Episode 34「光と闇」
「ノクティアは……闇に近い意味みたいだね」
オソノが見本布と別の織物を見比べながら言った。
セラも隣の文字を確かめる。
「ルナは、やっぱり月……」
グラフが銀糸へ視線を戻した。
「残るのは、セレスか」
四人は手分けして、似た文字が使われている織物を探した。
しばらくして、リトが一枚の布を持ち上げる。
「これ、同じじゃないか?」
そこには、二つの円が重なるような紋様が織り込まれていた。
オソノが覗き込む。
「……重なる、か」
グラフが頷く。
「二つのものが重なる、そんな意味に近そうだな」
セラがゆっくりと呟いた。
「闇……月……重なる……」
その言葉に、全員が黙る。
セラの脳裏に、祖母の声が蘇った。
――光と闇が重なりし時。
「もしかして……」
セラが顔を上げる。
「新月……?」
リトが振り返る。
「新月?」
「ああ。月がほとんど見えなくなる夜だ」
グラフが答える。
セラは銀糸の文字をもう一度追う。
「光と闇が重なりし時……」
グラフが頷いた。
「もし新月を示しているなら……前に泉で何も起きなかった理由の一つにはなるな」
オソノが考え込む。
「つまり、あの時は時が違ってたってことかい」
「可能性はある」
セラは巨大な織物へ目を戻した。
白銀の衣。
黄金色に輝く水面。
暗い空を舞う、無数の小さな光。
リトが眉をひそめる。
「でも、新月が分かっても、まだ全部じゃないよな」
「ああ」
グラフが黄金色の水面を見る。
「なぜ泉が黄金色に輝くのか」
オソノも小さな光へ目を向ける。
「それに、この光もね」
それが何を意味するのかは、まだ読み解けていない。
新月。
黄金色の水面。
無数の光。
伝承の形は少しずつ見え始めていた。
けれど、まだ全ては繋がっていなかった。




