12話 三国会議の警備(その4)
アテナ傭兵隊本部
本部に戻ってそうそうにパリスはクルエラに呼び出された。
大方検討とはついていたので、パリスは恭しくクルエラの部屋に入った。
「失礼します」
クルエラは椅子に座り、愉快そうにパリスの方を見ていた。
「副官としてあるまじき失態だな」
パリスは背中を曲げて謝罪した。
「すみません」
「貴様には副官という自覚が足りないのではないか」
パリスは我慢できず自分の言い分を述べた。
「あ、あのときは疲れていたんですよ!仮眠前で意識が朦朧としていたんです」
「言い訳などするな。しかし、そのおかげで面白いものを見させてもらった」
パリスは眉をピクピクと動かして嫌な顔をした。
「カインさんに散々いびられて面倒でしたよ。……でも、結果として何もなかったなら良かったです」
「私がエルメスの王女と駆け落ちなどするか。私は色情狂ではないぞ」
駆け落ちでなくとも何度も他人の彼女や愛人に手を出したことがあるのだろうとパリスは心の中で愚痴った。
「それでプレゼントは何を買ったのですか」
「何だと思う」
「そうですね。……お酒とかですか?」
クルエラは分かっていないと言いたげな口調をした。
「正解は香水だ。それも一度嗅げば夢心地のいい香りを彼女に勧めた」
「……そうでしたか」
クルエラは女の扱いに長けているので、なぜかそれを知っているエルメスの王女はクルエラを選んだのだろう。
王女と傭兵の長。本当に何もなかったのならいいがと、パリスには若干の疑念が残っていた。
☆ ☆
後日 グランフェルト邸
リビングで双子がくつろいでいると、大きな荷物が届いた。バルドルが受け取り、宛名を見ると「パリス・ロウズ」と書かれていた。
「ぱ、パリス!?」
「この前のお詫びでしょう。どんなものが入っているか楽しみですね」
カインが箱の中を開けると、綺麗な箱とクッキーが入った瓶があった。カインは満足そうな笑みを浮かべて、箱を取り出した。
「驚きました。この茶葉はブランド品でなかなか手に入らないものですよ」
「それとクッキーか」
バルドルも瓶の蓋を開け、クッキーを一つ食べた。想像以上に濃厚な味付けと甘みでまた一つ食べたいと思えるような味であった。
「美味しいな」
「おや、手紙もありますね」
私の不始末であなた方に多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。私のほんの気持ちですが、お受け取りください。
と、その手紙には書かれていた。
「パリスに申し訳ないことしたな……」
誰だってミスはあるのだからそこまでしなくてもいいとは思うが、パリスの真面目な性格がそれを良しとしなかったのだなとバルドルは思った。
「いいんですよ。これくらいしていただけないと、こちらも割に合いませんよ」
それにお詫びをしないとカインがいつまでもネチネチ言われると思っての配慮だろう。
兄の性格も理解し、それ相当な品を贈ってくれたことにバルドルは称賛したくなった。
「せっかく頂いたものですから召し上がりましょうか」
「そうだな……」
パリスの思惑通り、カインの機嫌は良くなった。
カインも面倒な性格ではあるが、物欲と私欲には忠実なため、意外にも心が簡単に揺れ動く単純さがあるのだ。
パリスは思慮深い策士で、副官に向いているなとバルドルは思った。




