第37話
ここはオルガの精神世界。
鉱山の爆発で大きな被害が出る中、ゴブローはビャッコを倒して、精神の核を手に入れた。
坑道を出るとそこは地獄のような光景だった。
怪我をして血まみれの鉱夫があちこちに座り込んだり寝かされている。治療に当たる救護の回復魔法使いたちが忙しなく走り回る。鉱夫の家族が身内を探している。
ゴブローは、そんな中をオルガの父親を探して歩いていた。
「ゴブローおじさん!」
遠くから呼ぶ声が聞こえた。
「ゴブローおじさん! こっちだよ!」
声のする方に足を向ける。手を挙げるオルガの姿が見えた。
足元には父親が寝かされている。
「オルガ!」
ゴブローは駆け寄った。
「ゴブローおじさん! 無事だったんだね。良かった」
オルガはゴブローに抱きついた。
「お父さんは大丈夫か?」
ゴブローが聞くと、オルガの顔が曇った。
「お父さんは......もう、手の施しようがないって......」
オルガは俯き、涙を拭う。
「......そんな......」
ゴブローも返す言葉が浮かばない。
「......オルガ」
オルガの父親が掠れた声で話し出す。
「何? お父さん」
オルガは耳を父親の口元に近づける。
「お母さんの事をよろしく頼む。お前が守るんだぞ......」
「分かったよ、お父さん」
オルガの目から涙が溢れ出す。
「ゴブロー」
「何だ?」
ゴブローは呼びかけられて少し驚いたがオルガの父親の顔に近づいた。
「俺の息子を頼む。強い男にしてやってくれ」
「分かった。約束する」
オルガの父親は笑顔を見せた。
左目から一筋の涙が流れる。
そして、息を引き取った。
「お父さん!」
オルガが父親の身体に抱きつき、号泣する。
ゴブローは父親の上着のポケットに光るものを見つけた。そっと取り出すと、それは青い宝石のような石だった。
「これも、魂の核なのか?」
ゴブローは青い石をポケットにしまった。
赤の石と青の石。どちらかが魂の核なのか?それとも両方?
ゴブローは悩んでいた。
恐らく、この魂の核を子供のオルガの身体に戻せば、現実のオルガは目を覚ます。選択を間違えればオルガは......
ゴブローは頭を抱えた。
オルガの父親の葬儀が終わり、オルガとゴブローの別れの時も近づいていた。
「ゴブローおじさん。色々ありがとう」
オルガが言う。その目には父親譲りの力強さが宿っていた。
「オルガ、お父さんの代わりに、お前がお母さんを守るんだぞ」
ゴブローがオルガの頭を撫でる。
「ゴブローさん、ありがとうございました」
オルガの母親は憔悴しているが、目には生きる意志が表れている。
(これなら、大丈夫だ)
ゴブローは思った。
別れの時は近づいている。
肝心な話をしなければ。
ゴブローは決心した。
「オルガ、最後に大事な話がある」
「何? おじさん」
オルガが訊ねる。
「ここに赤い石と青い石がある。どちらか一つをオルガにやる。選んでくれ」
「そんな、僕、選べないよ」
オルガは迷っている。
「選ぶんだ。これでお前の人生が決まる。」
ゴブローに言われてオルガの顔は真剣になった。
慎重に品定めするように、両方の石を見比べる。
「赤......青......どっちだ? 」
オルガは腕組みをして考え込んだ。
「さあ、決めるんだ。」
ゴブローが決断を促す。
一瞬の静寂。
「決めた! 青にする!
お父さんの好きな色だから」
オルガがそう言った瞬間、赤い石は砕け散った。
青い石が輝きを放ちながら浮かんでいく。
それをオルガとゴブローは見上げる。
より一層輝きを増した青い石は、一際眩く輝き、突然、輝きが消えた。
「何だ? 」
次の瞬間。
青い石はオルガの身体に吸い込まれるように入っていった。
「うわー! 身体の中に入っちゃった! 」
すると、周りの景色が歪み出した。
オルガの身体が大人の身体にみるみるうちに成長していく。
周囲の景色が渦のようになり、オルガとゴブローはそれに飲み込まれた。
「ゴブローさん、オルガさん」
遠くから呼ぶ声が聞こえる。
「ゴブロー、オルガ、起きろ」
ゴブローはゆっくりと目を開ける。
目に飛び込んできたのは、丸太小屋の天井とアイリスだった。
ゴブローは身体を起こす。
「戻ったのか......? 」
頭を横に振る。
隣に寝ていたオルガも起き上がっていた。
「成功ですわ。ゴブローさん」
アイリスがゴブローの目の前に羽ばたいてくる。
「俺はオルガを取り戻せたのか? 」
ゴブローが呟く。
「そうだ。よくやったな、ゴブロー」
イブが腕組みしている。
「ゴブロー、ありがとう」
オルガがゴブローに礼を言う。
「良かった、オルガ。戻ったんだな」
ゴブローがそう言うとオルガと抱き合った。
オルガの精神世界からの救出は成功した。
しかし、あと3人残っている。
ミカエル ー エリーゼ
ホウオウ ー スザク
リリィ ー フィーネ
それぞれの精神世界での戦いは続いていた。
ウエスの森はただ静かにことの成り行きを見守っていた。




