第79話 未来の作るみらい
テンリーグ会議を終えた未来ともんちゃんは、誰もいない食堂へ向かった――
「お〜、山下が来るのか。あ、マサもいる。
ねぇ、もんさん、こいつすごいっすよ、このマサってやつ。こいつのパス、完全にノールックでビタッです。」
未来が楽しそうに、転校してくる高校生20人のリストを読み込む。
「そんなにすげぇんなら、うちに来る必要ないじゃん。足がめちゃくちゃ遅いとか?」
もんちゃんがリストをのぞき込んでくる。
「守備がね……守備力ゼロ。っていうか、守備は絶対にやらないんですよ。」
「うわ、いらねぇ〜。そりゃ干されるわな。」
「でも、すごいっすよ。ビタッですよ、ビタッ。」
ミーティング後、未来ともんちゃんは『リーグ実施細則の策定』を指示されている。
とりあえず来週までに、簡単でもいいから案を作れと言われている。
どんな高校生が来るのかを確認しながら、あれやこれやと会話は弾む。
どうも、ほとんどの選手を未来は知っているようだった。みんな天才的だが、何かしら大きな弱点を背負っている選手たちだ。
本来なら監督として尻込みしてしまいそうな顔ぶれなのだが、未来は嬉しそうだった。
「こいつら、勇気とも同世代だろ? うまくやれるかな〜。」
もんちゃんが、ナイーブな勇気を心配する。
「大丈夫、大丈夫。さてさて……ん? 女の子もいますね。あと……栗山陽一郎? 彼は初めて聞く名前ですね。備考欄には、絵が趣味って書いてある……サッカーじゃなくって?」
「ははは、そいつ面白そうだな。
まぁ、知らないやつもいるんじゃないの?
それより、素人のヨウさんとペイさんが見つけてきた選手なのに、ほとんど未来が知ってるってのはすごいんじゃないの?
ほとんど当たりを引いてきたってことだもんね。
ハズレかもだけど。」
未来はリストを見つめたまま、小さく笑った。
「ええ。」
指先で名前をなぞりながら言う。
「これは、大当たり。」
もんちゃんが思わず吹き出す。
「守備しない奴とか、扱いづらい天才とか、問題児ばっかだぞ?」
「だからですよ。」
未来の目が輝く。
「弱点があるってことは、伸びしろがあるってことです。」
「前向きすぎだろ……」
「完璧な選手なら、もう居場所がありますからね。」
未来はリストを閉じた。
「ここに来る理由がある選手たちです。」
もんちゃんは腕を組み、しばらく黙ってから小さく笑う。
「……監督向いてるな、お前。」
「でしょう?」
2人の笑い声が、静かな食堂に広がった。
テンリーグは、まだ何も決まっていない。
だが、この選手たちが集まることで、さかつくは確実にパワーアップする。
考えるべきことは山積みだが、それこそが始まりの証だった。




