第38話
「ホウオウ......ホウオウ......」
私を呼ぶのは誰?何だか懐かしい声。あったかくて落ち着く......
「ホウオウ、仕方ない子ね......」
私は眠い目を擦りながら目を開いた。
そこには、優しい顔をした女の人がいた。とっても安心する笑顔だ。
「お母さん、おはよう」
「おはよう、ホウオウ」
私の横では、まだ小さいスザクがスヤスヤと眠っている。
お母さんは、私とスザクの頭を撫でた。
「お母さん、今日も私、お手伝い沢山するね」
「ありがとう、ホウオウ。スザクの面倒もお願いね」
「うん、もちろん! 私お姉ちゃんだもん!」
お母さんは、ゆっくりと立ち上がった。とても大変そうだ。だって、お母さんのお腹には弟がいるから。もうすぐ、私とスザクはお姉ちゃんになるんだ。
「お母さん、お父さんは? お仕事?」
「そうよ。今日は早く帰ってくるって」
するとスザクが目を覚ました。
「お母さん、お姉ちゃん、おはよう」
「おはよう、スザク」
スザク。私の妹。大事な大事な妹。
「お母さん、お腹大丈夫?」
スザクがお母さんの大きなお腹を撫でながら言う。
「大丈夫。スザクももうすぐお姉ちゃんになるんだから、頑張らなくちゃね」
お母さんが優しい声で話しかける。
「うん! スザク、お姉ちゃんになるからお手伝い頑張る!」
「良い子ね」
お母さんはスザクの頭を撫でた。
スザクは、とても嬉しそうだ。
私とスザクは、もうすぐ生まれてくる弟のために、お洋服を作るお手伝いやお母さんのために家のお掃除の手伝いをしたり、洗い物の手伝いをしたりした。
夕方になるとお父さんが帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい、あなた」
「お父さん、お帰りなさい!」
「お父さん、抱っこして!」
スザクはまだ小さいから甘えん坊だ。
「よし、スザク、こっちに来い」
お父さんはスザクを軽々と持ち上げた。
「さすが、もうすぐお姉ちゃんになるから、大きくなったな、スザク」
「うん! スザク、もうお姉ちゃんだもん!」
お父さんに抱っこされてスザクは自慢げだ。
「疲れたでしょう? 椅子に座って休んでて」
お母さんが食事の支度をしながら言う。
お父さんは、スザクをおろして、お母さんのところに行った。
「俺も手伝うよ」
「あなたは座ってて。ホウオウ! スザク! お父さんとお話ししてて」
「わかった! お父さん、お話ししよう」
私とスザクも椅子に座った。
私はお父さんに今日一日の出来事を話し続けた。
お父さんは、合槌を打ってちゃんと聞いてくれる。
「ご飯が出来たわよ」
お母さんがテーブルに手作りの料理を並べる。お父さん、お母さん、私、スザクの四人分。もうすぐ五人分になるんだ、たのしみだなぁ。
「いただきます!」
家族揃ってご飯を食べるのは特別な時間。お父さんもお母さんも私もスザクも、みんな笑ってる。
この幸せがずっと続くと良いなと思う。
ご飯を食べ終わると、お父さんは一人だけお酒を飲む。顔を真っ赤にして楽しそうにお話ししてくれる。お酒くさいのは嫌だけど、この時のお父さんも大好きだ。
お母さんもお父さんの話を聞いて笑ってる。
そうしていると、私もスザクも眠くなってくる。
「スザク、もうおやすみの時間ね。」
スザクは大きな欠伸をした。
「スザク、一緒に寝よう」
私はスザクを連れてベッドに行く。
「むにゃむにゃ、お姉ちゃん......」
スザクは寝言を言っている。スザクを寝かしたら、私もその横で眠る。
(......魂の核を探すのだ......)
誰かの声がする。
魂の核......
そうだ、お姉ちゃんを救うために、魂の核を探さなくては。
ハッと私は目を覚ました。
私はスザク。でも何故か今は過去のお姉ちゃんになっている。頭が混乱する。とにかく、お姉ちゃんの魂の核を探さなくては。
私はそぉっとベッドを抜け出した。
魂の核とはどんな形をしているのだろう?わからないけど探すしかない。
引き出しの中や物置、音を立てないように手当たり次第に探していく。
当てもなく探し回っても見つからない。私は途方に暮れてしまった。
?!
話し声が聞こえる。
私は両手で口を塞いで座り込んだ。
「どうした? 大丈夫か?」
「あなた、う、生まれそう......産婆さんのところへ」
「分かった。馬車を用意するから頑張れ!」
子供が生まれる!? 大変だ。
私は寝室に戻った。
しばらくして、寝室の扉が開いて、お父さんが入ってきた。
私とスザクは目を覚ます。
「ホウオウ、スザク。お父さんはお母さんを連れて産婆さんのところに行く。二人は留守番をしているんだ。良いね。」
「弟が生まれるの?」
スザクが聞く。
「そうだ。きっと大丈夫だから、二人は待ってるんだぞ」
「分かった」
私とスザクは返事をした。
お父さんは、お母さんを連れて産婆さんの所に向かった。
私とスザクは、しばらく起きていたが眠気に勝てずに、いつの間にか眠ってしまった。
私の最初の記憶。
そして最悪の記憶。
私の悪夢はここから始まるのだ。




