第94話 結果は上々
約2時間のプレイベントを終え、職人たちによる片付けが始まっている。
並行してヨウたちが、あおい庭園でバーベキューの準備を始めた。
「ヨウは、結局8枚だけ?」
わさびが哀れみのコメントをする。
ぼろぼろになりつつ、なんとか手にしたヨウのポケットには、わずか8枚のあおコインがあるのみだ。
出場は全部で5試合。いろんなメンバーと組んで試合に出たが、イレやテンが1試合で入手した枚数にも及ばなかった。
イレやテンと組んだ1試合だけが勝利。
それ以外はすべて敗戦だった。
「ここまで負けると、もうヨウさんが疫病神に見えるっす。」
「そうね、ヨウと組むのはNGね。」
夏海やわさびにディスられながら、ヨウはバーベキューの準備を続けた。
*****
「それでは、みなさん、お疲れ様〜」
わさびの発声が乾杯の合図となり、皆がビールで乾いたのどを潤す。
バーベキューもいい感じでモクモクと煙を上げ、周囲に美味そうな匂いを充満させている。そろそろ食べ頃だ。
時刻は午後5時になっているので、未来と勇気の高校生組も合流した。当然、アリスたち女子高生組も加わっている。
「え?イレさんが試合に出たんですか?くそ〜、対戦したかった〜。」
ヨウから試合の話を聞いた未来が、こんがり焼けたソーセージを口いっぱいにほおばりながら悔しがる。
「親父にいつも聞かされてたんですよ。イレさんを超える選手は、まだ育ってないって。
うちの親父、あの川崎フューチャーズの監督っすよ。J1も何度か制覇してるし、海外行った人もいるのに……。あの憲剛さんより上ってことかよ!!うそつけと内心思ってました。」
「俺には次元が高過ぎて分かんないけど、オーラがすごかったよ。」
ヨウが感想を述べると、「ちょっと、みんなに聞いてきます」
未来はそう言って走っていった。
今日のヨウは企画課長として、このプレイベントを仕切る側の立場だ。このバーベキューでやらなければならないことがある。
アルコールで舌も滑らかになったみんなから、今日の感想や反省点、改善ポイントなどを聞き出さなければならない。
もちろん、ヨウだけでは限界があるので、わさび、夏海、もんちゃん、ペイたち社員に加えて、ユミ、美香、そしてアリスたち女子高生にアルバイトをお願いした。
もんちゃんは飲みたがるかと思ったが、アルコールがなくても陽気にみんなから話を聞いている。
とっても優秀な社員なのだ。お猿さんだけど。
ヨウもメモを取りながら話を聞いてはいるが、あまりのめり込まないように、全体を俯瞰するように努めている。そんなヨウにイレが近づいて来た。
「課長、どうだ?なんとかなりそうか?」
「イメージはできましたが……。いま聞き取りしている内容をまとめて、答えを出すことを考えると不安が……。」
「前の会社で山ほどやってきたんだろ?今回はペイさんもいるから心配してないぜ。」
う……。あの荒んだ毎日が思い起こされる。
でもまぁ、うちのメンバーで力を合わせるのも楽しそうだな。夜食はてっぱんから簡単に調達できるし。あ、コインぜんぜんないんだった……。
ヨウが現実とあおコインの世界をさまよいながら思考していると、騒がしいサッカー部員たちと談笑していたテンがやってきた。
「ヨウ君。今日は合格だよ。このままスケジュール通り頼むよ。」
実に嬉しそうな満面の笑みだが、目の奥が笑っていない。絶対にやりきれよ。そんな瞳で見つめてくる。
「分かってるよ。お前、これはうちの会社の事業なんだから、口出しするんじゃねぇぞ。」
イレが割って入るが、テンは「口出しなんてしないよ。いま面白いところなんだから」と言い残して、またガヤガヤとした宴会の中に戻っていった。
「ま、頼むわ。次回のテンツクも日にちさっさと決めといてくれ。」
イレもそう言い残して、騒がしい輪の中に入っていった。




