Episode 47「押し返す力」
裏山の避難洞。
バンリは息を切らしながら、避難洞へ駆け込んだ。
中には、多くの住民が身を寄せ合っている。
「母さん!」
その声に、一人の女性が振り返った。
「バンリ!」
母親が駆け寄ってくる。
「母さん……!」
バンリはそのまま母親を抱きしめた。
「無事で良かった……!」
母親も、震えた手でバンリの背中へ腕を回す。
「バンリ!」
聞き慣れた声に振り返ると、ミーナが駆け寄ってきた。
その後ろにはアンナの姿もある。
「ミーナ!アンナさん!無事で良かった……!」
「あんたもね」
アンナはバンリの姿を確かめると、少し不安そうに尋ねた。
「ところで、うちの人とは会えた?」
「ああ。今、ガルドさんっていう昔の仲間と合流してる。だから大丈夫だと思う」
「そう……それなら良かった」
アンナは安堵したように息を吐いた。
──
ナパラの街。
ガルドたちの前方に、セディル配下の兵が迫っていた。
ガルドの周囲には、レオルに従うリズマール兵たちが構えている。
その中に、剣を手にしたタゴスの姿もあった。
長い間、握っていなかった剣。
だが、その構えに迷いはない。
「来るぞ!」
ガルドの声が響く。
セディル軍とガルドたちが激突した。
タゴスは向かってきた兵の攻撃を受け流し、そのまま押し返す。
「まだ身体は覚えてるみてぇだな……!」
ガルドも剣を振るいながら、周囲へ目を向けた。
やがて、あることに気づく。
「……おかしい」
本来なら、これほど簡単に勢いが鈍る軍ではない。
だが、目の前の部隊にそれほどの勢いはなかった。
装備も十分とは言えず、疲労の色も濃い。
一人の兵士がガルドへ駆け寄る。
「セディル軍の後続が遅れています!」
「理由は?」
「補給が届いていないようです!北も西も、輸送が滞っているとのことです!」
ガルドの目が細くなる。
「……誰かが動いてるな」
ガルドが剣を掲げた。
「押し返せ!」
兵士たちの声が響く。
それまで街へ入り込んでいたセディル軍の兵が、少しずつ後退し始める。
タゴスも前へ出た。
「ここから先は好きにさせねぇぞ!」
戦況は、確実に変わり始めていた。
その時――。
遠くから、再び馬の蹄の音が響いた。
ガルドが振り返る。
街道の向こうから、新たな軍勢が迫ってくる。
その先頭には、一人の男がいた。
ガルドの表情が変わる。
「……レオル殿下」
第一皇子レオルが、ナパラへ到着した。




