Episode 33「受け継がれた言葉」
四人は、さらに奥の織物を調べていた。
見本布と照らし合わせるたびに、少しずつ読める言葉が増えていく。
完全に意味が分かるわけではない。
それでも、同じ言葉が何度も繰り返されていることには気づき始めていた。
「またある」
セラが銀糸を指差す。
グラフが隣の織物と見比べる。
「こっちにもだ」
リトも別の布を広げる。
「これも同じじゃないか?」
オソノが頷く。
「ずいぶん何度も織り込まれてるね」
セラが小さく読み上げる。
「ルミナ・フェリナ・アルネスタ……」
“願い”。
“争いのない”。
そこまでは、少しずつ読み取れるようになっていた。
グラフが周囲の織物を見回す。
「これだけ何度も残されているなら、ただの一文じゃないな」
オソノも、繰り返された銀糸の文字を見つめる。
「フィルノアの織師たちにとって、よほど大事な言葉だったんだろうね」
グラフが工房の奥に目をやる。
「そういえば……」
巨大な伝承の織物へ近づき、下部に織り込まれた銀糸を指差す。
「ここにも文字がある」
四人が集まる。
セラが見本布と照らし合わせながら、ゆっくりと文字を追う。
「ノクティア……ルナ……セレス……」
セラの指が止まる。
「これ……今まで何度も出てきた言葉とは違う」
グラフが隣から銀糸を覗き込む。
「見本布に同じ文字は?」
セラは何枚かの布を確かめる。
「全部はない。でも、この文字……月のところにあったものと似てる」
リトが巨大な織物を見上げた。
「じゃあ、月に関係する言葉なのか?」
オソノが銀糸を見つめる。
「可能性はあるね。だけど、まだ決めつけるのは早いよ」
セラはもう一度、銀糸の文字を目で追った。
グラフもその文字を見つめる。
「この言葉を読み解けば、伝承の意味に近づけるかもしれない」
セラは頷いた。
「ノクティア・ルナ・セレス……」
新たに見つかったその言葉が、伝承を読み解く新たな糸口になるのかもしれない。




