第83話 第1回テンリーグ設立検討委員会
12月最初の土曜日。テンリーグ設立検討委員会、通称テンツクの第1回委員会の日を迎えた。
出席者は以下の5名。
委員長:イレ
書記:ヨウ
議事進行:わさび
委員:ペイ、未来、もんちゃん
議事は、各担当の進捗状況報告と意見交換。
・収益化事業の選定:ヨウ、わさび
・リーグ制度の設計:もん、未来
・会場および施設選定:ペイ
・全体取りまとめ:ヨウ
「それでは、第1回テンリーグ設立検討委員会を始めます。」
わさびが、やや形式張った声で宣言する。
「でもね、堅苦しい会議なんてやったら、きっと何も決まらないから。順番に、自由にいこう。」
すぐにいつもの調子へ戻った。
「そりゃ、やりやすくていいや。
さすがわさびさん。ますます惚れちゃうもんね。」
もんちゃんの合いの手で、場の空気が一気に柔らぐ。
「じゃあ、僕たちからいきますね。」
未来が元気よく手を挙げた。
「まずは、あの有名な『アオソラ』の社長がバックについてるってことで——お金のことは、いったん考えません。」
未来らしいなと、ヨウは思う。
そして、それでいいのだとも思う。
「5部制のリーグにしましょう。1部は今のプロリーグより、だんぜん給料を良くする。その選抜メンバーでJリーグと天皇杯を目指すんです!」
「大盤振る舞いだな。もんの方が、俺より金持ちになっちまうな。」
イレが豪快に笑う。
「これで、前借りした給料返せるもんね。」
もんちゃんも負けじと応戦する。
「うち(坂本造園)がやるんだから、思いっきりわがままに作りましょう。」
未来のアイデアは止まらない。
5部リーグは10分ハーフの20分制。自由参加。何度でも挑戦可能。
カテゴリーごとに特徴を持たせ、年がら年中サッカーが行われるリーグ構想——。
「監督もバトル対象にしたらどうかな。監督が選手にポイントをつける。監督も勝敗でポイントを得る。絶対面白いもんね。」
「あと、コーチも対象にしましょう。選手からポイントもらって教えるとか。」
「そのポイントって、何に使うの?」
わさびが冷静に問いを投げる。
「生活にも、リーグランクアップにも使えるようにしたらどうですか?生活に使えるならお金みたいなものかな。でもランクアップに使えるってところが面白いと思います。」
話は盛り上がり、気づけば1時間が過ぎていた。
ヨウは黙ってメモを取りながら、頭の中で別の計算をしていた。
トップリーグに高額報酬。
それは夢か、それとも利権の温床か。
金は人を動かす。
だが同時に、町を歪ませもする。
それでも——
ニンジンがなければ、人は走らない。
矛盾を抱えたまま、ヨウは口を閉ざした。
「じゃ、ここまでの話はまとめておいたから、次回までに具体化してね。本格運用までの工程表も。」
わさびが議題を締める。
「次は、ペイさんの会場選定。」
「あ、僕のは飛ばしてください。制度が固まってから動きます。目星はついてますから。」
相変わらずの早口だが、用意周到なのは変わらない。信じていいのだろう。
そして、最後の議題。
テンリーグの原資となる収益化事業。
青空市で“これは”という事業を坂本造園が立ち上げ、テンが認めれば多額の出資が入る。
夢を回すためのエンジンを、ここで作らなければならない。
ヨウは、静かに姿勢を正した。
ここからが本番だ。




