Episode 28「それぞれの思惑」
──リズマール王宮──
セディルは窓の外を眺めながら尋ねた。
「ナパラへ降伏を求める書状は送ったか?」
「はい。ただ、まだ返答はないようです」
セディルは苛立ったように机を叩いた。
「くそっ!ナパラごときが、この俺に抗うつもりか!」
──
夜。
バンリとタゴスは、食堂の隅で遅い夕食を取っていた。
バンリがパンをちぎりながら尋ねる。
「明日はどうするんだ?」
「軍の詰所へ行く」
「前に言ってた昔の仲間?」
「ああ。ガルドって男だ。俺が軍にいた頃の戦友だ」
「まずは詰所を当たるのか」
「ああ。今も軍にいるかは分からねぇが、他に手掛かりがねぇ」
タゴスはスープを口に運んだ。
「ガルドは第一皇子、レオル殿下側の人間だ」
「レオル?」
「セディルの兄貴だ。身体は丈夫じゃねぇが、弟とはまるで違う。争いを好まねぇ、心の優しい男だ」
バンリが少し考える。
「その人なら、セディルを止められる?」
「分からん。だが、今のリズマールで頼れるとしたら、そこしかねぇ」
タゴスはパンをちぎりながら、ふと思い出したように言った。
「そういや、リトたちから何か連絡あったか?」
「いや、何も」
「そうか」
バンリはパンをちぎりながら、少し考える。
「あいつら、白銀のローブのこと分かったかな?」
「さあな」
バンリは手元のパンへ目を落とす。
「タリアの伝承って、結局ホントなのかな?」
タゴスはスープを口に運んだ。
「あのお嬢ちゃん、まだ願いを諦めてねぇんだろ?」
「たぶん。だからリトも一緒に行ったんだと思う」
バンリは少しだけ視線を落とした。
「リトたち、今頃何してるんだろ?」
二人は気づいていなかった。
少し離れた席で――
その会話に、聞き耳を立てている者がいた。




