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【第二部】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない  作者: DAI


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第27話


「ありがとう。フィーネ、大好きだよ。」

下半身の激痛に耐えながら、最期の力を振り絞って、少女に話しかける。少女は嗚咽している。

(あぁ......僕はこれで死ぬんだ......)

ゆっくりと目を閉じる。

そして、頭まで一気に飲み込まれた。

ウネウネと動く内蔵。生温かくて凄く臭い。でも、そんな感覚も失せて行く。意識が遠のく。

(僕は魔物の胃袋の中で死ぬのか......)

薄れゆく意識の中でそんなことを考えた。



ザンッ!

サイクロップスの身体が真っ二つに裂ける。左右に泣き分かれになったサイクロップスの身体からエルフの少年らしきものが出て来た。

里襲撃の一部始終を見ていた魔神ザハークは、その少年の亡骸を見る。

微かに息の音が聞こえる。どうやらまだ生きているようだ。

「メルティナに、いい手土産が出来たな」

ザハークは、エルフの少年の体を魔力で持ち上げ、一緒に消えた。



はぁっ......はぁ......

アズラエルは頭を抱えてうずくまっていたが、立ち上がった。

「この記憶は......私の過去......私は、エルフ......」

アズラエルは頭を左右に振る。

「私はアズラエル。三司祭の一人!」



フィーネが意識を取り戻す。

「気を失っていた? アズラエルは?」

顔を上げると、すぐ近くにアズラエルが立っている。彼はフィーネが目覚めた事に気付いていない。

(ここは一旦、距離を置きましょう)

フィーネは少しずつ後退り、壁際まで逃げた。



「私は、私のすべき事をする!」

アズラエルは魔力を両手に集中する。

その魔力は桁違いに大きい。遺跡全体がビリビリと震え出す。

「ダークネスボール!」

漆黒の魔力の塊が丸い球となり、フィーネに向かって飛ぶ。


「バリア!」

フィーネは防御魔法で防ごうとするが、黒い魔力の塊はバリアを砕こうとする。

「くっ!あぁっ!」

フィーネは間一髪でかわしたが左腕が動かない。


「片腕では、何も出来まい!」

アズラエルが近づいてくる。

フィーネは身構えている。


「ライトニングソード」

フィーネの右手に光の剣が現れた。

「エルフ! 終わりだ。」

アズラエルが腕を振り上げようとした、その瞬間。フィーネの右手が振り下ろされ、アズラエルの腕を切り落とした。

「グァッ!」

アズラエルの右手は肘から先が床に落ち、切られた腕からは血が滴っている。

「これでおあいこね」

フィーネが言う。

「ダークネスソード」

アズラエルの左手から漆黒の剣が現れた。

「剣術で勝負と行こうか」

アズラエルとフィーネは、王の間の中央に移動して、お互いに魔力の剣を構えた。


「フィーネ!気をつけて」

リリィが叫ぶ。

フィーネはリリィの方をチラッと向いて頷く。


「行くぞ!」

アズラエルがフィーネに襲い掛かる。

フィーネは、剣で受け止める。

二人の激しい鍔迫り合いは、周囲の空気をビリビリと振動させる。



(......ありがとう、大好きだよ)

アズラエルの頭に過去の映像が浮かぶ。

「止めろ!」

アズラエルの集中が切れた。

「今だ!」

フィーネが剣を振りかぶって振り下ろす。

アズラエルの頭に直撃した。そのまま力を込めて身体まで切り裂く。


アズラエルは、仰向けに倒れた。息が乱れている。身体には肩口から脇腹までの長い切り傷が。


ピシッ


アズラエルの仮面にヒビが入った。

一部が割れて、素顔の半分が露わになる。


「勝負はついたわ。アズラエル」

フィーネがアズラエルに近づく。


フィーネは半分が露わになったアズラエルの素顔を見て、驚愕した。



「フィーネさん! リリィ! 無事か?」

王の間にオルガが入って来るが、ただならぬ雰囲気に近付けない。


「オルガ!」

リリィが叫ぶ。



フィーネは、アズラエルの顔を見たまま動けない。


「あなたは......ハ、ハンス......?!」


フィーネの言葉に、その場の空気が固まった。


「フィーネ!大丈夫か!」

後から追いついたゴブローたちをオルガが制止する。



浅黒い肌に真っ赤な瞳。尖った耳に銀色の髪。端正な顔立ちだが、その面影は、900年前に死んだフィーネの恋人ハンスそのものだった。


「ハンス......何で?」


グハッ!

アズラエル=ハンスは、静かに話し始めた。

「全てを思い出したよ。フィーネ......」

「ハンス......生きてたのね」

「僕は魔神ザハークに命を助けられた。メルティナの"おもちゃ"にする為に......」

「メルティナが......」

フィーネがつぶやく。

「僕はダークエルフとなって過去の記憶を失った。そして、アズラエルになった」



「......」

リリィもオルガたちも固唾を飲んでハンスの話を聞いている。



「アズラエルになった僕は三司祭の一人として世界を混沌に導こうとした。でも、フィーネ。君のお陰で思い出したんだ。あのエルフの里の美しさ。かけがえの無い平和な生活。愛する喜び。全てが愛おしい。」


グホッゲホッ!

ハンスは血を吐き、顔が青ざめて行く。

「ハンス! まだ間に合うわ! 一緒に帰りましょう」

「ダメだ。フィーネ。僕は900年前に死んだ人間だ。一緒には行けない」

「そんな事ない! 一緒に帰るのよ!丸太小屋に」

フィーネの目から涙が溢れる。

ハンスの目からも一筋の涙が流れる。


「ゲホッ! 目が見えなくなって来た......最期に君の顔を見せて......」

フィーネはハンスの顔を見る。そして、永遠にも感じる短いキスをした。



「......ありがとう。フィーネ......大好きだよ」

アズラエルは、エルフの少年ハンスとして息を引き取った。



「いや! ハンス! また一人にしないで!」

フィーネの嗚咽が王の間に響く。



リリィもオルガもゴブローたちも、動くことも声をかけることも出来なかった。


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