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1秒ストライカー 〜1秒先の未来が見えるおっさん、サッカーで人生やり直す〜  作者: そきおこ
第6章 青空市の未来

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第73話 ヨウは中間管理職

「テンリーグができたら、青空市はどうなるっすか?」


 社長室に来てから初めて、夏海が口を開いた。


「テンさんは、かなり投資する予定みたいだから、めちゃくちゃ人が来ると思うよ。」


 ヨウが答える。


「う〜ん、『まちカフェ』は生き延びられるかなぁ。」


「わさびさん、チャンスっす。」


 わさびは不安そうだが、相変わらず夏海はイケイケだ。


「『まちカフェ』だけの問題じゃないよ。町がひっくり返る話だもんね。」


 もんちゃんが、冷静に情報を整理し始める。


「そうなんだよ。だから、やめてもらった。」


 ――!!


「なんてことするっすか!! せっかくのチャンスなのに。」


 夏海が前のめりに抗議の声を上げる。


「まぁ、待て……。それで、ヨウ、どういうことだ?」


 先ほどまで天井を見ながら考え込むように聞いていたイレが、場に入ってきた。


「テンリーグは、坂本造園が設立することになりました。」


 はぁ〜〜〜??


 そんな声が聞こえてきそうな勢いで、全員が口を大きく開いたままヨウを見つめてくる。


「だから、テンリーグは坂本造園の事業として設立することになりました。」


 ヨウがあらためて宣言すると、画面のプレゼン資料を次のページへ移した。


  持続可能な制度設計の重要性について


【テンリーグの目的】

夢破れた者、人生を外れた者の再起は容易ではない。

そんな世の中で、サッカーを通じて再起する場を提供したい。

提唱者・高崎登氏の理念を実現するために設立する、バトルコロシアムである。


【ベネフィット】

テンリーグが活気づくことで、そのホームタウンの人的流動性を活性化し、住民の精神的・経済的満足度を高めることに寄与することが期待できる。

また、オーナーとなる予定の高崎登氏の資金力を背景に、リーグ自体は一定度の成功を見込むことができる。


【課題】

リーグ運営費はオーナーである高崎登氏からの資金提供のみで賄われるため、他の収入源を持たない現状の構想は、経済的リスクを常にはらんだ事業体であり、極めて不健全と言える。

また、本事業は公益性の高い性格を持つ反面、経済的事由により高崎登氏の私物と化すリスクも否定できない。


 ヨウが、プレゼン資料としてはあまりにも読みにくい長文をモニターに映し出す。

 研究職が長かったせいか、どう見ても論文のようなスライドである。


「よくわかんないっす。」


 夏海が頭の上に「?」を浮かべながら、脊髄反応で質問する。


「ヨウさん……よく分かったもんね。で、何やるの?」


「それを考えなきゃいけないんだよ。さて、ここからが本題です。」


「もう頭がパンクするっす。こういうのは美香のほうが得意っす。美香を呼ぶっす。」


 夏海が音を上げたので、ヨウは次のページにスライドを移すのをやめた。


「分かりにくくてごめんね。つまりさ、テンリーグは勝った選手に賞金を出す。でも、この賞金はテンさんが出す。ここまでは分かる?」


 ヨウが夏海に問いかける。


「それは分かったっす。」


「もしテンさんが飽きたり、テンさんの会社が傾いたらどうなる?」


「賞金出なくなるっす。」


「みんないなくなっちゃうね。」


「そう。テンさんの熱い想いで、この青空市にものすごいお金をかけて建物を建てたり、人を集めたりしても、テンさんがやらなくなったら、大変なことになる。」


 夏海も分かってきたようだ。


「で、なんでウチがリーグ設立すんだ?」


 イレが、最大の疑問を投げかけてきた。


「すいません。つい、やるって言っちゃいました。ウチでテンリーグを持続可能なリーグに仕上げて、それをテンさんに買ってもらう。

 そこからの投資なら、資金源の何かに集中投資して、その何かを成長させていく形になるでしょ? それなら青空市も、それほど大変なことにはならないはずです。」


「バカヤロー。その“何か”が難しいじゃねぇか。

なに勝手に決めて来てんだ。」


 イレがヨウを一喝する。


「いや、テンさんとしては、俺が止めなかったら、もう今月には始めてたらしいんですよ……。

いちおう、この町を救った形にはなったのかなと。」


「そりゃ確かに仕方ねぇのかもしれないが……。

そもそも町の連中には、テンがリーグ作った方が喜ばれたんじゃねえか? 

いや、それは分からんか……。」


 社長室に、何とも言えない空気が漂う。


 とにかく急ぎ、何かをしてテンリーグの収入源を作らなければならない。

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