第92話 弱肉弱食
「ヨウ君、負けちゃったじゃない。」
イレと一緒に試合を観戦しているテンが、独り言のようにつぶやいた。
「このリーグは弱肉強食です。ここではヨウ君は弱者です。ですから、順当な結果であります。」
後方に控えていたペイが、突然背後に現れて見解を述べた。
「確かにヨウは弱者側かもな。」
あまりにも突然のペイの出現に困惑しつつ、イレが答える。
なんとなく結果に不満そうな2人の雰囲気に焦りを感じたペイが、この状況を打開しようとソワソワし始める。
「あ、何もしちゃダメだよ。これからが楽しみなんだから。」
もう動き出そうかとするペイに対し、テンが釘を刺した。頷くと、ペイはまた後方に静かに控えた。
「まったく……。彼はすぐ結果を欲しがっちゃうんだよ。それこそ、とても優秀なんだけどさ。」
テンは肩をすくめてため息をつく。
「贅沢なもんだぜ。こんな田舎町じゃ、ペイさんほど優秀な人には会ったことがないぜ。まぁ、ヨウも優秀なんだが、だいぶ毛色が違うしな。」
「僕はヨウ君の方が欲しいんだけどね。ね、交換しない?」
「ばかやろう、ダメに決まってるだろ。お前、ペイさんに聞こえたらどうするんだ!!」
テンのハラスメントな発言に、イレが喝をいれる。
「それそれ!!もう僕の周りにはイエスマンしかいなくてさ。ヨウ君みたいに、ノーを言ってくれる人がいて欲しいんだよ。」
幼なじみの前だからだろう、珍しくテンは弱気な発言をした。
「まぁ、お前も苦労してるんだな。俺もヨウには助けられてるよ。お前だって、ペイさんに助けられてるって忘れるなよ。」
「そうだね……大切にするよ。」
*****
その頃、会場は1試合目を終え、これからの試合が進みつつあった。
1勝を上げて勢いに乗る "なつもんドラゴン" は、そのままのメンバーで2試合目に臨むようだ。
イベントを仕切るわさびに2試合目の申告をして対戦相手が決まるのを待つ。
初戦を観戦していたメンバーは、思い思いにチームを作り始めた。
サッカー部員中心のガチチーム。
いつも世話になっている先輩職人を入れた和のチーム。
「オラァいいよ」と言って参加しない年配の職人もいる。
とにかくルールがないのだから、当然、混沌としてくる。本当に節操がなければ、補欠でいいから入れてくれと、今のところ最強っぽい "なつもんドラゴン" に加入するというのも、何でもありなのだ。
今はチームメンバーの定義も決まっていない。直接試合に出なくてもメンバーだと認められれば、3コイン(勝利3コイン)、あわよくば4コイン(試合出場1コイン、勝利3コイン)もらえる可能性がある。
今回のプレイベントは、そうしたルールの隙間を洗い出す目的もあった。わさびが判定役として、都度好きなように裁定すると決めてある。
よって、とにかく決まっていないことは、やってみる価値はあるのだ。
そんな中、ヨウが事務局にやってきた。
「わさび、うちはこのままのメンバーで行くつもりなんだけどさ、イレさんとテンさんをメンバーに入れてもいいかな?あと、2人増えるから、チーム名は "イケオジ・セブン" に変更でよろしく。」
「オッケー、イレさん、テンさん、がんばってください!!」
わさびから告げられ、「よっしゃ」と、2人が立ち上がる。
後ろでペイがオロオロしているが、そんなことは2人ともお構いなしだ。
「コインの獲得競争しようぜ。」
テンの肩をつかみながら、イレが勝負を持ちかける。
「当然、僕が勝つよ。」
テンが嬉しそうに応えた。




