第93話 レジェンドたち
ピーーー
10分間の戦いが始まる。
対戦相手は、初戦に出なかったサッカー部員で構成されたガチチーム "コインゲッターズ" 。
若手が中心になったメンバーは金がない。よって、今回のイベントに最も貪欲であると言っても過言ではない。
事務局としては、情報源として宝の山のようなチームだ。
「若造どもを蹴散らしてやるか。」
イレがFW、テンがMFの位置についた。
「お前ら、俺らに仕事させんなよ。」
イレが敵ゴール前で仁王立ちになり、チームメイトのヨウや野村たちに声をかけた。
それだけで空気がピシリとしまる。
ボールは、運動量のある若手たちが裏狙いのチャレンジを続け、それをMF野村とDF田代のベテランコンビが許さない形で始まった。
イレは相手ゴール前で仁王立ちしながら、相手GK櫻井に話しかけている。
テンはのんびりとコートの中を行ったり来たりしている。
そんな状況だから、普段はあまり守備で貢献できないヨウも、守備に加わる。必死にやっているが、あまり役に立っていなさそうだ。
そんな中、"コインゲッターズ" にビッグチャンスが訪れる。裏狙いのパスが味方DF田代とGK西山の前に通り、そこからゴール前へのパスが供給された。
バシュ!!
フリーになった相手FW飯山にボールが届くかと思われたが、突如現れたテンがボールを大きくクリアした。
クリアしたボールは、一直線に相手ゴール前にいるイレに向かっていく。
相手DF後藤がイレと競り合うが、まったく歯が立たない。
この男は、まだまだ現役でやれるのではないだろうか?
イレは、後藤のディフェンスをあざ笑うように、笑顔でど迫力のダイレクトボレーを繰り出し、ゴールネットに突き刺した。
このすさまじいパワーに若手陣営は圧倒されてしまった。イレはこのゴールに加え、もう1点を決めて合計2得点で試合を終えた。
ちなみにテンも、フリーキックで1点を上げている。
こうして、ようやくヨウも4コイン(試合出場1コイン、勝利3コイン)を手に入れることができた。
「は〜、これでさかつくスペシャルにありつけるよ。」
わさびからコインを受け取りながら、しみじみとつぶやいた。
「まだビールは飲めないね。」
わさびに言われて、ヨウはどっと疲れを感じたのだった。
*****
「俺は10コインだぜ。俺の勝ちだな。」
イレが自慢げにテンに話しかける。
「さすがイレ君だね。あのシュートはまだまだプロでも通じるよ。」
テンに褒められて、イレも満足な表情をしている。
「あ、ちなみに僕は11コインだよ。」
「は?」
イレが面食らったような表情に変わり、テンに問いかける。
「えっとね。試合出場で1コインでしょ?勝利3コイン、1ゴールだから3コイン。で、DFとして2コイン、GKとして2コイン。合わせて11コイン。
ほら、あっちのルールをみてごらんよ。」
【あおコイン獲得ルール】
・試合出場 1コイン
・勝利 3コイン
・ゴール 3コイン
・DF・GK(勝利時)+2コイン
・PKストップ 3コイン
「おい、わさび。これは正しいのか?」
「確かに、テンさんは、DFもGKも少しだけやってたのかも。だから、今回だけオッケーにするけど、次の試合からはなしね。ちょっと難しいけど、最初の登録ポジションで決めます。」
「だって。」
コイン受け渡しの際に、わさびを言いくるめたらしい。テンは嬉しそうにコインを数えている。
「お前、相変わらず躊躇ないな。」
「そう?何か変わったことあった?それよりも、このコイン素晴らしいね。久しぶりにこんなに価値のあるものを手に入れたよ。すごく嬉しいよ。」
周囲はドン引きだが、テンにとっては当たり前のことだったらしい。
「あ、そう言えば。ペイ君もうちのチームに登録してもらったでしょ?彼のポイントもらって僕のにしていい?」
「ダメに決まってるでしょ!!」
でしょ…でしょ…でしょ…
わさびがメガホンで即答し、会場にこだまする。
テンさんからテンリーグ運営を奪い取っておいてよかった。
ヨウはしみじみと思った。




