Episode 39「焼けた村」
遺跡を離れてから、二日。
願いの泉で馬と荷馬車を回収した四人は、タリアへ向かっていた。
フィルノアの森を抜け、街道を進んでいると、遠くに人の暮らす村が見えてきた。
その時だった。
リトが足を止める。
「……煙?」
村の方角から、黒い煙が細く昇っている。
グラフが目を細めた。
「村のある方角だ」
四人は顔を見合わせ、村へ急いだ。
──
村へ近づくにつれ、焦げた匂いが強くなる。
焼け落ちた家。
倒れた柵。
道には壊れた荷車や荷物が散乱していた。
セラの足が止まる。
「……そんな」
何人もの村人が、わずかな荷物だけを抱えて歩いている。
泣いている子ども。
怪我をした男を支える家族。
家を振り返りながら、離れていく老人。
リトは言葉を失った。
武器を持つ者。
崩れた家。
逃げる人々。
傷ついた者たち。
セラが呟く。
「……フィルノアの織物と同じだ……」
オソノも焼けた村を見つめる。
「……ひどいもんだね」
その時、近くを通りかかった老人が足を止めた。
グラフが声をかける。
「何があったんです?」
老人は疲れ切った顔で答えた。
「リズマールの兵だよ」
セラの表情が変わる。
「リズマール……」
「タリアを押さえただけじゃ足りないのかね……周りの村まで荒らしていきやがった」
「あんたたちも、早く逃げな」
それだけ言うと、老人はゆっくり歩き去った。
セラは動けなかった。
自分が離れている間に、こんなことが起きていた。
「お父様……」
そして、弟の顔が浮かぶ。
城に残された人々。
タリアの街。
何も分からないまま、ここまで来てしまった。
リトが隣に立つ。
「セラ」
セラは唇を噛んだ。
リトはタリアの方角へ目を向ける。
「……急ごう」
セラは小さく頷いた。
「うん」
四人は再びタリアへ向かった。
背後では、黒い煙がまだ空へ昇り続けていた。




