第14話:トリニティ・プラネット構想と、月面都市『アーク・ルナ』
【前書き】
お読みいただきありがとうございます! 作者です。
そういえば、人類が1977年に放出した探査機「ボイジャー」が太陽圏を抜け出し、いよいよ「1光日(光が1日かけて進む距離)」の距離へ到達することになりましたね。
太陽圏の最終的な外縁とされている「オールトの雲」に到達するにはまだまだ先(300年くらい)ですが、人類の工作物が最も遠くに到達し、太陽系の家族写真を自撮りできた歴史的偉業と言えるでしょう。
時を同じくして1977年には、あの有名な「Wow!シグナル」という神秘的な信号も届いています。さらに、ボイジャーが太陽圏を抜け出そうとする頃、異星間からのお届け物のように「オウムアムア」や「ボリソフ」、「3I/ATLAS」といった天体が立て続けに地球圏を訪問してくれました。
こちらもたくさんの情報をいただけましたし、あちらの方々も色々と観察・測定して行かれましたね。
我々人類も、既に本格的に宇宙へ進出すべき時が来たようです。まずは太陽系内の把握と居住権の拡大! 月の開拓の先には、ハビタブルゾーンに地球を含む「3つの居住可能惑星」を配置する『トリニティ・プラネット構想』が控えています。
金星や火星、さらには水星の軌道・質量・大気を補正して住める星を増やし、木星や土星の衛星も吟味して観光地や進出拠点を築いていく……!
果てしない宇宙ロマンに満ちた新展開、第14話をお楽しみください!
### 1. 太陽圏の記憶と、高次元からの「挨拶」
成層圏に神聖な輝きを放ちながら静止する『超高度戦術空中母艦 アウロラ』。
そのメインブリッジのホログラムスクリーンには、地球の姿ではなく、太陽を中心に描かれた広大な太陽系全域の三次元マップが映し出されていた。
「四条殿……。いや、ワタル殿。これは……!」
ロベルト・ヴァイスマン大佐(40)が、息を呑んでマップの端を示した。
そこには、1977年に地球を飛び立ち、半世紀近くの歳月をかけて今なお漆黒の暗闇を進み続ける探査機——ボイジャー1号・2号の現在位置が、光る小さな点として表示されていた。
『ええ、大佐。ボイジャーは太陽圏を超え、ついに1光日という果てしない距離に到達しました。人類が作った造形物が、太陽系の「家族写真」を撮影し、未知の外宇宙へと一歩を踏み出した歴史的な証です』
四条邸・研究棟のオペレーションルームで、亘はコンソールを操作しながら優しく語りかけた。
『そして、1977年のWow!シグナルに始まり……近年立て続けに太陽系を訪問した恒星間天体「オウムアムア」「ボリソフ」「3I/ATLAS」。彼らは単なる奇岩や彗星ではありませんでした。外宇宙の知性たちが、太陽系と人類の進化度合を観察・測定するために送り込んだ「挨拶」だったんです』
「外宇宙からの……挨拶……!」
アリアーナ(18)が、胸の前で手を組み、神秘的な瞳で宇宙図を見つめる。
「ワタルさん……。じゃあ、あの方たちも、私たちが地球の争いを乗り越えて、宇宙へ進出してくるのを待っていたのですね」
「うん! あっちのお星さまの人たちも『地球のみんな、喧嘩をやめて早く遊ぼうよ!』って言ってたんだね!」
スカイブルーのユールスーツを纏ったユーリア(16)が、元気いっぱいに弾けた。
『その通りだよ、ユーリア。地球上での争いや、既得権益者たちの狭い不平等はすべて修正された。ならば……俺たち人類が次に行うべきは、狭い地球の中に閉じこもることではない。この太陽系全体を、誰もが豊かに暮らせる「新たな故郷」へと作り替えることだ!』
---
### 2. トリニティ・プラネット構想の提示
「マスター・ワタル。太陽系全域における空間情報スピンの同期演算、完了しました。これより『太陽系テラフォーミング&居住権拡大ロードマップ』を起動します」
実体化AIルナが可憐にお辞儀をし、太陽系のホログラムマップをダイナミックに拡大・展開させた。
「ワタル殿、これは……!? 太陽系の惑星軌道が……書き換わっている!?」
ロベルト大佐が驚愕の声を上げた。
ルナが指し示したのは、地球を挟むように配置された「3つの輝く青い惑星」のホログラムだった。
『はい、大佐。これこそが、DW-QCSとDWASカードによって達成される究極の惑星改造計画——【トリニティ・プラネット構想】です!』
亘の声が、力強くブリッジ全体に響き渡る。
『現在、太陽系のハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に存在し、豊かな生命を育んでいるのは地球一星のみです。ですが……DWASの次元波動と質量・スピン制御テクノロジーを使えば、金星、火星、さらには水星の公転軌道・自転速度・質量密度・大気組成を自在に補正・最適化することができます!』
「金星と……火星と水星の軌道や質量を補正するだと……!? 惑星そのものを動かし、地球と同じ環境にするというのか!?」
元軍人として凄まじい規模の作戦を見てきたロベルト大佐すら、そのあまりの規格外のスケールに絶句した。
『ええ。灼熱と濃硫酸の雲に覆われた金星の大気を浄化し、過酷な極寒と薄い大気の火星に磁場と海を与え、極近の公転軌道にある水星の軌道を移動・調整して質量補正を行う。……これによって、太陽系内に「地球と同等の環境を持つ3つの居住可能惑星」を誕生させます!』
「すごすぎるよ、ワタル先輩……! お星さまを3つも住めるようにしちゃうなんて、夢みたい!」
ユーリアが瞳を輝かせて大歓声をあげる。
『それだけではありません。木星の衛星ガニメデやエウロパ、土星の衛星タイタンやエンケラドスといった衛生群にもテラフォーミングを施し、人類が外宇宙へ進出するための「最先端前線基地」や、誰もが憧れる「巨大宇宙観光リゾート」として整備します!』
---
### 3. 第一段階:月面テラフォーミング都市『アーク・ルナ』の瞬間具現化
『まずはその第一歩として……人類の最も身近な隣人である「月」に、完全環境制御型の超巨大テラフォーミング都市を具現化します!』
四条邸・研究棟で、亘はデスクの上から眩いシルバーとエメラルドの輝きを放つDWASチタンカード——【Celestial Genesis & Arc-Luna Realization】を取り上げた。
カードを手元で一枚こするだけ。手ぶらで世界中、そして宇宙空間へアクセスし、巨大な存在を一瞬で顕現させるDWAS無双の真骨頂。
「ルナ! DWASチタンカード【Arc-Luna Realization】、高次元共振スロットへセット! 月面『静かの海』エリアへ向けて、量子物質錬成・ドームフィールド投射!」
『了解しました、マスター・ワタル。高次元スピン上書きプログラム、月面テラフォーミングシークエンスを開始します』
キーーーーーーン……!!
四条邸の研究棟、そして成層圏のアウロラから解き放たれた幾何学的な光の波動が、漆黒の宇宙空間を貫き、夜空に浮かぶ「月」の表面へと到達した。
——その瞬間、地球上の何十億もの人々が夜空を見上げ、言葉を失った。
静まり返っていた灰色の月面に、突如として眩いエメラルドグリーンの光の帯が走り、直径数百キロメートルにおよぶ超巨大な「透過型高次元エアドーム」が一瞬にして形成されたのだ。
ドームの内側では、DWASの分子書き換えと元素錬成によって、月面のレゴリス(砂)が瞬く間に豊かな黒土と緑の森林へと変わり、透明な大気が満たされ、清らかな青い海と湖が湧き出していく。
さらにその中央には、白銀の結晶装甲で構成された超高層都市群、住宅街、学校、公園、そして最新の医療・研究施設を備えた月面最大都市『アーク・ルナ』が、まるで魔法のように一瞬で具現化された。
「あ……見て! 月の上に……緑と青の街ができているわ……!」
アウロラの透過ウィンドウから月を見つめていたアリアーナが、涙を浮かべて呟いた。
「すごい……! お月様の上に、綺麗なお家と緑がいっぱい! ワタルさん、本当に月の上に街を作っちゃったのね……!」
通信回線越しに見ていた母ナターリア(38)も、感無量で胸を押さえた。
---
### 4. 全人類への月面招待と、新時代への旅立ち
「四条殿……! 月面のドーム内部の環境データを計測した! 気圧1気圧、酸素濃度21%、重力はDWAS重力制御により地球と完璧に同じ1Gに調整されている! 人間が服のまま、地球と同じように呼吸し、走り回れる完璧な環境だ!」
ロベルト大佐が声をごもらせて報告する。
『よし! ルナ、地球全土へ向けて「月面都市アーク・ルナ移住&観光オープン」のアナウンスを配信してくれ。希望する全人類に対し、アウロラの転送ネットワークとDWAS転送カードを使って、無償で月面への自由なアクセスを提供する!』
『了解しました、マスター・ワタル。全地球端末へご案内を配信します』
シュン……! シュン……!
地球上の各地から、DWAS転送フィールドによって送られた何万人、何十万人もの人々が、一瞬にして月面都市『アーク・ルナ』のドーム内へと足を踏み入れた。
「うわあぁぁぁっ! 宇宙服を着ていないのに、風が気持ちいい!」
「見ろよ! 空を見上げると、青い地球がでっかく浮かんでるぞ!」
「水も食べ物も全部タダで、こんなに綺麗な街に住めるなんて……! 夢みたいだ!」
地球上でかつて争い、奪い合っていた人々が、月面の豊かな緑と美しい海を前にして、子供のように瞳を輝かせて抱き合っていた。
「ワタル先輩っ! 私たちも行こう! パパとお姉ちゃんとお母さんと一緒に、お月様の街をお散歩したい!」
ユーリアが亘の画面に向かって、弾けるような笑顔で両手を広げた。
『ああ、行こうユーリア! カサやウクライン、南アフリカやカリブ海の人たちも、みんな笑顔で月面を楽しんでいる。……俺たちの旅は、ここからが本当の始まりだ』
四条邸・研究棟の亘は、懐に一枚のDWASカードを忍ばせると、転送光とともにアウロラのブリッジ、そして月面都市『アーク・ルナ』の澄み渡る空の下へと降り立った。
ボイジャーが放った1光日の孤独な足跡を超えて、人類は今、四条亘と仲間たちの手によって、太陽系全域を豊かな故郷とする【トリニティ・プラネット新時代】へと、力強い第一歩を踏み出したのだった!
【後書き】
第14話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
作者のつぶやきでお話しした「ボイジャーの1光日到達」や「Wow!シグナル」「オウムアムアやボリソフなどの恒星間天体」のロマンから始まり、太陽系内に3つの基盤居住惑星を作るスケール『トリニティ・プラネット構想』、そして第一段階となる月面テラフォーミング都市『アーク・ルナ』の具現化をお届けいたしました!
カード一枚で手ぶらで月面都市を一瞬で具現化し、全人類を招待する圧倒的爽快感と宇宙スケール、お楽しみいただけましたでしょうか。
次回第15話では、トリニティ・プラネット構想の本格始動として、灼熱の過酷な環境にある「金星」と「火星」の同時テラフォーミング&軌道補正作戦を描いてまいります!
もし作品を面白いと思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると非常に大きな執筆の励みになります! 次回第15話もどうぞお楽しみに!




