Episode 26「古い友」
翌朝。
まだ空が白み始める前、バンリは荷物を背負ってタゴスの家を訪れた。
家の前には、すでに旅支度を終えたタゴスが立っていた。
その傍らには、二頭の馬が繋がれている。
「遅ぇぞ」
「まだ明け方だろ」
「母ちゃんには話したのか?」
「ああ」
タゴスが頷く。
「バンリ、お前、馬乗れるか?」
「少しなら乗ったことあるけど」
「なら平気だな!」
「どこが平気なんだよ」
タゴスはさっさと馬に跨がる。
「行くぞ!」
「ほんと勝手だな……」
二人は馬に跨がり、まだ眠るナパラの町を後にした。
──
朝靄の残る街道を、二頭の馬が駆けていく。
ナパラの町並みはすぐに遠ざかり、やがて街道の両脇には草原が広がり始めた。
しばらく走ったところで、先を行くタゴスが突然進路を変えた。
街道を外れ、そのまま林の中へ入っていく。
「おい!こっちで大丈夫なのか!?」
「大丈夫だ!こっちを行く!」
バンリも慌てて馬の向きを変え、その後を追う。
林へ入ると、道らしい道はほとんどない。
「……道なんかないけど」
「こっちなら五日で着く」
「出る時にそれ教えろよ!」
木々の間を縫うように、タゴスは馬を進めていく。
バンリは辺りを見回した。
「ここを道って言うのかよ……」
「文句言ってる暇があったら付いてこい!」
バンリはため息をつき、その後を追った。
──
林を抜け、ようやく街道が見えてきた頃。
バンリが前を走るタゴスに声をかけた。
「なぁ」
「なんだ」
「あのさ、昔の仲間って誰なんだ?」
「リズマールにいた頃の戦友だ」
「今も軍人?」
「今も軍にいるかは分からねぇ。もう何年も会ってねぇからな」
「……そんな奴を頼って大丈夫なのかよ」
タゴスはしばらく黙っていた。
「他に手がねぇんだ」
そう言って、再び前を向く。
「生きてりゃ、力になってくれる」
バンリはそれ以上何も聞かなかった。
二頭の馬は、リズマールへ続く街道を駆けていった。




