ!」
煙幕によって無事に逃げられるかと思いきや、そううまくはいかないらしい。ばれたのは俺の声が悪いんじゃなくて、イベントの仕様が悪い。便利なんだけど今は面倒な仕様だな、ちくしょう!
そんなことを思いつつも足を止めることなく逃げ続ける。そして同時に後ろの敵をどうするかを考える。イベントの仕様上、撒くことは不可能に近い。かといって正面から戦っても数の暴力に負けるだけ。はて、どうしたものか…
走りながら頭を悩ませていると、進んだ先で二人のプレイヤーの光点が、近づいたり離れたりしているのがマップに見える。どうやらこの先で争っているらしい。
「あっ、そうだ」
その瞬間にこの状況の打開策を思い浮かんだ俺は、光点の争う方向へと進路を徐々に変更させる。それに伴い追いかけてくる人たちも進路が変更される。俺が考えたことは単純、前で争う二人に後ろの集団を擦り付けること。汚いといわれようが、生き残ればよかろうなのだ!
二つの光点との距離が近づき視界が開けた場所に出ると、刀を持った時代劇に出てくるような恰好をした男と剣と盾を持った騎士のような恰好の男が見える。なんか見覚えしかないんだが…
その二人は俺たちの接近に気づいていたようでこちらに向けて武器を構えている。
「やばくなーい?」
俺が独りごちると刀を持った男が力を込めて横なぎに刀を振るった。もちろん、刀が届く距離ではないので当たるわけではない、だからこそ考えられることは一つ。俺は記憶の中にある、とあるスキルの挙動を思い浮かべながらタイミングを合わせて何かを回避するようにスライディングをする。姿勢の低くなった俺の頭上を何かが通り抜けるような感覚がして程なく、俺を追いかけていた人たちの悲鳴が聞こえる。
スキル『飛刃』、文字通り斬撃を飛ばすスキルで、その斬撃は使用者以外には不可視の攻撃である。まっすぐにしか飛ばないため分かっていれば回避は余裕だが、初見で見破るのは難しいスキルだ。
そして俺はスライディングした状態から体勢を立て直すと、後ろの集団か距離を取るように走り続ける。理由は一つ、騎士の男が剣を頭上に構え魔法の呪文を行っているからだ。そして呪文を唱え終わった男が魔法名を叫びながら剣を振り下ろす。
「雷霆!」
その瞬間に後ろの集団を中心として円形に地面が明るくなる。そして集団から距離を取った俺もその範囲内に入っており…。範囲広すぎない!?
もう少しで範囲外に出られるといったところで轟音とともに多数の雷が落ちる。このままじゃ間に合わない、そう判断した俺はイチかバチかにかけて走った勢いのままに前方へと体を投げ出す。傍から見れば映画で見るような見事なハリウッドダイブだったと思う。その甲斐あってか俺の体は雷に打たれることなく範囲外へと逃げおおせることに成功する。しかし油断はできない。俺の前方には二人のプレイヤー、しかも予想が正しければトッププレイヤーの二人だ。隙を見せればやられることは間違いなしだ。
俺は着地を狩られないように地面を転がりすぐに立ち上がり二人のプレイヤーと向き合う。その顔は見れば前作から見知った二人のプレイヤー。
「やっぱりバットゥーさんとカリバーさんか…」
ここでようやく冒頭の場面へと戻る。前の二人を警戒しながら、雷の落ちたほうを確認すれば地面に生えていた草は焼け焦げ、俺を追いかけていたプレイヤーたちは一人足りとも見えなかった。
「その言い方…それに今の動き。久しぶりだねレイン」
カリバーが口を開き話しかけてくる。その言葉を聞いたバットゥー侍が納得したかのように声を上げる。
「なるほど、絶対回避だったか!飛刃と雷霆を躱したから何者かと思ったが…それなら納得だ」
会話の内容としては平和なものであったが、その実三人が互いの隙を伺って睨みあいを続けているような状況であった。
こうしてイベントを観戦していたほとんどのプレイヤーが、「第一回イベントにおいて一番面白かった戦い」に選んだ戦いが始まった。
ここからイベント終了に向けて戦闘パート開始!
次は早く上げたいなぁ(願望)




