第87話 サッカーで暮らすルール
「5部リーグ構想は壮大だし、いいと思うんだけど、まずは1部だけでやってみたらどうかなぁ。
それでも、かなり面白いと思うんだよね。」
ヨウが話を始める。
今日は、恒例のはぴちゅの日だ。
会社も、さかつくサッカー部の練習も休みのため、昼過ぎからまちカフェに集まっている。
メンバーは、ヨウ、わさび、もんちゃん、未来。
ユミには申し訳ないが、まちカフェの営業を一人でお願いしている。
スタジオみかんにもお客さんがひっきりなしに来ているので、なつみかん(夏海、美香)の2人は忙しそうだ。
「どう面白くするの?」
わさびが問い返す。
「サッカーするだけで暮らせるってだけで面白くないかな? あれ……、面白くない?」
ヨウの意見には、あまり反応がない。
「いや、まぁ。仕事しながらサッカーするのに慣れすぎちゃったもんね。
学生なら、サッカーするだけで暮らしてるようなもんだしね。」
もんちゃんの意見はもっともだ。
「つまり、サッカーすることで暮らせるだけの対価をもらえるってことですよね。
つまりはプロ選手だ。それはサッカー選手の憧れですよね。」
「でも、下手なやつは? 野宿?」
話は尽きない。
ここまでの話を総合すると、おおむね以下の方向性でまとまってきた。
・テンリーグの試合に出ると、あおコインをもらえる
・もらえるあおコインの枚数は、試合の活躍に応じる
・あおコインで生活ができる
・あおコインで交換できるものは、テンリーグが準備する
「審判どうするの?とか、どうやってコインの枚数決めるの?とか、細かいことはたくさんあるけど……。
イメージ湧いて来ましたよ。」
未来ともんちゃんに、なんとなくイメージができてきたようだ。
2人であれやこれやと構想を進め始めた。
「まずは、できるところから考え始められてよかったよ。
5部リーグって話だと、制度設計だけでも大変だったもんね。」
もんちゃんも、こう見えて頭を悩ませてたらしい。
こういうときは、みんなで話し合うのが一番だ。
サッカーのルールについては大丈夫そうだな。
ヨウは、議論を続ける2人を見て、少しだけ肩の荷がおりた。
「さて、我々もビジネスを進めないとね。」
わさびに向かってヨウが話しかける。
「少しはまとまったの?」
「ITを駆使した脱ITが目標かな。」
よくわからないという顔のわさびに対し、ヨウは説明を続ける。
「えっとね。回りくどかったね……。
そう、コンセプトは脱スマホにしたい。
でも、そのためにはITが必要って感じ。
この町に来てから感じたんだけど、めちゃくちゃ楽しいよね。
それって、たぶん、俺達が若くて健康だからなんだよ。
逆に、お年寄りには、駅が遠かったり、買い物にも車が必要だったりして不便だよね。
だから気付いたんだよ。
いまの社会構造、逆の方がうまく行くんじゃない?って。
若者は田舎に、年寄りは都会に。
若者は、いくらでも動ける。
結局、人って、どこにいるかじゃなくて、誰といるかなんだよ。
だから、田舎に若者がたくさんいれば、
仲間と一緒に、大自然と向き合う毎日になる。
楽しいと思うんだよね。
少なくとも、毎朝、満員電車でどんどん目が死んでくようなことはない。
ま、そんな話は政治の話なんだけど……。
要は、仲間で集まって、わいわいしてたらスマホなんていらなくない?
そして、若い生産力が集まれば、自分達でどんどん自活できるでしょっていうコンセプト。
それを坂本造園がコーディネートする。
若者集めて会社GDP爆上げ作戦。」
ヨウの長話を黙って聞いていたわさびは、考えをめぐらせていたが、分かったと言って立ち上がった。
「いいと思う。ヨウ、それですぐにまとめて。
私はユミちゃん手伝ってくるね。
今日は、はぴちゅだから、早く終わらせたらお酒飲んでいいよ。」
笑顔でそう言い残し、わさびはエプロンをつけると楽しそうに仕事を始めた。




