陽剣旅団の仕事
夜明け前の平原は、思ったより冷えた。森の湿った匂いは遠ざかり、代わりに草の匂いが広がっている。低い丘の向こうから薄い光が滲み始め、空の端が白くなっていた。焚き火は、もうほとんど灰になっている。見張りを終えたアルドは、緋喰刃を膝の横へ置いたまま、遠くの草原を見ていた。眠れた時間は短い。それでも、森の中で眠るよりはずっとましだった。見通しがいい。風がある。何かが近づけば、ノルが気づく。
それだけで、少し違った。
「交代」
背後から声がした。ノルだった。翠穿を肩にかけ、眠そうな顔をしている。
「まだ早いぞ」
「起きた」
「起きただけなら寝られるだろ」
「無理」
「お前も頑固だな」
「アルドほどじゃない」
アルドは小さく笑った。
「言うようになったな」
「前から言ってる」
「そうだっけか」
ノルは隣に座ると、平原の奥を見た。空が少しずつ明るくなる。遠くの草が、風に波のように揺れた。
「今日はどこまで行ける」
「ハインの話だと、順調なら南の交易地点の手前まで。明日の昼には着くはずだ」
「南の交易地点って、名前あるの?」
ノルが聞いた。
「もちろんです」
ハインは地図を畳みながら頷く。
「オルセア町です」
「オルセア」
セレスが繰り返す。
「町なんだ」
「はい。町と呼ばれていますが、実際には商人の出入りが多い交易地点です。南の海から来る荷と、内陸へ向かう荷が一度集まる場所ですね」
「港なのか?」
アルドが聞く。
「港そのものではありません。海沿いの集荷場から少し内陸に入った場所にあります。海の荷をそのまま内地へ運ぶには、そこで一度積み替える必要があるんです」
レイスが周囲を見た。
「なら、人の出入りも多い」
「多いです。だからこそ、紛れることもできます」
ハインは少しだけ表情を引き締めた。
「ですが、最近は盗賊の話も増えています。入る時も、出る時も、油断はできません」
「順調なら」
ノルが呟く。アルドは灰になりかけた焚き火を見た。
「そう。順調なら」
順調。その言葉ほど信用できないものは、今の自分たちにはなかった。赤鎖。灰冠。夜骸。討祓軍。王国。どこから何が来るか分からない。それでも、進むしかなかった。やがて、全員が起き始めた。ハインは地図を確認し、セレスは岩丸の状態を見る。岩丸は夜の間、荷車の横に座るような形で固まっていた。朝になると、セレスが地面に手を当て、少しずつ土を整える。岩丸の頭が、昨日より少し丸くなった。
「今日の岩丸は普通」
セレスが言う。ノルが見る。
「土」
「普通の土」
「土に普通も何もない」
「あるよ」
アルドは荷をまとめながら聞いていた。いつものやり取りが戻っている。それだけで、少しだけ安心した。ハインが荷車の固定を確認する。
「今日は平原を南へ抜けます。道は比較的分かりやすいはずですが、風で轍が消える場所もあります。私が先に見ます」
「ハインさんが前?」
セレスが眉を上げる。
「危なくない?」
「道を見るだけです。戦う気はありません」
「それなら私も近くにいる」
「ありがとうございます」
エディンが髪を指でいじりながら、のんびりと歩き出す。
「じゃあ、おねぇさんは後ろを見るわぁ。昨日みたいな子がまた起きて追ってきたら嫌だものぉ」
「言うな」
アルドが顔をしかめた。
「思い出す」
「ごめんなさいねぇ」
「謝る顔じゃない」
「ばれた?」
空気は軽い。だが、警戒は解いていない。陽剣旅団は、平原の道を南へ進み始めた。草原の道は、森道よりは歩きやすかった。とはいえ、街道ほど整ってはいない。荷車の車輪は何度も小さな窪みに取られ、岩丸がそのたびに身体を傾けて引き直す。風が強くなると、草が一斉に倒れる。その中を、陽剣旅団は進む。昼前。ノルが足を止めた。
「音」
全員が止まる。アルドは緋喰刃へ手をかけた。
「夜骸か」
「そんなわけないでしょ」
ノルは少しだけ目を細める。
「車輪。馬。人の声。焦ってる」
ハインが顔を上げた。
「商隊でしょうか」
「近い?」
「丘の向こう」
ノルが指を差す。低い丘の向こう側から、かすかに馬の嘶きが聞こえた。続いて、何かが軋む音。木材が割れるような音。誰かの叫び声。アルドはハインを見る。
「どうする」
ハインの答えは早かった。
「行きましょう」
「ああ」
アルドは頷く。
「ノル、先に見てくれ。罠なら戻れ」
「分かった」
ノルが走る。草の中へ低く身を沈め、丘の斜面を駆け上がった。数秒後、彼女は振り返る。
「荷車が倒れてる。人が二人。馬が一頭。夜骸はいない」
「行くぞ」
一行は丘を越えた。その先に、小さな荷馬車が横倒しになっていた。荷馬車の片側の車輪が外れ、車体が斜めに落ち込んでいる。地面には古い穴が開いていた。獣穴か、雨で空いた空洞か。そこへ車輪が落ちたのだろう。馬は縄に絡まり、前脚をばたつかせている。荷台の下には、男が一人挟まっていた。もう一人、若い女が必死に荷をどかそうとしている。だが、積まれている木箱が崩れ、どれから動かせばいいのか分からないようだった。
「誰か! 手を貸して!」
女が叫ぶ。アルドたちを見るなり、彼女は一瞬だけ固まった。武装した一行。土の人形。大剣。長銃。普通なら、助けより先に警戒する姿だった。ハインがすぐに前へ出る。
「大丈夫です。私たちはオルセアに向かってる商隊ですこちらは私の旅の護衛です。今から助けます」
「護衛……?」
「陽剣旅団です」
ハインは短く名乗った。その言葉に、アルドは少しだけ目を動かす。陽剣旅団。まだ名乗り慣れない名前。だが、今はそれを名乗るしかない。女は迷った。だが、荷台の下から男の呻き声が漏れると、すぐに表情を変えた。
「お願いします! 兄が下に!」
「セレス」
「分かってる」
セレスは荷馬車の横へ膝をついた。地面に手を当てる。
「荷車、持ち上げすぎると壊れる。少しだけ浮かせる」
「浮かせた瞬間に荷が崩れる」
ハインが木箱の積み方を見て言った。
「先に上の軽い箱を三つ下ろします。左側は触らないでください。重心がさらに崩れます」
「了解」
アルドとエディンが荷台へ回る。エディンは大剣を背に戻し、片手で木箱を持ち上げた。
「これ、軽い方?」
ハインが一瞬だけ目を丸くする。
「……はい、それが軽い方です」
「重いわぁ」
「軽い方です」
「商人さんの軽いは信用できないわねぇ」
アルドも木箱を下ろす。中身は塩漬けの魚らしい。木箱の隙間から、潮と塩の匂いが漏れていた。女が慌てて言う。
「それ、高い荷で――」
「命より高いなら戻すぞ」
アルドが短く言う。女は口を閉じた。ハインは穏やかに補う。
「荷は後で確認します。今はお兄さんを助けましょう」
「……はい」
セレスの魔力が地面へ流れる。倒れた荷馬車の下で、土がゆっくりと盛り上がった。車体を押し上げるのではない。沈んでいる側の地面を固め、支えを作る。岩丸も、セレスの指示で荷車の横へ回った。太い土の腕を荷台の梁へ添える。
「今」
セレスが言う。エディンとアルドが木箱を押さえ、ハインが女を後ろへ下がらせる。地面が低く鳴った。荷馬車がわずかに浮く。挟まれていた男の身体に、隙間ができた。
「引き出す」
ノルがすでに横にいた。小柄な身体で荷台の下へ滑り込み、男の腕を取る。アルドも反対側から手を伸ばす。
「せーの」
男の身体が引き出された。脚から血が出ている。骨までは見えていないが、深く裂けていた。女が駆け寄ろうとする。ハインが止める。
「待ってください。まず圧迫します」
「でも」
「大丈夫です。息はあります」
ハインの声は落ち着いていた。それが、女を少しだけ落ち着かせた。セレスが水筒を受け取る。
「傷洗うね」
「治せるの?」
女が聞いた。
「治癒魔法じゃない。でも、泥は落とせる」
セレスは水を薄く広げ、男の脚の傷を洗った。水が血と土を流す。痛みに男が呻くが、意識は戻らない。ハインが布を巻く。アルドは馬の方へ向かった。馬はまだ縄に絡まって暴れている。
「近づくなよ」
アルドが言う。
「蹴られるぞ」
レイスが馬の足元を見た。
「縄を切る。馬が跳ねたら押さえろ」
「どうやって押さえんだよ」
「お前ならできるだろ」
「雑だな」
アルドは苦笑しながら、馬の正面ではなく横へ回った。レイスが短剣で縄を切る。馬が跳ねた。アルドは首元の革具を掴み、身体を斜めに入れて勢いを流す。馬の体が大きく揺れるが、倒れはしなかった。
「落ち着け。落ち着けって」
馬が荒く鼻を鳴らす。アルドは手を離さない。そこへハインが近づいた。
「少し横へ。目を見すぎない方がいいです」
「詳しいな」
「荷馬車を扱う商人は、馬に嫌われると仕事になりません」
ハインは布を馬の目の横へかざし、声を低くした。
「大丈夫です。もう引きません。大丈夫です」
馬の呼吸が、少しずつ落ち着いていく。その時だった。ノルが顔を上げた。
「来る」
声が変わった。アルドはすぐに緋喰刃を抜く。
「何だ」
「人。五人。武器あり」
草の向こうが揺れた。女が小さく息を呑む。ハインが彼女と負傷した男の前へ立つ。
「下がってください」
「盗賊……?」
「まだ分かりません。ですが、こちらへ」
草の向こうから、男たちが五人現れた。服はばらばら。腰には短剣や鉈。まともな鎧はない。赤い短鎖もない。赤鎖ではない。ただの追い剥ぎ。だが、横倒しになった荷馬車と、血を流している商人を見つけた目は、すでに獲物を見るものになっていた。
「おいおい、運がいいな」
一人が笑った。
「荷が転がってる。馬もいる。怪我人まで」
アルドは一歩前へ出た。
「帰れ」
男たちは、アルドたちを見る。武装した護衛。長銃を構えるノル。大剣を肩に預けたエディン。土の人形。普通なら、ここで引く。だが、男たちは引かなかった。荷の匂いが、欲を鈍らせている。
「その荷、お前らのか?」
「今は俺たちが守ってる」
「なら、少しくらい分けてくれてもいいだろ」
「嫌だね」
アルドが短く返した。男の一人が舌打ちする。
「やれ」
五人が動いた。速くはない。赤鎖のような統率もない。灰冠のような殺気もない。ただ、弱った相手から奪うことに慣れた動きだった。レイスが横へ出る。
「殺すな」
「その価値もない」
アルドは緋喰刃を抜いたまま、刃を返した。ノルの翠穿が鳴る。一発。風をまとった弾が、先頭の男の足元を撃ち抜いた。土が跳ね、男が驚いて足を止める。
「次は足」
ノルが淡々と言った。その声だけで、二人の動きが鈍る。エディンが前へ出た。
「悪いけど、今日はおねぇさんたち急いでるのよぉ」
大剣の腹が横へ振られる。男が二人まとめて吹き飛び、草の上を転がった。アルドは残る一人の懐へ踏み込み、柄で腹を打つ。
「ぐっ」
男が膝をつく。レイスは最後の一人の足元へ魔力を流した。
「雷流弐式 絡縛」
細い雷が草の根元を走り、足首に絡みつく。男は悲鳴を上げ、地面に倒れた。戦闘と呼ぶほどのものではなかった。五人は、すぐに地面へ転がった。アルドは緋喰刃を下ろす。
「だから帰れって言ったんだよ」
男たちは呻きながら、必死に後ずさる。レイスが冷たく言った。
「次に荷へ手を伸ばしたら、足では済まない」
それで十分だった。男たちは武器を捨て、転がるように草の向こうへ逃げていった。女は、荷馬車の陰で震えていた。負傷した男は意識を戻し、何が起きたのか分からない顔をしている。
「お兄ちゃん!」
女が駆け寄る。男はかすれた声を出した。
「……荷は」
「荷より足だろ」
アルドが思わず言った。男は目だけを動かして、アルドを見る。
「商人は……荷が……」
「命が先です」
ハインが静かに言った。その声には、同じ商人だからこそ通じる強さがあった。
「荷は残っています。あなたも生きています。なら、まだ商売はできます」
男はしばらくハインを見ていた。そして、力が抜けたように息を吐いた。
「……助かった」
「いえ」
ハインは頭を下げる。
「同じ道を行く者として、当然です」
男はアルドたちを見た。
「討祓軍か」
「違う」
アルドが答える。
「陽剣旅団だ」
「陽剣……」
男は聞き慣れない名前を反芻した。ハインが続ける。
「私が依頼している護衛団です」
「護衛団……」
男は横倒しになった荷馬車、追い剥ぎたちが逃げていった方角、そして岩丸を順に見た。最後にセレスを見る。
「その土の人形もか」
セレスが少しだけ身構えた。だが、男は怯えた顔ではなかった。疲れた顔で、ただ言った。
「いい腕だ。荷馬車を折らずに上げた」
セレスは目を瞬かせた。
「……ありがとう」
「礼を言うのはこっちだ」
男は息を整える。
「俺たちは、オルセアから北へ向かっていた。途中で道が崩れて、このざまだ」
「南の交易地点から?」
ハインが聞き返す。
「はい」
女が頷く。
「昨日の朝に出ました。こっちへ向かう荷は少なかったので、二人だけで……」
「無理をしましたね」
ハインが言う。女は悔しそうに目を伏せた。
「早く次の村へ入りたかったんです」
「オルセアの門は、今も夕刻で閉まりますか」
「最近はもっと早いです。盗賊の話が増えていて、日暮れ前には人の出入りを止めています」
アルドとレイスが顔を見合わせた。
「明日、入れるか」
アルドが聞く。ハインは少し考える。
「早めに出れば、昼過ぎには着けます。ですが、荷の確認や入場手続きに時間がかかるかもしれません」
「この人たちはどうする」
ノルが問う。負傷した男は、脚を押さえながら身を起こそうとする。
「俺たちは、ここで荷を直して――」
「その脚で?」
セレスが冷たく言った。男は黙った。
「無理」
「だが、荷を捨てるわけには」
「捨てるとは言っていません」
ハインが荷台を見た。
「車輪は片側が割れています。完全修理は無理ですが、荷を半分下ろし、岩丸で少し補助すれば、平地を短く動かすことはできるでしょう」
セレスが岩丸を見る。
「できる?」
岩丸は自信満々に頷く。ただ、土の腕を少しだけ持ち上げた。アルドは空を見上げた。日暮れまではまだある。だが、これ以上長く足止めされるのは危険だった。それでも、置いていく選択肢はなかった。
「オルセアへ戻すのは無理か」
ハインが首を横に振る。
「今日中には無理です。ですが、この先に風除けになる岩場があります。そこまでなら運べます。そこで応急の車輪固定をして、明朝、オルセアへ向かわせるのが現実的です」
「俺たちもそこまで付き合うか」
「道を大きく外れません」
「なら決まりだな」
アルドは負傷した男を見る。
「お前は荷台に乗れ。妹さんはハインの指示を聞いてくれ」
「だが、報酬が」
「今はいい」
アルドは短く言った。
「俺たちは護衛団だ。困ってる奴を見捨てて進む名前じゃない、出世払いにしておくよ」
レイスがちらりとアルドを見る。
「随分それらしくなったな」
「うるせぇ」
「褒めている」
「顔が褒めてない」
「顔の問題ではない」
エディンが笑う。
「いいじゃない。陽剣旅団らしいわよぉ」
セレスも頷いた。
「うん。今のは少し良かった」
「少しかよ」
「少し」
ノルが言う。
「まあまあ」
「お前まで言うか」
空気が、少しだけ軽くなった。それからの作業は早かった。ハインが荷の優先順位を決める。軽いものを下ろし、重いものを中央へ寄せ、割れた車輪側にかかる重みを減らす。セレスが大地魔法で車輪周りの土を固め、岩丸が荷馬車の傾きを支える。アルドとエディンが木箱を運び、レイスが周囲を警戒し、ノルが遠くの草の揺れを見ていた。商人の兄妹は、最初こそ戸惑っていたが、やがて必死に手伝い始めた。負傷した兄は荷台へ乗せられ、妹は何度も頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
「礼は着いてからでいい」
アルドが言う。
「途中でまた盗賊とか夜骸が出たら面倒だ」
「それでも、ありがとうございます」
その言葉は、真っ直ぐだった。アルドは少しだけ目を逸らした。王国から追われている。討祓軍にも追われる。灰冠にも狙われる。赤鎖にも命を狙われる。それでも、誰かを助ければ礼を言われる。当たり前のことなのに、少し遠く感じた。夕方前。一行は、低い岩場のそばへ着いた。風を避けられる窪地があり、荷馬車を寄せるには十分だった。ハインが車輪の応急固定を確認する。
「これなら、明日の朝には動けます。ただし、速度は出せません」
兄は荷台の上で頷いた。
「十分です」
妹がハインへ向き直る。
「オルセアに着いたら、南門の管理所へ行ってください。ロウナ商会の名前を出せば、少しは話が通りやすくなると思います」
ハインは少しだけ微笑んだ。
「助かります」
「助けられたのはこちらです」
彼女はアルドたちへ頭を下げた。
「陽剣旅団の皆さん。本当にありがとうございました」
陽剣旅団。その名前で呼ばれた。誰も、すぐには返せなかった。アルドは少し遅れて頷く。
「気をつけろよ」
「はい」
ハインが地図を畳む。
「私たちは、もう少し進みましょう。明日の昼過ぎにはオルセアへ入れるはずです」
「門が閉まる前にだな」
「はい」
アルドは南の空を見た。平原の先に、道が続いている。目的地は近い。だが、そこに何が待っているのかは分からない。王国の追跡。赤鎖の返答。灰冠の動き。そして、ハインの荷の行き先。全部が少しずつ近づいている。アルドは緋喰刃の柄に手を添えた。
「行くぞ」
セレスが岩丸の横に立つ。
「岩丸、もう少し頑張って」
ノルが言う。
「土だよ」
「頑張る土」
「新しい」
エディンがくすりと笑う。
「今日の岩丸ちゃんは忙しいわねぇ」
「明日、作り直す」
セレスは岩丸の背を軽く叩いた。
「だから、今日だけ頑張って」
岩丸は何も答えない。ただ、荷車の前へ立ち、ゆっくりと動き出した。陽剣旅団は再び南へ進む。背後では、助けた商人の兄妹が何度も頭を下げていた。その姿が見えなくなるまで、ハインは一度だけ振り返った。アルドは何も言わなかった。ただ、その歩幅を少しだけ合わせた。
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