Episode 4「消えた少女と帝国の影」
──
夜。
いつものように帰宅したリトとバンリ。
しかし、部屋の扉を開けた瞬間、二人は息を呑んだ。
リトが真っ先に部屋を見回す。
「……いない!」
「え?!……マジか。けど、良かったんじゃないか?向こうから消えてくれたなら手間が省けた」
部屋の中には、誰の気配もなかった。
毛布はきれいに畳まれ、その上にセラの姿はない。
「まさか……出ていったのか……?」
バンリはそんなリトを制する。
「おい、やめとけ。関わるなって言っただろ。親方だって――」
「でも、何も言わずにいなくなるなんて……!話、ちゃんと聞きたかったのに」
リトは部屋を飛び出す。
「俺、探してくる!」
「ちょ、待てって!……もう、勝手にしろよ!」
──
二人は夜の貧民街を駆け回る。
市場通り、裏路地、馴染みの広場――だが、セラの姿はどこにもない。
そのとき――
「……金色の髪の娘を見かけた者はいないか?」
黒い軍服の数人が、通りの影から現れる。
胸元には、リズマール帝国の紋章が輝いていた。
リトは思わず息を呑む。
「……っ」
「マジか……。追っ手が来たんだ……!」
物陰に身をひそめながら、二人は兵士たちの会話に耳を澄ませる。
「王女の足取りはこの辺りで途絶えている。協力者がいる可能性もある」
「怪しいやつも含めて、見つけた者はまとめて事情を聞け」
──
緊張が走る中、リトの目が動く。
暗がりの奥。
古い倉庫の裏に、しゃがみ込んでいる少女がいた。
セラだった。
「……セラ!」
「……ごめんなさい。巻き込みたくなかったの……」
「バカ!一人でどうするつもりだったんだよ!」
バンリが周囲を見回す。
「ここじゃマズい。……行くぞ、親方のところ!」
──
工場裏の古い平屋。
タゴスの家。
重い扉をノックすると、煙草をくわえた親方が不機嫌そうに顔を出す。
「……今度は三人かよ」
リトが必死に訴える。
「お願い!匿ってほしい!帝国の兵が、すぐそこまで来てるんだ!」
しばらくの沈黙のあと、タゴスは煙を吐いて、扉を開ける。
「まったく……ろくでもねぇガキ共だ」
そして、扉は静かに閉じられた。




