Episode 40「帰還」
タリアへ入ると、セラの表情が曇った。
街にはリズマール兵の姿があった。
以前は人々の声で賑わっていた通りも、今はどこか静まり返っている。
セラは歩きながら、何度も周囲を見回していた。
やがて、遠くに王宮が見えてくる。
グラフが目を細めた。
「正面から入るのは危険だな」
セラが頷く。
「裏から入れる場所があります」
「だったら、さっさと行くよ。見つかったら面倒だからね」
──
セラの案内で王宮の裏手へ回り、使われていない古い通路から中へ入った。
周囲を警戒しながら、静かな廊下を進んでいく。
幼い頃から何度も歩いた場所。
それなのに今は、自分の家ではないように感じた。
角を曲がった、その時だった。
向こうから、小さな人影がこちらへ歩いてくる。
セラには、見間違えるはずのない姿だった。
「……!」
少年もセラに気づき、目を見開いた。
「……姉様?」
「どうして……こんなところに?」
セラは駆け寄った。
「よかった……!」
弟を強く抱きしめる。
だが、弟は何も言わなかった。
やがて、小さな声で呟く。
「姉様がいなくなってから……タリアはずっとこんな状態です」
セラの表情が変わる。
「リズマールの兵が来て、王宮も街も……みんな怖がっています」
「……うん」
「父様も、ずっと姉様のことを心配していました」
セラは俯いた。
弟はそんな姉を見つめる。
「姉様」
「……なに?」
「どうしてタリアを捨てたのですか?」
セラは息を呑んだ。
リトたちも、少し離れた場所で黙って見ている。
「……ごめんね」
セラはもう一度、弟を抱きしめる。
「でも、もう逃げない」
弟がゆっくりと顔を上げる。
セラは涙を浮かべながら、それでもまっすぐ弟を見つめた。
「今度は、ちゃんと向き合うから」




