Episode 38「十日の猶予」
翌朝。
四人は地下工房を、もう一度ゆっくり見回していた。
昨日までに調べた織物。
古い織機。
銀糸に残された言葉。
まだ分からないことは残っている。
だが、今ここで答えが出るものばかりではなかった。
オソノが周囲を見回す。
「これ以上は、同じところをぐるぐる回りそうだね」
グラフも頷いた。
「そろそろ、ここを離れた方がよさそうだな」
セラは巨大な織物を見上げる。
「まだ全部は分からないけど……伝承の意味には、前よりずっと近づいた気がする」
リトが笑う。
「うん」
そして、首から下げた巾着袋へそっと触れた。
母の言葉も、ここで見つけることができた。
四人は荷物をまとめ、長い石段を上がった。
──
遺跡の外へ出る頃には、すでに日が傾き始めていた。
森の向こうには、夕暮れの空が広がっている。
グラフが空を見上げる。
「もし、あの言葉が新月を示しているなら……次の新月まであと十日ほどだ」
「十日……」
セラが小さく呟いた。
しばらく考えたあと、三人へ向き直る。
「それなら……私、いったんタリアへ戻りたい」
リトが目を見開く。
「タリアに?」
「うん。あの時は何も考えられなくて、飛び出すように出てきちゃったから……」
セラは少し俯く。
「お父様も、弟も、みんながどうしてるのか分からないままなのが気になってる」
グラフが頷く。
「新月まで十日ある。戻るなら今のうちだな」
オソノも荷物を背負い直した。
「だったら、行こうじゃないか」
セラは小さく息を吐く。
「うん。ありがとう」
リトも頷いた。
「行こう」
四人は遺跡を振り返る。
長い間、人知れず眠っていたフィルノアの記憶。
その場所を後にし、森の中を歩き出した。




