第84話 第1回テンリーグ設立検討委員会②
「さて、はじめに……ペイさんに謝らなくてはいけません。以前、スタジオみかんの美香さんに提案した『プロジェクトみかん箱』という名称ですが、私たちも同じ名前でプロジェクトを進めていこうと考えています。」
冒頭から、ペイに頭を下げてヨウが詫びる。
「さすがヨウ君、『プロジェクトみかん箱』って名前は最高ですよね。よく分かってる。そもそも私がこれを考えたのは……」
これは長くなるぞ。
そう悟ったヨウは、遮るために話を切り出した。
「認めてくださって、ありがとうございます。
テンリーグ収益の柱にできるかは分からないんですが、現状一番稼げるのは美香さんのスタジオなんです。さて、これを見てください。」
ヨウが1枚のポスター風のイラストをかばんから取り出して、ホワイトボードにマグネットで張り付けた。
「うわぁ、さらにかわいくなってる。」
わさびが、思わず感嘆する。
「これは、アリスちゃんが描いたイラストを、美香さんが仕上げた作品です。」
アリスが描いた絵は、子どもっぽい画風ながらも、みかん箱と、その周りで生き生きと動く町の人たちが、擬人化したみかんで表現されていた。
そのイラストに美香が手を加え、色合いから、まちの人の表情まで、まさに一段昇華されて描かれている。
ポスターには、みかん箱という文字と共に、スタジオみかんの説明が簡潔に記載されている。
「このポスターを見たら一目でわかると思いますが、クリエイターのイラストをみかん箱で販売します。イラストはデータベースの中で管理し、あおい庭園に来たお客様がその中から選んだ絵を購入し、あおい庭園で風景と融合させて楽しむという趣向です。」
ヨウが、ポスターを読み上げながら、ビジネスモデルを説明する。
「それで、どれくらいの売り上げを見込んでいるのですか?」
ペイが商売人らしい質問をヨウに投げかける。
「今、あおい庭園には毎日1000人くらいのお客様が来ています。このうち10%がイラストを購入するとして、委託販売手数料を30%いただくとすると……。」
「手数料で1日3万円ってとこか?」
イレが口を開いた。
「結局、クリエイターの設定単価しだいですよね。1枚1000円で販売すれば、確かに日に3万円、月に75万円程度となります。」(月に25日営業と仮定)
「全員、それ目当てに来てるようなもんだろ?
全員買うんじゃねぇのか?」
「そうかもしれません。仮にそうだとすれば、1日30万円、月に750万円ほどになります。」
「最高に稼げて、年間9千万円くらいか。
しかもそれは、美香さんの収入だろ?」
「そうですね。ただ、美香さん1人でこの売り上げをさばくのは無理でしょう。
我々が孫受けとして参入することで、坂本造園の売り上げも見込むことができます。
ただし……テンリーグ運営費用の主軸になるのは難しいですね。」
ヨウは、厳しい現実を告げた。
「ペイさんはどう考えてるんですか?
一度はスタジオみかんとプロジェクトを組もうとしましたよね?」
重い空気の中、さすがというか、未来が持ち前の明るさでペイに問いかける。
「ちょっと、未来、失礼だぞ。」
ヨウが慌てて、未来に注意した。
「いいんですよ、ヨウ君。私は、テンリーグの成功こそがすべてなのです。スタジオみかんさんとの顛末など些細なことです。
私も同じくイラストの委託販売を考えていましたが、私なら10倍、いや20倍のマーケットにすることが可能です。もちろん、『アオソラ』との連携が必要ですけどね。」
「最高で20億円近い売り上げか〜。美香さん大金持ちだなぁ。まぁ、それくらいの力はあると思ってたもんね。」
もんちゃんが感心しながら、相槌を打つ。
「確かに、ペイさんの力を借りたら20倍の利益も可能なんでしょうね。それでテンリーグは成り立つでしょうか。」
ヨウが委員に問いかけた。
「難しいかもな。その事業自体がずっと続くって確信が持てねぇ。それに、『アオソラ』の利益なんだろ?仮に20億ってのが入ってきても。」
「そうなんです……。」
ヨウはしばらく沈黙し、各々が頭の中でこの事業をイメージする時間をつくった。
「さて、そこで私の考えなんですが。みかん箱に入れるものを、イラストだけにするのはやめましょう。」
その場が、一瞬静まり返った。
「それです!!さすがヨウ君。」
ペイが叫んだ。




