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Episode 22「母の鍵」

フィルノアの森の奥深く。


一行は、草木に覆われた石造りの建物の前に立っていた。


苔むした壁。


半ば土に埋もれた石柱。


人が足を踏み入れた形跡は、ほとんどない。


リトは辺りを見回す。


「……ここが、織師たちのいた場所なのかな」


オソノは建物を見つめる。


「まだ分からないよ。中を調べてみよう」


グラフも周囲を見渡す。


「これだけのものが残っていたとはな……」


セラは黙ったまま、建物の奥へ視線を向けていた。


太陽と月。


白銀のローブ。


願いの泉。


そして、失われたフィルノアの織師たち。


全てが、この場所へ繋がっているように思えた。


一行は足元に注意しながら、建物の中へ進んでいく。


崩れかけた石壁の間には草木が入り込み、長い年月が流れたことを物語っていた。


しばらく進んだ、その時だった。


先頭を歩いていたセラが足を止める。


「待って」


全員が立ち止まった。


崩れた壁の向こうに、苔に覆われた一本の石柱が立っている。


高さは人の背丈ほど。


長い年月を経ているはずなのに、不思議と形を保っていた。


オソノはゆっくり膝をつき、石柱の表面を覆う苔を慎重に払い落とす。


緑色の苔が剥がれ、古い紋様が少しずつ姿を現した。


オソノの手が止まる。


「……この紋様」


リトも覗き込む。


「知ってるの?」


オソノは少し考え、リトを見る。


「あの鍵、出してみな」


「鍵?」


リトは巾着袋を開き、母が残した小さな鍵を取り出した。


オソノは鍵の持ち手と、石柱に刻まれた紋様を見比べる。


「……やっぱり」


リトも二つを見比べる。


「同じだ……」


オソノは小さく頷く。


「どうりで似てると思ったよ。これはフィルノアの織師たちが使っていた印で間違いなさそうだね」


セラとグラフも二つの紋様を見比べる。


母が残した鍵。


フィルノアの織師たちの印。


そして、誰にも知られず森の奥に残されていた建物。


偶然では説明できない。


リトは鍵を手にしたまま、改めて石柱を見つめる。


母はなぜ、この鍵を持っていたのか。


その答えが、この場所にあるのかもしれない。


「……これ」


リトが石柱の紋様の下に、細い切れ目があることに気づいた。


指先で苔を払い落とす。


その下から、小さな穴が姿を現した。


グラフが息を呑む。


「まさか……」


リトは手の中の鍵と、その穴を見比べる。


大きさは、ほとんど同じだった。


そこには――


鍵穴があった。

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