第90話 てっぱんで使えます
「あ、言い忘れてたけど、このコインの名前はあおコイン。期間限定だけど、『てっぱん』で使えます。」
ヨウの説明が終わったところで、わさびがメガホンで告げた。途端にざわざわし始めた。
「もんちゃんは、さっきポケットに入れたあおコインを返してね。これはもうれっきとしたお金になったんだから。ちゃんと試合で稼いでください。」
「うわ〜、バレないかと思ってたもんね。」
もんちゃんが悶絶し、笑いが起きる。
「じゃあ、ヨウ。どうやったらあおコインをもらえるか説明して。」
わさびからメガホンを受け取ったヨウが、前に立ち説明を始めた。
「簡単に説明しますね。
試合に出ると1コイン、所属するチームが勝利すると3コイン。ゴールを決めると3コインです。簡単でしょ?
ちなみに、『てっぱん』では、ビール1杯は2コイン、さかつくスペシャルは5コインと交換できます。」
あまりピンと来ていない。
なんとなく皆が思案している。
「ゴールキーパーがゴールを決めることなんてないだろ?不公平じゃないか?」
さかつくサッカー部の正GK、西山が声を上げた。
「そうなんです。なので、勝ったチームのDFとGKには、勝利3コインに加えて、さらに2コインとします。また、GKにはPKがありますよね?これを止めたら3コインとします。」
「おいおい、覚えらんねぇぞ。」
イレが突っ込む。
「まずは、やってみましょう。ヨウ、すぐにあおコインの獲得条件を書いて貼っておいて」
「いいとも!!」
……。
わさびに言われたヨウは、謎のワードを残してまちカフェの事務机に向かった。
*****
【あおコイン獲得ルール】
・試合出場 1コイン
・勝利 3コイン
・ゴール 3コイン
・DF・GK(勝利時)+2コイン
・PKストップ 3コイン
ヨウが段ボールにマジックで書いた獲得表を掲示する。
「おぉ……なんかそれっぽいな。」
誰かがぽつりとつぶやく。
「ていうか、これもう完全に“仕事”じゃない?」
「いや、“遊び”だろ?」
「いやいや、ビールがかかってる時点でガチだろ。」
徐々に空気が変わる。
さっきまで“よくわからないイベント”だったものが、急に“取りにいくゲーム”に変わった。
「よし……1ゴールでビール1杯半か。」
「いや、お前飲みすぎだろ。」
笑いが起きる。
でもその目は、さっきまでより少しだけ本気だった。
あおコイン、ただの段ボールなのに……。
まさに貨幣を産んでしまった。取り扱い注意だな。
でも――
これが回り始めたら、日本中からサッカー野郎がこの町に集まるかもしれない。
ヨウは、そんな予感に小さく身震いした。
そのときだった。
「いいねぇ、これが見たかったんだよ。」
背後から、不意に声がかかる。
振り返るまでもない。
相変わらず、人の隙を突いて現れる男……テンだった。




