第95話 プレイベントの振り返り
プレイベントが開催された12月2週目の土曜昼下がり、いつものメンバーがまちカフェあおいに集合した。
メンバーは、わさび、夏海、もんちゃん、ペイ、未来、そしてバイトしていたアリスたち女子高生。
それに美香も加わっている。
もう冬なので、管理棟の中にテーブルを運び入れてのミーティングだ。このメンバーで囲める広さはスタジオみかんにしかない。
そのため、スペースを借りている。
今回の話し合いには未来も参加している。
自分の店に推しが来ている美香は、水曜のプレイベントの日からとにかく張り切っていた。
"坂本造園のため = 未来のため"と考える美香は、当日の聞き取りから資料まとめまで猛烈にこなしてくれた。正直、資料まとめや分析といった業務について、ヨウたちが出る幕はなかった。
「美香さん、とても分かりやすい資料になっています。バイト代、弾みますから。あと、仕事した時間もしっかり申告してください。」
「べ、別にそんなに時間かかってないですけど。」
ヨウが未来の前で働きを褒め称えると、美香は顔を赤らめて下を向き、抑揚のない声で答える。
「美香さん、本当に分かりやすいです!! 美香さんってイラストだけじゃなくて、何でもできるんですね。美人だしすごいです。な、アリス。」
未来に話を振られたアリスは、「私なんて美香さんと比べたらダメだよ〜」と、青春オーラ出まくりの会話が繰り広げられる。周りの女子高生も巻き込んで、やんのやんの始まった。
「ごほん。さ、始めるよ。」
高校の教室みたいになった空気を変えようと、ヨウが咳払いをして注目を向けた。
「さあ、資料のデータを見ていこう。まず特筆すべきは、プレイベントが楽しかったという回答が圧倒的に多いね。でも、山田さんなんて、試合出たくないって言ってなかった?」
ヨウは試合にかなり出ていたため、出場しなかったわさびに問いかける。
「そうなんだけどね。理由は怪我したくないからだったみたい。年末に怪我してお客さんの庭の手入れができないのは嫌だったんだって。」
わさびが答える。
「さすがベテランの職人だね。でも、なんで楽しかったって言ってるんだろ。」
「途中から若手に頼まれて、監督やってたらしいよ。」
「監督?」
「ベンチから指示出してたら、これが面白かったって。」
わさびの話にもんちゃんが食いつく。
「それな!! 『コインゲッターズ』のやつら、途中から妙に手強くなったからな。そりゃ、山田さんにケツ叩かれたらやるしかないもんね。」
監督としての参加。アイデアに出ていたやつだ。
構想していた形が、早くも現実になりつつある。
ヨウは手応えを感じた。
「悪い点もあったっすよね。」
夏海が聞いた話には、ネガティブなものもあったようだ。
「細かいのはいろいろあったけど、一番多かったのは、強いチームがずっと強いことへの不満みたい。」
「確かに、強いチームにずっと入ってたら、成功確定だからなぁ。でも、試合に出るために自由に5人集める。この部分に介入したら、途端に面白くなくなっちゃうよね。」
ヨウが感想を述べる。
「ま、宿題にしましょうよ。どんなに強くても、いずれやられますよ。奢れる者も久しからずです。」
未来が発言し、美香が必死にメモを取っている。推し活レポートでも作っているのだろうか。
「未来の言う通りだな。アリスたちは試合観てないと思うけど、意見ある?」
ヨウに問われた女子高生たちが、わいわいと話し出した。
しばらくして、ようやく意見がまとまったようだ。アリスが口を開いた。
「えっと〜、全員アイドルみたいなイケメンさんのチームがあったら観に行きたいです〜。」
「ぷ……わははは!!アリス、アイドル好きだったんかよ〜。」
未来がアリスをからかって、女子高生を含めたエリアがお花畑になった。
その光景をうっとりと見つめながら、美香が何やらスケッチを取っている。
アイドル?
アイドルか……う〜ん……。
なにか思いつきそうなんだよなぁ。
あ、脱ITをITでやる。
なんとなくイメージできたかも。




