第74話 こういう時が一番楽しいんです
「で、どうするんだよ。
もう、ある程度考えてあるんだろ?」
イレが先を促す。
「では、次のスライドに移ります。」
――運営方針――
テンリーグ参加者による人的資源の集中と、
参加者自身の事業参画によって生まれる収益
により、テンリーグを持続的に運営する。
【2026年12月】
・テンリーグ設立検討委員会の組織化
・収益化事業の選定
・リーグ実施細則の策定
・会場および施設の選定
【2027年1月】
・20人のサッカー少年が青空高校へ転入
・テンリーグ(試合)の試験運用開始
・テンリーグ(事業)の試験運用開始
「高校生……20人?」
イレが「何を言ってるんだ?」という顔でこちらを睨む。
「以前、未来が監督として、走れる選手が欲しいと言っていましたよね。
そのとき、才能はあるのにユースで埋もれている選手がたくさんいるとも。
この町に来るのは、そういう子たちなんです。」
「お、おま……簡単に言うけど、どうすんだよ。」
さすがのイレも焦りを隠せない。
「ペイさんが、受け入れ体制をすべて整え終えています。高校生たちは『アオソラ』のフルケアのもとで、安心して移住してきます。
だから私たちは――
それ以外のことに、全力を注ぎましょう。」
「ペイさんは、そのために来てたのね。
仕事してるように見えなかったけど……」
わさびが驚き混じりに言う。
「そりゃ、左腕だからね。仕事はとんでもなくできるよ。かなり変わってるけどさ。」
状況を理解し、イレ、わさび、もんちゃんはそれぞれ考え始めた
「ヨウさん、お金稼げばいいっすよね?
私と美香に任せるっす!
プロジェクト『なつみかん』が稼ぐっす。」
SMSバズり事件の頃、強引な夏海に怯え、美香は苦手意識を持っていた。
だが、その後の困難を共に乗り越える中で、2人のあいだには確かな友情が芽生えていた。
アリスが名付けた『なつみかん』は、いまや彼女たちの代名詞だ。
スタジオみかんは、共同経営者さながらの2人によって運営されている。
「テンリーグ参加者が、スタジオみかんで何するの?」
わさびが尋ねる。
「それは、これからっす。」
これからかよ……。
ヨウも、わさびも、イレも落胆した。
「スタジオみかんで働く。なっちゃん、それいいね!!いいこと思いついたもんね。」
もんちゃんが反応した。
夏海は嬉しさのあまり、真っ赤になってもじもじしている。
「もんちゃん、本当に思いついたの?」
「ヨウさん。いま、めちゃくちゃ楽しくない?」
言われてみて、確かにと思う。
「確かに、楽しいね。」
「それもこれも、この話を持ってきたヨウさんのおかげだし、わさびさんが『まちカフェ』を作ってくれたおかげだし、なっちゃんが前向きなおかげだし、何よりイレさんがサッカーをやらせてくれるおかげ。
さらに……面倒なサッカーバカが20人もやって来るんでしょ?
もう楽しい以外に言いようがないもんね。
そりゃ、アイデアも出てくるってもんだよ。」
もんちゃんが珍しく高揚して語る。
「よし。じゃあ、何から決めるか決めようか!!
さて、次のスライドは……。」
ヨウがページをめくる。
……まだ続くのか。
全員が同時に思った。
ヨウは、相変わらずプレゼンが下手だ。




