第12話
ここはウエス国とノーザリア国との国境近く。
フィーネたちは国境近くの町で馬車からソリに乗り換えノーザリアに向かった。
「雪だー! たーのしー!」
リリィはこの世界で初めての雪山に大はしゃぎだ。
「雪ですにゃー!」
「おいらも雪は好きだぞ!」
エリーゼとハクも興奮している。
「子供は無邪気でいいな。寒くてかなわない」
ミカはリリィたちを冷めた目で見ている。
ソリは猛スピードで雪原を駆けていく。
遠くに城壁に囲まれた大きな町が見えてきた。
「あれがノーザリアの城下町よ」
ホウオウが言う。
「いよいよね」
フィーネは真剣な眼差しで町を見つめる。
ノーザリアには三司祭の一人バロールがいる。どんな罠が待っているか分からない。
「気を引き締めて行こう!」
オルガが手綱を操りながら叫ぶ。
巨大な門の前で衛兵にウエス国王の紹介状を見せる。門がゆっくりと開き通行を許された。
中に入ると、そこは別世界だ。城壁の外の厳しい寒さが嘘のように暖かい。魔法による結界で適温に保たれ、過ごしやすい環境になっていた。
「あったかい!凄い町だね」
リリィが驚いて言う。
「これは魔導石の力ね。この国には魔導石が豊富にあるから」
フィーネが言う。
石造りの美しい建物が整然と並ぶ。大通りを真っ直ぐに進んで行くと、目の前に大きな城が見えてきた。白銀に輝く美しく威厳のある城。
「これがノーザリアの城か」
ゴブローが城を見上げて感嘆の声を上げる。
城の前に馬車を停め、フィーネたちは中に入って行った。大広間には執事が待っていた。
「フィーネ様、ご家族の皆様。ようこそノーザリアにいらっしゃいました。」
「ありがとうございます」
フィーネが頭を下げる。
「では、フィーネ様、リリィ様、エリーゼ様。こちらへどうぞ。他の方は別室でお待ちください。」
フィーネ、リリィ、エリーゼは執事の後についていく。
「皆んな、また後で」
フィーネはそう言って、他の皆んなを見送った。
フィーネたちは階段を上がり王の間に向かう。
「こちらでございます」
執事に促され、王の間に入る。
フィーネたちの目の前には、玉座に座るノーザリア国王が。立派な顎ひげを蓄え、顔には深い皺が刻まれている。
「よくぞ参られた。フィーネ殿」
国王は低く落ち着いた声で話す。
「この度はお話の機会をいただきありがとうございます」
フィーネは頭を下げる。
「遠慮なく申すが良い。話とは何かな?」
国王は頬杖をつきながら言った。
「恐れながら申し上げます。イストリアとの争いをやめて和平を結んでいただけないでしょうか?」
フィーネが言うと、ノーザリア王は明らかに不愉快な顔になった。
「何を言い出すかと思えば......くだらない。争いの原因を作ったのはイストリアの方ではないか」
「国王陛下、戦争は憎しみを生むだけです。お考え直しください。お願いです」
フィーネは食い下がる。
「とにかく、この話は終わりだ。下がって良いぞ」
国王は話を切り上げようとする。
「お待ちください。国王陛下!」
エリーゼが口を開いた。
「ウエス国の王女エリーゼです。戦争は国民を苦しめるだけです。どうかお考え直しいただけませんか?」
エリーゼの話を聞いても国王の表情は変わらない。
「くどい!エリーゼ姫よ、そんな甘い考えでは国を治めることは出来んぞ」
「国王陛下!」
エリーゼの訴えはノーザリア国王には届かない。
「もう良い。大臣! 話は終わりだ。後は好きにしろ」
国王がそう言うと、玉座の横に黒いモヤのような塊が現れた。そのモヤは人の形になる。三司祭の一人バロールだ。
「バロール! 現れたわね!」
フィーネが叫ぶ。
「エルフ・フィーネよ。我が弟の仇、とらせてもらうぞ」
「ゲンブの死は自業自得よ。」
フィーネは冷たく言い放つ。
「後悔させてやるぞ、エルフよ」
バロールはそう言って、片目の眼帯を外した。その目のあるはずの場所には、穴が空いている。その穴が周囲のものを吸い込みだした。
「きゃー!」
リリィが吸い込まれる。
「フィーネ! たすけて!」
リリィが伸ばした手をフィーネが掴む。
「リリィ!」
「フィーネ!」
二人はバロールの目に吸い込まれてしまった。
エリーゼは咄嗟に猫に変身して王の間から逃げ出す。国王もバロールも気付いていない。
「ふははは! エルフと女神の魂を持つ娘は我が物だ!」
バロールは眼帯を元に戻した。
別室では、オルガたちが待っていた。
「フィーネたち、大丈夫かな」
ハクが退屈そうに言う。
「何かあれば、すぐに行くぞ」
ゴブローが周りを警戒しながら話す。
すると、一匹の猫が部屋に入ってきた。美しい白い毛並みの猫、エリーゼだ。
「......エリーゼ? 何で?」
アイリスがつぶやくと、エリーゼはアイリスを見て首を横に振った。
事態を察知したアイリスは、しばらく考え、
「皆さん、話があります」
皆んなに向かって話し出す。
「今すぐにここを出ましょう」
「何でだ?まだフィーネたちが戻ってないぞ」
オルガが言う。
「とにかく、わたくしを信じてください」
アイリスはチラッとエリーゼを見た。エリーゼは首を縦にふる。
「わかった。アイリスを信じよう」
オルガはそう言って、皆んなを説得した。
オルガたちは、ひとまず宿を確保して今後のことを話し合うことにした。
「......う、うん......ここは?」
フィーネが目覚める。
目の前には果てしない荒野が広がっていた......




