Episode 30「再会」
バンリとタゴスは、リズマール軍の詰所を訪れていた。
受付の兵士に名前を告げると、しばらくして奥から一人の男が現れた。
男はタゴスの顔を見るなり、足を止める。
「……タゴス?」
タゴスがニッと笑った。
「久しぶりだな、ガルド」
「お前……生きてたのか」
「勝手に殺すな」
ガルドは呆れたように笑うと、タゴスの肩を叩いた。
「何年ぶりだ」
「さあな。数えるのも面倒なくらいだ」
「相変わらずだな、お前は」
ガルドはバンリを見る。
「そっちは?」
「バンリだ。俺のところで働いてる」
バンリが軽く頭を下げた。
──
バンリとタゴスはガルドに案内され、詰所の奥にある小さな部屋へ入った。
タゴスが椅子に腰を下ろす。
「街を見た。ずいぶん酷いことになってるな」
ガルドの表情が曇る。
「セディル殿下が軍を動かし始めてから、一気に変わった。タリアだけじゃない。周辺国も警戒している」
「ナパラにも降伏を求める書状を送ったって話は本当なのか?」
「ああ」
ガルドは小さく息を吐いた。
「しかも、ナパラへは本格的に軍を動かすつもりらしい」
バンリが顔を上げる。
「ナパラへ?」
「兵の移動が始まっている」
タゴスの表情が険しくなる。
「やっぱりか……」
ガルドは二人を見た。
「それで、お前たちは何をしにここまで来た?」
タゴスはガルドをまっすぐ見る。
「ナパラを戦場にさせたくねぇ」
「お前なら、何か知ってると思ってな」
ガルドはしばらく黙っていた。
「レオル殿下も、このままではいけないと考えている」
バンリが聞き返す。
「第一皇子?」
「そうだ」
ガルドが頷く。
「セディル殿下を止める方法を探している。だが、皇帝陛下が動かない以上、簡単には手を出せない」
その時、扉が叩かれた。
「ガルド様」
一人の兵士が入ってくる。
「報告があります」
ガルドが頷く。
「話せ」
兵士が声を落とした。
「ナパラ方面へ向かう部隊が、まもなく出発するとのことです」
バンリの表情が変わる。
「もう……?」
「はい。出発は近いかと」
タゴスが拳を握る。
「急いだ方がよさそうだな」
ガルドはしばらく考え込んだ。
そして兵士を見る。
「レオル殿下にお伝えしてくれ。至急、お会いしたいと」
「分かりました」
兵士が部屋を出ていく。
タゴスがガルドを見る。
「どうするつもりだ?」
ガルドの目が鋭くなる。
「レオル殿下に進言する。セディル殿下の動きを止めるなら、今しかない」
バンリは黙って二人を見つめていた。
ナパラへ向けて、戦争の足音は確実に近づいていた。




