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Episode 54「森の記憶」
フィルノアの森を進んでいたリトたちは、小さな川のそばで馬を止め、少し休むことにした。
リトが川の水で顔を洗っている横で、セラは森の奥を見つめていた。
「……この辺り、前とは違うね」
リトが顔を上げる。
「ああ。遺跡に行った時とは道が違うな」
グラフが荷物を下ろしながら言う。
「今回は遺跡じゃない。泉へ直接向かってるからな」
「そっか」
セラは木々の間に続く道を見た。
「前に泉へ連れて行かれた時も、ずっと馬車の中だったから……どの道を通ったのか覚えてないんだ」
「俺はもう、どの道でも十分遠いけどな」
「リトは文句言いすぎ」
「セラまで言う?」
二人が笑う。
「ほら、そろそろ行くぞ」
グラフの声に、リトは立ち上がった。
「もう?」
「休みすぎると日が暮れる」
「はいはい……」
四人は再び馬を進めた。
──
しばらくして。
先を進んでいたグラフが、ふと馬を止める。
「どうしたんだい?」
オソノが聞く。
「……いや」
リトも後ろを見る。
「何かいる?」
森の奥には、何も見えない。
風に揺れる木々の音だけが聞こえていた。
グラフは後方を見つめたまま言う。
「少し急ごう」
「え?」
「日が暮れる前に、できるだけ進んでおきたい」
グラフは再び馬を進めた。
オソノは一度だけ後ろを振り返り、リトとセラもその後に続く。
静かな森の中を、四人は願いの泉へ向かって進んでいった。




