曰く付き物件
翌朝。ハインとレイスは、オルセア商会へ向かった。オルセア町の通りは、朝から騒がしい。荷馬車が行き交い、商人たちが声を張り、天祈塔の周囲では今日も祈りを捧げる人々がいた。その中を、ハインはいつもより少し背筋を伸ばして歩いていた。隣を歩くレイスが、横目で見る。
「緊張しているな」
「しています」
「隠さないのか」
「隠す相手を間違えるほど、余裕はありませんので」
「そうか」
レイスは前を見る。
「昨日の取引は成功した。少なくとも、話は聞くだろう」
「はい。だからこそ、今日が大事です」
「本部の話か」
「ええ」
ハインは小さく頷く。
「ここで足場を作れるかどうかで、ハイン商会の先が変わります」
「陽剣旅団の先もな」
レイスがそう言うと、ハインは少しだけ目を細めた。
「はい」
オルセア商会の建物に入ると、昨日と同じ受付の女が二人を迎えた。
「ハイン商会様ですね。代表がお待ちです」
「ありがとうございます」
二人は奥へ案内された。応接室の扉が開く。中には、すでにオラリクがいた。白髪を後ろで束ね、昨日と同じように隙のない服装で椅子に腰かけている。机の上には書類が整えられ、茶の用意もされていた。オラリクは立ち上がると、穏やかに頭を下げた。
「お待ちしておりました、ハインさん。レイスさんも、ようこそ」
「お時間をいただき、ありがとうございます」
ハインが礼をする。レイスも短く会釈した。
「失礼します」
「どうぞ、おかけください」
二人が席に着くと、オラリクは静かに茶を勧めた。
「昨日は良い取引をありがとうございました。あの品は、すでに内部でも話題になっております」
「こちらこそ、正当に評価していただき感謝しています」
「正当に評価すべき品でしたからな」
オラリクは微笑む。
「それで、本日はご相談があるとのことでしたね」
「はい」
ハインは姿勢を正した。
「私は、このオルセア町にハイン商会の本部を作りたいと考えています」
オラリクの目が、わずかに細くなった。驚きというより、興味を持った目だった。
「カリオス村にすでにお持ちだと聞いておりますが?」
「はい。カリオスの商館は支店として残します。ですが、本部機能はオルセア町へ移したいのです」
「理由を伺っても?」
「人、荷、情報。そのすべてがここに集まるからです」
ハインは迷わず答えた。
「私は、ただ品を売るだけの商会を作りたいわけではありません。各地の商人と護衛を繋ぎ、危険な道を越えて荷を動かす。そのための商会にしたいのです」
オラリクは茶に手を伸ばさず、ハインを見ていた。
「陽剣旅団への依頼も、ここで扱うおつもりですかな」
「はい。ここを主な窓口にしたいと考えています」
「とすると、陽剣旅団は、オルセア町を拠点にするのですか」
視線が、レイスへ向いた。レイスは短く答える。
「常にいるわけではありませんが、そのつもりです」
「国中を回る護衛団と聞いています」
「ええ。依頼があれば動く。赤鎖や夜骸が出る危険な道もある。だから、一か所に留まり続けることはできません」
「それでも、戻る場所はここに置くと」
「そうなります」
オラリクは頷いた。
「なるほど」
ハインが続ける。
「加えて、私が扱いたいのは陽剣旅団への依頼だけではありません。通常の護衛団の紹介や手配も扱います。危険度、荷の量、移動距離に応じて、依頼に合う護衛を繋ぐ形です」
オラリクの表情が、はっきり変わった。
「護衛の仲介を商会の商品にするわけですな」
「はい」
「面白い」
オラリクは、そこで初めて茶を一口飲んだ。
「それなら、小さな店舗では足りませんな。荷受けの部屋、商談室、護衛との打ち合わせ場所、保管庫、宿泊できる部屋も必要になる」
「可能なら、そうした場所を探したいと考えています」
「少々お待ちを」
オラリクは棚から書類の束を取り出した。数枚をめくる。さらに別の束を取り出し、目を通す。ハインは黙って待った。レイスも動かない。やがて、オラリクの手が一枚の書類で止まった。
「一つ、あります」
「本当ですか」
「東門の近くです。大通りからは少し外れますが、荷馬車の出入りはしやすい。敷地も広く、倉庫もついている。元は大きな商家が使っていた建物です」
ハインの目が明るくなる。
「ぜひ、詳しく伺いたいです」
「この建物は、現在オルセア商会が所有しています。条件次第では、安くお貸ししてもよい」
「条件、ですか」
「はい」
オラリクは書類を机に置いた。
「一つ。オルセア商会からの護衛依頼について、優先して検討していただきたい」
レイスの目がわずかに鋭くなる。
「優先」
「もちろん、無理を通せとは言いません。陽剣旅団が遠方にいる場合、別件で動けない場合、危険度が合わない場合もあるでしょう。ですが、他の商会と同じ順番待ちではなく、まず相談に乗っていただきたい」
ハインはレイスを見る。レイスは少し考え、口を開いた。
「依頼を受けるかは、内容次第です」
「承知しています」
「ですが、相談を優先することはできます。危険度、報酬、時期、荷の内容。それを見て判断しましょう」
「それで十分です」
オラリクは頷いた。
「もう一つ。ハイン商会が希少な品を仕入れた際は、まずオルセア商会へ持ち込んでいただきたい」
「独占ではなく、第一相談先ということでしょうか」
「そう受け取っていただいて構いません」
ハインは少しだけ目を伏せた。頭の中で、条件を計算している顔だった。
「家賃は、どの程度になりますか」
「本来なら、月に百万セリオはいただきます」
ハインの指が、わずかに止まった。
「月に、百万」
「ただし、今の条件を呑んでいただけるなら、五十万セリオでよしとしましょう」
ハインは、今度こそはっきり驚いた。
「半額ですか」
「はい」
「なぜ、そこまで」
オラリクは茶を手に取り、一口飲んだ。そして、ゆっくり息を吐いた。
「ハイン商会の名は、以前から耳に入っておりました」
「私の商会を、ですか」
「情報と警護を扱おうとしている若い商人がいる、と。なかなか面白いことを考えるものだと思っていました」
ハインは黙って聞いている。
「それに、昨日の品です。あの量のフィランツ村の工芸品を、無事にここまで運び込んだ。これは口だけではできません」
「……ありがとうございます」
「それから、もう一つ」
オラリクの目が、少しだけ柔らかくなった。
「一昨日、あなた方が助けたロウナ商会。あれは、私が設立を手伝った商会です」
ハインが顔を上げた。
「ロウナ商会を」
「はい。まだ若く実力も足りない商会ですが、真面目に商いをしています。私も目をかけておりました。彼らから、陽剣旅団とハイン商会に助けられたと連絡が入っています」
レイスは小さく息を吐いた。
「早いな」
「商人は情報の早さが命ですからな」
オラリクは笑った。
「そして昨日、あなたと話した。品を見る目、言葉の選び方、陽剣旅団を売り込む時の誠実さ。私は、あなたの人間性を気に入りました」
ハインは少しだけ困ったように目を伏せる。
「過分なお言葉です」
「老骨なりに、優秀な若い商人を応援したいと思いましてな」
ハインは深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
オラリクは微笑む。
「ただし」
その一言で、空気が少し変わった。
「それだけが理由ではありません」
ハインが顔を上げる。
「と、言いますと」
「その物件は、曰く付き物件なのです」
「曰く付き物件」
レイスが短く繰り返す。
「はい」
「老朽化ですか」
「違います」
「権利関係が複雑とか」
「違います」
「では」
オラリクは、少しだけ声を落とした。
「……幽霊が出ます」
沈黙。ハインは瞬きをした。レイスは眉を寄せた。
「……は?」
「幽霊です」
オラリクは真面目な顔だった。
「夜な夜な、女の子の啜り泣く声が聞こえるのです。使用人も、借り手も、それを聞いて恐怖を感じ、長くは続かなかった。おかげで、なかなか住み手が見つかりません」
ハインは、しばらく言葉を失った。
「幽霊……」
「はい」
「その、夜骸ではなく?」
「違うようです。天祈塔のある町中ですからな。夜骸が出るなら、もっと大きな騒ぎになります」
レイスが顔をしかめる。
「声だけですか」
「声だけです」
「……」
「どうでしょう、レイスさん」
オラリクが穏やかに言う。
「陽剣旅団は、こうした調査も受けますかな」
レイスは露骨に嫌そうな顔をした。
「専門外です」
「そうでしょうな」
オラリクは笑う。ハインは、ゆっくりレイスを見た。
「レイスさん」
「嫌だ」
「まだ何も言っていません」
「顔で分かる」
「依頼として、調査をお願いできますか」
「嫌だ」
即答だった。ハインは困ったように笑う。
「ですが、もし本当に害がないものなら、破格の条件で本部を構えられます。もし何か危険があるなら、先に知っておかなければなりません」
「それは分かる」
「では」
「分かるが、嫌だ」
レイスは腕を組んだ。
「幽霊の調査など、やったことがない」
「私もありません」
「ならなぜ受ける」
「商会本部のためです」
レイスはしばらく黙った。そして、深く息を吐いた。
「……分かった」
「ありがとうございます」
「ただし、全員で行く。俺一人では絶対に行かない」
「もちろんです」
オラリクは楽しそうに目を細めた。
「では、今夜にでも確認されますかな」
「今夜ですか」
ハインが聞く。
「夜に声がするそうですから」
レイスの表情がさらに渋くなる。
「最悪だな」
◇
その話を宿へ持ち帰ると、反応は分かれた。セレスは嫌がった。
「幽霊?」
「ああ」
レイスが短く答える。
「嫌」
「俺も嫌だ」
「レイスも嫌なんだ」
「嫌だ」
セレスは少しだけ安心したような、余計に怖くなったような顔をした。一方で、他の三人は妙に楽しそうだった。アルドは椅子にもたれながら笑う。
「幽霊屋敷か。面白そうだな」
「面白くない」
レイスが言う。ノルは菓子をつまみながら、淡々と言った。
「幽霊見たい」
「見たくない」
セレスが即答した。エディンは頬に手を添える。
「あらぁ。幽霊さんに会える機会なんて滅多にないわぁ」
ハインは申し訳なさそうに頭を下げた。
「皆さん、すみません。ですが、あの物件を使えるなら、ハイン商会にとってとても大きな意味があります」
「分かってる」
アルドは立ち上がる。
「なら行くか」
「夜に?」
セレスが目を丸くする。
「幽霊が夜に出るなら、夜に行くしかないだろ」
「正論だけど嫌」
「裾くらいなら掴んでいいぞ」
「掴む」
「即答かよ」
レイスは剣の手入れを始めていた。その顔は、完全に任務前の顔だった。ただし、いつもより少しだけ嫌そうだった。
◇
夜。一行は、東門近くの物件へ向かった。そこには、大きな商館があった。いや、商館というより、屋敷に近い。広い敷地。二階建ての本館。横には倉庫らしき建物があり、裏手には荷馬車を入れられる広い空間もある。外壁は古びているが、造りそのものはしっかりしていた。それに、カリオス村にある今のハイン商会本部ほどの大きさの別館まである。月明かりの下で見ると、かなり大きい。一介の商人が使うには、分不相応に見えるほどだった。
ハインは、しばらく言葉を失っていた。
「……これを、私に?」
「正確には貸す、だな」
レイスが言う。
「流石に、これは私には……」
「ちょうどいいな」
アルドが言った。ハインが振り返る。
「え?」
「ちょうどいい」
ノルも続けた。エディンがにこりと笑う。
「ハインちゃんにピッタリねぇ」
「そうだな」
レイスも短く言った。セレスは建物を見上げて、少しだけ笑う。
「うん。大きい方がいい」
「皆さん? 何を言ってるんです?」
ハインは困惑していた。アルドは屋敷を見たまま言う。
「お前の商会の本部だろ。なら、これくらいなきゃ駄目だ」
「アルドさん……」
ノルが続ける。
「実質私たちの家だし、大きい方がいい」
ハインは目を瞬かせた。そして、思わず笑った。
「はははっ……確かに」
その笑いは、少し震えていた。だが、嬉しそうだった。レイスは剣の柄に手を置く。
「さて、任務開始だ」
「本当に入るの?」
セレスが聞く。
「調査だからな」
「外からじゃ駄目?」
「駄目だろ」
「だよね」
扉は重かった。軋む音を立てながら開く。中は暗い。埃の匂いがした。長く人が入っていなかったのだろう。床には白い埃が積もり、天井の隅には蜘蛛の巣が張っている。壁紙はところどころ剥がれ、古い燭台は傾き、廊下の奥は闇に沈んでいた。アルドが先頭に立つ。その後ろに、セレス。ハイン。ノル。エディン。最後尾に、レイス。セレスは、アルドの服の裾を掴んでいた。しかも、かなり強く。アルドが振り返る。
「セレス、引っ張りすぎだ」
「ご、ごめん」
返事はした。だが、手の力は変わらなかった。アルドは少しだけ息を吐く。
「……そのままでいい」
「うん」
ハインはセレスの後ろで、周囲を見回していた。
「想像以上に荒れていますね」
「掃除が大変そう」
ノルが言う。
「そこか?」
「住むなら大事」
「それはそうだな」
エディンがふと後ろを見る。
「あらぁ。レイスちゃん?」
「なんだ」
「近くない?」
レイスは、エディンの背中に自分の背中をぴったりとつけるようにして立っていた。後方を警戒している。そう見えなくもない。アルドが半眼になる。
「レイス」
「なんだ」
「もしかして怖いのか?」
「……警戒しているだけだ」
「ふーん」
「何だ、その声は」
「別に」
その時、エディンが急に声を上げた。
「あっ」
「なんだ!」
レイスは即座に剣を抜き、構えた。廊下に刃の音が響く。全員が固まる。だが、何も起きていない。エディンは口元に手を当てた。
「ごめん。勘違いだったわ」
「お前……」
「だから、ごめんって」
「今のは悪質だぞ」
「本当にごめんなさいねぇ」
顔はあまり反省していなかった。セレスはアルドの裾をさらに強く掴む。
「今のやめて」
「ごめんなさい、セレスちゃん」
エディンが柔らかく言う。
「はい。おふざけ終了」
自分で仕切った。アルドは頭を掻く。
「で、どうやって探す? 幽霊なんて探したことないぞ」
「まずは本当に幽霊かどうか確認よぉ」
エディンの声が、少しだけ変わった。ふざけているようで、目は真剣だった。
「アルドちゃん、ノルちゃん。感知」
「分かった」
「了解」
二人は同時に意識を広げた。屋敷の中だけ。壁、廊下、階段、部屋の奥。ノルは、より細かく輪郭を拾っていく。しばらく沈黙が流れた。
「特に異常ないな」
アルドが言う。
「人はいない」
ノルも答えた。
「小動物はいる」
「それはそれで嫌だなぁ」
セレスが小さく言う。
「幽霊よりはましだろ」
「どっちも嫌」
その時だった。屋敷の奥から、声が聞こえた。女の子の啜り泣く声。細く、弱く、途切れ途切れに。廊下の奥から聞こえたかと思えば、壁の中から響いたようにも聞こえる。古い木材に染み込んだ悲しみが、夜になって滲み出しているような声だった。セレスが、アルドの腕を掴んだ。裾ではない。腕だった。震えている。レイスは剣を構え、周囲を見回した。
「これが啜り泣く声か」
ハインの声も少し固かった。
「誰かいるの?」
ノルが呟く。
「いないみたいねぇ」
エディンが言った。沈黙が広がる。啜り泣く声だけが、屋敷の奥で続いていた。セレスが小さく言う。
「じゃあ、本当に幽霊……」
エディンは一歩前へ出た。
「幽霊さぁん」
明るい声だった。
「出てきてくれるかしらぁ?」
返事はない。啜り泣く声だけが続く。
「……」
エディンは少しだけ目を細めた。
「アルドちゃん」
「なんだ?」
「空気中の魔力に、脅すつもりで大量の魔力を繋げなさい。この屋敷内だけよぉ。外には絶対流さないで」
アルドは眉を上げる。
「脅すつもりで?」
「そう」
エディンは静かに笑う。
「殺意を込めて」
「……分かった」
ハインが目を丸くする。
「何をするんですか」
「幽霊さんに、出てきてもらうのよぉ」
「それは、穏便な方法なんでしょうか」
「穏便ではないわねぇ」
「ですよね」
エディンは振り返る。
「みんなは気合いを入れなさい。アルドちゃんより弱い子には、ちょっときつい時間が始まるわぁ」
「待って、それ私達も?」
セレスが青ざめる。
「ええ」
「嫌なんだけど」
「頑張って」
ノルはイヤリングに指先を触れた。レイスは剣を握り直す。ハインは深呼吸した。アルドは一度、ゆっくり息を吐いた。そして、目を開く。空気中の微細な魔力へ、アルドの魔力が繋がった。細くではない。強く。そこへ殺意を乗せ、屋敷の内側にいる者へ圧をかける。ハインの顔から血の気が引いた。足元が崩れるように、その場に腰を抜かす。
「っ……」
セレスは屈み込み、小さくなって震えた。それでも、アルドの腕だけは離さない。レイスは自分の手が震えるのを見て、奥歯を噛んだ。剣を握る手に力を込め、無理やり震えを押さえ込む。ノルも同じだった。表情は変わらない。だが、翠穿を持つ指先がかすかに震えている。エディンだけは、険しい顔で屋敷の奥を見ていた。何かを見逃さないように。泣き声が、一瞬止まった。その代わりに、聞き覚えのない小さな声がした。
「ひ、いいいい……」
エディンの目が動く。
「アルドちゃん。十時の方向。そこに集中させて、もっと強くするのよぉ」
「分かった」
アルドは魔力を絞る。屋敷全体に広げていた圧を、十時の方向へ集める。その瞬間、セレスとレイスとノルの震えが少しだけ収まった。ハインは腰を抜かしたまま、必死に呼吸を整える。空気の圧は、一点へ向かった。廊下の奥。古い壁の前。見えない何かが、そこに押し込められるような気配がした。
「も、もうやめてぇぇ……」
弱い声が、屋敷に響いた。アルドは目を細める。エディンがにっこり笑った。
「やめてほしいなら、出てきなさぁい」
「……」
返事はない。エディンは即座に言う。
「アルドちゃん、もっと強く」
「分かった」
「まった! まったぁ!!」
声が跳ねた。次の瞬間、廊下の奥の空気が揺れた。ぼんやりとした白い影が、壁の前に滲み出る。輪郭は小さい。子供のようだった。ゆっくりと形を取り、やがて一人の女の子の姿になる。薄い髪。白っぽい服。透けているようで、透けていない。けれど、生きている人間の気配ではなかった。女の子は、泣きそうな顔で両手を上げていた。
「出てきた! 出てきたから、もうやめてぇぇ!」
アルドは魔力を抑えた。空気が軽くなる。セレスが大きく息を吸い、ハインはその場でぐったりと肩を落とした。レイスは剣を構えたまま、白い女の子を見る。ノルはじっと観察していた。アルドは眉をひそめる。
「なんだこいつ」
女の子はびくりと震える。エディンがゆっくり歩み寄った。そして、にっこりと笑う。
「捕まえたわよぉ」
女の子は、また泣きそうになった。エディンは優しい声で続ける。
「幽霊さん」
お読みいただきありがとうございます。
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