Episode 48「タリアへ」
──数日後──
ナパラの街は、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
レオルの本隊が到着してから、戦況は大きく変わった。
街へ入り込んでいたセディル軍の兵は押し戻され、避難していた住民たちも少しずつ戻り始めている。
そんな中、レオルたちはナパラへ向かったはずのセディルの行方を追っていた。
一人の兵士がレオルのもとを訪れる。
部屋にはレオルの側近や数人の兵、その中にガルドの姿もあった。
「レオル殿下、内偵から報告が入りました」
「話せ」
「セディル殿下は別部隊を率いて、タリア方面へ向かっていたようです」
レオルの表情が変わる。
「タリアへ……?」
「はい」
レオルは立ち上がった。
「ナパラの守りに兵を残す。私たちは準備が整い次第、タリアへ向かう」
ガルドが頷く。
──
その後。
ガルドはタゴスのもとを訪れた。
「セディルは別部隊を率いて、進路を変えてタリアへ向かったらしい」
タゴスが顔を上げる。
「進路を変えてた?どうりでナパラにいないわけだ」
「ああ。レオル殿下も向かう」
タゴスの表情が険しくなる。
「……セディルのやつめ」
──
避難洞から戻ったアンナとミーナは、街の一角で身を寄せていた。
タゴスが二人のもとへ戻る。
「セディルがタリア方面へ向かったらしい」
「タリアへ?」
「ああ。リトたちがいる」
アンナの表情が曇る。
「……リトのこと、気になってるんでしょ?」
ミーナがタゴスの袖を掴む。
「父ちゃん、リトを助けてあげて」
「……お前らのことが心配なんだよ」
アンナが言った。
「ここには兵士さんたちもいる。私たちは大丈夫。でも……死なないでね」
ミーナも大きく頷く。
タゴスは二人を見つめ、ゆっくりと頷いた。
「……必ず戻る」
──
タゴスはバンリのもとへ向かった。
バンリは母親と一緒に片付けをしていた。
「バンリ」
「親方?」
「セディルがタリア方面へ向かったらしい」
「じゃあ、リトたちも危ないってことか……」
タゴスが頷く。
バンリは母親へ目を向けた。
「でも……」
母親はそんなバンリの顔を見つめた。
「リトが心配なんでしょ?」
バンリが顔を上げる。
母親は少しだけ笑った。
「私は大丈夫だよ。リトのところへ行ってあげな」
バンリは強く頷いた。
「……うん」
──
街の入口。
出発の準備を進めるガルドのもとへ、タゴスとバンリがやってくる。
「行くのか?」
「ああ」
バンリも隣で頷いた。
向かう先は、タリア。
まだ誰も、セディルがその先の願いの泉を目指していることを知らなかった。




