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1秒ストライカー 〜1秒先の未来が見えるおっさん、サッカーで人生やり直す〜  作者: そきおこ
第6章 青空市の未来

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第71話 この会社のために

 朝起きると、隣にわさびは……いなかった。

布団の中に、まだ体温が残っている。

ほんの少しだけ、寂しかった。


 我が家の女性陣の朝は早い。

そもそも坂本造園の朝は早い。


 造園の仕事は朝が勝負だ。

明るいうちに終わらなければ段取りが崩れる。

天候に左右される日も多く、段取りがすべてだ。


 社員たちは7時の朝礼後に出発する。

そのため6時半には準備作業が始まっている。


「ヨウ、いつまで寝てるの!!」


 わさびの声で、ヨウはハッとして体を起こした。

スマホの時計を見ると、すでに6時を少し回っている。


 やはり、贅沢生活に甘えていたらしい。


 大急ぎでヒゲを剃り、わさびの作ってくれたおにぎりをかばんに入れ、家を飛び出した。


「ヨウさん、たるんでるっす。」


 夏海のひと言に、反論はできない。


「たはは、ごめん、ごめん。」


 2人に詫びを入れながら急ぎ足で会社へ向かう。

だが、不在の間に何があったのかについては、何も聞いてこない。


 ようやく会社前にたどり着くと、準備をする社員たちの姿が見えた。

彼らもヨウに気づき、次々に声をかけてくる。


「あ、ヨウさん、お帰り〜!!」


「お〜、久しぶりだから起きれなかったか?」


 口々に飛んでくる、いつもの調子の声。


 その瞬間、ヨウの胸に熱いものが込み上げた。


 この3カ月、イレと仲間たちのサッカーへの想いのために、ヨウは“謎の旅”を続けてきたつもりだった。


 だが彼らは……


 ヨウがいなかった真夏の酷暑の日も、

 秋の草刈りに追われる忙しい日々も、


 炎天下に、草刈機を回し、

 日が落ちればグラウンドに集まり、

 いつも通りボールを追っていた。

 

 そして今、屈託のない笑顔を向けてくれる。


 胸の奥で、何かが静かに定まった。


 ……とにかく彼らのためにも、やるしかない。


 そう決意して朝礼に向かった。


「じゃぁ、今日の現場は以上のメンバーでよろしく。で、残りのもん、わさび、夏海は社長室に来てくれ。」


 イレからの言葉で今朝の朝礼も終わり、社員が現場に向かっていく。


 ヨウが不在となって以降、現場のアサインはもんちゃんがやっていたらしい。

朝礼では、もんちゃんが現場の状況説明や必要機材、車の割り振りなどの最終確認をしていた。


「朝から社長室に呼びだされるなんて。これは、ちょっとヤバい予感がするもんね。」


 朝礼後、作業に向かう車を見送ってから、4人で社長室に向かう。夏海は、もんちゃんと一緒で嬉しそうだ。


 コンコン……。


「失礼します。」


 ヨウがノックして社長室に入り、4人で社長デスクの前に並ぶ。


 「企画課長、出張から戻りました。」


「お〜、お疲れ。それにしても、出張旅費どうしたんだ?経費精算が恐ろしいんだが……。テンのやつ持ちか?」


「まぁ、ある意味では、テンさん持ちですね。テンさんのところの社員の言う通りに馬券買ったら当たったので、そのお金でやり繰りしてました。」


「ぶひゃひゃひゃ……、それめちゃくちゃうけるもんね。ヨウさん、万馬券当てたの?」


「そうそう、1万円が500万円になったんだよ。」


「ヨウさんは、遊んでばっかりっす。」


「そんなわけないだろ。テンさんは、とにかくめちゃくちゃなんだよ。」


「あ〜、知ってる。テンはめちゃくちゃだ。で、俺らへの連絡も禁じられてたってわけだな。」


 社長室に入った時の重々しい空気はどこへやら、あ〜だ、こ〜だと話が拡散しているところでイレが話を整理に入った。


「そうです。連絡を禁じられた理由については、後ほどイレさんと2人で話をさせてください。

まずは、このメンバーに、テンさんの進めているプロジェクトであるテンリーグについて共有させていただきます。」


 そう言うと、ヨウはノートパソコンをテレビにつなぎプレゼンテーションの準備を始めた。


 この場にいる誰もが、言葉を失ったまま画面を見つめている。困惑と、わずかな高揚が、静かに入り混じっていた。

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