Episode 57「白銀のローブ」
セディルの後ろから、兵たちが次々と姿を現した。
泉を囲むように広がり、剣を抜く。
グラフがリトとセラの前へ出る。
「セディル殿下。こんな所まで何の用です?」
セディルは馬から降りた。
「セラフィーヌ。やはりここだったか」
セラは何も答えない。
セディルが泉を見る。
「何か掴んだな?」
「あなたには関係ないわ」
「そうか。なら、確かめさせてもらおう」
「捕らえろ」
兵士たちが一斉に動き出す。
グラフが一人の腕を掴み、そのまま地面へ投げ飛ばした。
オソノも迫ってきた兵士を蹴りつける。
「ったく、次から次へと!」
「セラ、こっち!」
リトがセラの手を掴み、二人は森へ走ろうとする。
だが、その先にも兵士がいた。
「くそっ……!」
あっという間に囲まれ、グラフとオソノも何人もの兵士に剣を向けられる。
「動くな!」
四人はそのまま取り押さえられた。
セディルがゆっくりと歩いてくると、兵士の一人へ手を出す。
「持ってこい」
兵士が鞄を運んできた。
セディルは鞄の中から白銀のローブを取り出し、広げる。
「あの時の……」
セラの表情が強張った。
「覚えてるだろう……今度はちゃんとできるんだろうな?」
セラはセディルを睨む。
「知らないわ」
「ここまで来て、何も知らないはずがない」
セディルがローブを突き出した。
「やれ」
「嫌よ。私はもう、あなたの言いなりにはならない」
セディルがリトを見る。
兵士がリトの腕を掴んだ。
「離せ!」
リトが振りほどこうとした瞬間、首元に剣を突きつけられる。
「リト!」
セラの顔色が変わった。
セディルが低く言う。
「もう一度聞く」
白銀のローブをセラの前へ突き出した。
「やれ」
セラは唇を噛み、泉を見る。
「……今はまだできない」
セディルが眉をひそめた。
「何?」
「泉に映る光が完全に消えて、水面が漆黒になるまで待たないといけないの」
セディルも泉を見る。
「それはいつだ」
「その時は、泉が教えてくれるわ」
セラは周囲の松明を見た。
「それと……あなたたちの松明も消して」
「何?」
「光が映っていたら分からないでしょ」
セディルはイラ立ちを隠そうともせず、兵士たちへ命じる。
「松明を消せ」
「はっ!」
兵士たちが一斉に松明の火を消す。
最後の炎が消えると、辺りは一気に闇へ沈み、泉の水面からも光が消えていく。
セディルは白銀のローブを握ったまま、暗く沈み始めた水面を確かめ、セラへ視線を戻す。
「いいだろう。待ってやる」
静まり返った泉を前に、長い夜が始まった。




